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グリーン革命

2009/05/18 13:11
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価値観の変化


前回のブログ
で、「競争から協調への価値観の変化が生まれているのではないか」と書いたところ、多くの方から賛同をいただきました。というかむしろ、皆さん既に同じように考えられていて、私の気づきが遅かっただけなのかもしれません。例えば、
人類を救う哲学
という本の中で、京セラの稲盛さんは「人類は今後、欲望やエゴに根ざした経済成長ではなく、思いやり、愛、慈しみ、そして利他の心をベースとして、いかに地球上で共生していくかということについて、真剣に問うていかなければならない」と述べられています。多くの人が機を一にして、このようなことを言っているということは、きっと真実であるか、真実に限りなく近いのだと思います。

ITでなくET

「The World Is Flat」で有名なThomas Friedmanが昨年「Hot, Flat, and Crowded」というタイトルの新しい本を出したのをご存知の方もいると思います。この本、読もうとは思っていたのですが、きっかけが無くて、読んでいませんでした。 ゴールデンウィークに帰省していた息子に教えられて、彼の講演がネット上にあるのを知りました。聴いてみましたが、なかなか聴かせるものがあります。

21世紀は、ITではなくて、ET (Energy Technology)の時代になる、というのがその骨子のようです。21世紀社会の抱える問題を

  1. エネルギーの需給
  2. 石油に関する地政学的課題
  3. 地球規模の気候変動
  4. 「エネルギー貧困」問題
  5. 生物学的多様性の危機

の5つと捉え、これを解決する手段が、「安価、大量、クリーン、そして安定的な電子(電力)」である、と主張しています。まあ、このあたりはいろいろ議論がありそうですが、総体的には賛成できます。

この本の英語のタイトルは、「Hot, Flat, and Crowded」つまり世界は気候変動によって温暖化し(hot)、またITによって世界がフラット化し(flat)、そして人口が増加しつつある(crowded)という現象を述べたものです。一方、訳書のタイトルは「グリーン革命」で、こちらの方がこの本の主旨をよく表していると思いました。

講演の中で、もっとも共感したのは、この問題が「Easy」な問題ではない、ということです。彼は、世の中にあふれている、「地球を救う今すぐできる、10の簡単な方法」みたいな記事を痛烈に批判しています。この問題は、決して簡単な問題ではない、革命的な変化が必要で、それには大変な痛みを伴うのだ、と主張しています。身近なエコを実践することは、それはそれで大切なことで、私も最近はエコバッグを持ち歩くなど、できるだけ工夫はしています。しかし、この気候変動の問題は、それらの積み上げで解けるような生易しい問題ではないのです。

テクノロジの限界

一方、彼の主張の中で危惧を感じるのは、あたかもET (Energy Technology)による「グリーン革命」がすべての問題を解決するような印象を与えることです。本当にそうでしょうか?

2013年から始まる、いわゆる「京都議定書後」の排出量削減目標の議論がたけなわです。つい先日も日本の地球温暖化対策の中期目標に対するパブリックコメントの募集があり、その中で、2020年までに1990年比+4%の増加から-25%までの6つのシナリオが提示されました。詳細は、地球温暖化問題に関する懇談会 中期目標検討委員会(第7回)議事次第の資料の中に詳しいので、興味のある方は参照なさってください。その中で、シナリオの?(+4%)から?(-15%)までは、主に技術の積み上げによる削減のシナリオです。つまり、現在の生活スタイルや仕事のやり方を変えずに、機器類を省エネのものに入れ替える、などの施策によって温暖化ガス排出を削減するシナリオです。

これらのシナリオからわかることの一つは、省エネや新エネルギー技術の積み上げだけでは、大幅な温暖化ガス削減は難しい、ということだと思います。これは、日本の試算だけでなく、他の国のデータでも例えばケンブリッジ大学 David MacKay教授による試算においても、省エネや再生可能エネルギーの積み上げでは大幅な温暖化ガス削減は難しい、としています。

技術の積み上げでは、1990年比-25%のような大幅な削減は難しいので、したがって、もっと現実的な削減目標を設定するべきだ、という議論があるのはわかります。しかしながら、技術の積み上げだけでなく、私たちのライフスタイル、ワークスタイルを見直すことはできないのでしょうか?例えば、上記のシナリオ?−?では、2020年にも日本人は今と同じだけ自家用車を運転している、ということが仮定されています。あるいは、今と同じようにオフィスに出勤し、出張し、会議をする、ということが(暗黙のうちに)仮定されています。本当にそれでよいのでしょうか?私たちの生活スタイル、仕事のやり方を見直せば、まだまだ大幅にエネルギー需要を抑えるアイディアがありそうな気がします。そのためには、私たち国民一人一人が、自分たちの生活を変えていく勇気を持たなければならないのではないでしょうか?

早稲田大学IBM Day

このような啓蒙活動の一環として、早稲田大学とIBMは、6月10日に、早稲田大学において、IBM Day at Waseda Universityを行います。テーマは、「グローバルな産学連携による持続可能な社会の実現に向かって」というもので、早稲田大学白井総長、日本IBM大歳会長をはじめとする基調講演や、早稲田大学の学生さんを交えたパネルディスカッションが企画されています。誰でも参加可能ですので、早稲田大学関係者のみならず、他大学、あるいは一般企業の方もご興味があったらご参加ください。私もパネルディスカッションのモデレータとして参加予定です。参加は無料で、上記のリンクから申し込みが可能です。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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