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産業技術総合研究所

2009/10/13 20:17
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先週と先々週、お台場の産業技術総合研究所(いわゆる産総研)に行って来ました。産総研の本体はつくばにありますが、お台場にも研究所があります。

デジタルヒューマン研究センター

先々週は、産総研のデジタルヒューマン研究センターへ行きました。

デジタルヒューマン研究センターは、CMUの金出先生がセンター長をされていて、その名の通り人間のデジタルモデルを作る、という研究を行っているところです。代表的な研究成果の一つは、Dhaibaと呼ばれる人間モデルで、人間の形状と機能を、少ない数のパラメターで見事にモデル化します。このモデルを使うと、いろいろな体格の人が自動車の乗り降りをする際にどのような動きをするか、などのシミュレーションを行うことができます。

金出先生によれば、ほとんどの産業システムにおいて、人間は基本的な部品の一つですが、同時に、システムの中での一番弱いリンクと言えるということです。人間のモデル化を行うことにより、システム全体の振る舞いや性能がより正確に予測できるようになり、それによって、システムの設計や運用を改善することができます。

形状や関節の動きだけではなく、このセンターでは人間の行動や生活の様子なども測定し、モデル化することを行っています。いずれは、人間の行動や社会生活などもモデル化し、シミュレーションできるようになることでしょう。そうなれば、例えば地球温暖化のような問題を解いていくための重要なツールになるかもしれません。

研究所として、このセンターの何より素晴らしいところは、センター長をはじめ、研究員の方々が生き生きと、楽しそうに研究をされていることです。このセンターが、「デジタル・ヒューマン」という新しい研究分野で世界の中心になり、今後もエキサイティングな成果を出していくことを期待したいと思います。

サービス研究シンポジウム

先週は、産総研でサービス研究シンポジウムがあり、ここで私は、Smarter Planetの講演を行いました。8月に日経ホールで行われた世界ICTカンファレンス2009 - 豊かさを支える社会インフラで講演したのとほぼ同じ内容です。IBMが考える、ITによって変わっていく社会についてお話ししました。

Smarter Planet

Smarter Planetというコンセプトが生まれてきた背景には、(1)センサーやネットワークが発達してきたことによって、社会のインフラが「インスツルメンテーション」されつつあること、(2)世界がフラット化し、複雑化したことによって、今までなかった無駄が見えてきたようになったこと、の2点があります。

社会のインフラがIT化しつつあることは、皆さんもうよくご存知のことでしょう。「インスツルメンテーション」という言葉は、あまり馴染みがないかもしれませんが、「道具」として使えるようにすること、くらいの意味です。社会のインフラにセンサーやアクチュエータがあまねく入ってくることによって、今までデジタル化されていなかった社会インフラが、ITシステムから見える、あるいはコントロールできるようになったのです。その結果、「ITで解ける問題」の範囲が大きく広がったのが、Smarter Planetの生まれた背景の一つです。

Smarter Planetというコンセプトの生まれたもう一つの理由は、「ITで解くべき問題」の幅が広がったことです。世界がフラット化する中で、それぞれの企業は、それぞれに最適化を目指しています。しかしながら、その結果社会全体で見ると、様々な無駄が生じています。一つの例を挙げましょう。米国では、1本の人参が農家で生産されてから消費者の口に入るまで、典型的には1600マイルを旅するのだそうです。なぜこのようなことが起きているのでしょうか?これは、ニューヨークのスーパーマーケットが、「たまたまそれが安いから」という理由でカリフォルニアの農産物を買う、というようなことから起きていそうです。個々の企業から見れば、フラット化した世界では、世界のどこからでも製品・サービスを購入することができますし、それがその企業にとっての最適化戦略になります。しかし、社会全体から見れば、大きな配送コストとそれに伴う二酸化炭素の排出など、大きな無駄が生じています。個別の最適化が、全体の最適化になっていません。もし、社会全体の情報の流れをうまくコントロールできれば、このような問題は起きにくいのではないでしょうか。そのためにはITが使えるはずだ、というのがSmarter Planetを提唱する第2の理由なのです。

このようなSmarter Planetのコンセプトを具現化したソリューションは、既にいくつか登場しています。ストックホルム市において、市内に入る自動車に時間によって課金することによって、市内の渋滞緩和と二酸化炭素排出の削減を行ったのは典型的な例でしょう。ITをうまく使うことによって社会システムを変革し、社会の全体最適を図った好例だと思います。

フィールド情報学

このシンポジウムでは他にも何人かの方が講演されましたが、特に印象に残ったのは、京大の石田亨先生による、「言語グリッド:サービスコンピューティングを用いた集合知の形成」という講演でした。言語グリッドは、Googleの機械翻訳システムなど、インターネット上の「言語資源」をかき集めてきて、全体で「集合知」として提供する、という大きな国際的プロジェクトです。

シンポジウム全体のテーマの一つはこの「集合知」ですが、このような集合知の研究は、典型的な研究のやりかた、つまり研究室の中で理論的なモデルを作ってから現実世界で検証するというやりかたではなく、現実世界(フィールド)の中で適用、運用、観察を行うことから普遍的な知見を得ていく、という帰納的な研究な方法論になるそうです。この、帰納的な研究の方法論を石田先生のグループでは、「フィールド情報学」と呼び、そのための本、フィールド情報学入門を出版されています。私も買ってみましたが、自然観察、社会参加、イノベーションのようなシナリオのもとに、工学、農学、社会学、情報学などの多分野にわたる研究方法論を述べていて、参考になります。

フィールドとは、「分析的、工学的アプローチが困難で、統制できず、多様なものが共存並立し、予測できない偶発的な出来事が生起し、常に関与することが求められる場」だそうです。このようなフィールドに共通する性質は、複雑さであり、ダイナミズムであり、予測困難性であると思います。このような複雑さにこそ、情報技術が役に立つということで、「フィールド情報学」というコンセプトが現れてきたのだと思います。このあたりは、Smarter Planetの考え方に通じるところがあると思います。Smarter Planetが解こうとしている問題は、まさに「フィールド」にあり、そこに情報技術を適用して問題を解いていこうという考え方だからです。

情報技術は、ますます複雑化する世の中の問題に対して、私たち人類が持つ最大の切り札です。少なくとも私はそう信じています。大事にしたいですね!また、若い人たちには、是非この「切り札」を勉強して、世の中の役に立てて行って欲しいと思います。

エコ・テーブル

前回のブログで、カムイ・エンジニアリングの100%再生複合材「カムイ・ウッド」のご紹介をしました。この素材は、実は水や紫外線に強く、屋外で使うベンチやデッキに最適だということだったので、私の家のベランダのテーブルの修理に使えないかと思い、カムイ・エンジニアリングの大越社長にご相談したところ、サンプルの素材を分けていただきました。何年も使って反ってしまった以前の集成材をに代えて、このカムイ・ウッドをテーブルの天板として取り付けたところ、写真で見ておわかりのように、色もサイズもぴったりで、早速この上でビールを飲んでみました:-) 大越さん、ありがとうございました!



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※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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