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Global Innovation Outlookディープ・ダイブ「低炭素経済への道筋を探る」

2008/12/15 14:31
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以前のブログエントリで、イノベーション加速へIBMの取り組みの一つとして、Global Innovation Outlookをご紹介しました。このGlobal Innovation Outlookでは、テーマを定めて、産官学の専門家にお集まりいただいて、今後のイノベーションのあり方について深く議論するものです。12月9日には、「低炭素経済への道筋を探る」というテーマで、東京でディープダイブが行われました。Global Innovation Outlookは今までは一つのテーマで世界各地で議論したものですが、今回は日本発のテーマということで、日本で、日本語による議論となりました。参加者は17名で、政府の方が2名、大学の先生が2名、NPOの方が2名、残りの11名の方は産業界の方でした。

英国気候変動法

ご存知かもしれませんが、英国では先月11月26日に「気候変動法」が施行されました。2050年までに英国国内の温室効果ガス排出を80%削減するという大きな目標を正式に義務付けたものです。セッションのはじめに、英国大使館の方が基調講演としてこの気候変動法の話をしてくださいました。この気候変動法は、643対3という圧倒的多数で議会で可決されたのだそうです。ブレア前首相のリーダーシップとともに、与野党一丸となって気候変動問題に取り組むという姿勢がよくわかります。

日本ではややもすれば、「日本は省エネでは世界をリードしている。世界の気候変動を考えるのであれば、削減効果の大きい開発途上国がもっと努力をすべきだ」という議論が多いように思います。英国では、「この問題に関して世界のリーダーシップを取るのだ、そのためにはまず英国が、非常に高い削減目標を達成して見せることが重要だ」、という考えを持っていることがよくわかります。講演者ご自身も、この気候変動法で義務付けられる目標が実現困難なことを認めていますが、そのようなチャレンジを自らに課すことが、リーダーシップであるとの認識があるように思います。「なぜ日本でこのような目標を立てられないのだと思うか」という質問に対して講演者は、「日本では今までのアメリカの態度の影響が大きいのではないかと見ている。オバマ政権になって米国が急速に気候変動対策を取り始めると、先進国の中では日本だけが取り残されるのではないか。」という懸念を示していました。

チキン・レース

午前中は、温暖化対策には「見える化」が必要であるとか、製品やサービスのライフサイクル全体でアセスしなければならないとか、あるいはそれぞれの参加者の企業や団体がどのような取り組みをしているのか、の紹介などで和やかに、ある意味で当たり障りのない議論が進みました。しかし、午後になって、ある出席者が「そもそも日本は京都議定書の6%削減どころか、温暖化ガスの排出量は増加の傾向だ。この問題の本質的な原因(Root Cause)は何かを明らかにしなければ問題は解決しない」とおっしゃったあたりから、一気に議論が過熱してきました。

一つの議論は、排出量のキャップを設けたり、電力に対する課税を強化したりすると産業競争力が一時的にせよ低下してしまうのではないか、あるいは日本から産業が出て行ってしまって空洞化するのではないか、というものです。これに対して、「温暖化問題の今の議論は、チキン・レースになっていないか?それぞれが経済発展のためと排出を続けていると最後には地球社会全体が危機に陥ってしまう。誰かが勇気を持って飛び降りることが大切なのではないか」という考えが示されました。

その後、省エネのためにできることはたくさんあるのだが、それらのものの積み上げで本当に目標は達成できない、何らかのブレークスルーが必要なのではないか、という議論になり、いくつかのアイディアが出ました。その中で面白かったのは、「低炭素社会だからこそ起きるイノベーション」の考え方です。低炭素社会を実現するための何をするか、を考えるのではなく、まず低炭素社会になったと仮定しよう、その様な社会を想像して、その中でどのようなイノベーションがありうるかを考えよう、ということです。一つ挙げられていた例は電気自動車のことです。郵便事業会社では配達に電気自動車の導入を年内に始めると発表しています。もし、郵便の配達がすべて電気自動車、あるいは電動バイクになったらどのようなイノベーションが考えられるでしょうか?排気ガスを出さないので、ビルや工場の建屋内まで配達ができるかもしれません。ビルの中をクルマが走るというのはちょっと想像しにくいですが、もしかしたら、このような考えが大きなイノベーションを生むのかもしれませんね。

アフルーエンス

ブレークスルーで言えば、あるNPOの方が強く主張されていたのは、生活に対する考え方の改革が必要、ということだったと思います。確かに温暖化ガス排出量が増えているのは家庭部門が顕著で、ここを何とかしなければなりません。指摘されたのは、確かに家電の省エネは進んでいるが、それに安住して、地球温暖化に対してルーズな生活になっていないか、ということです。冷蔵庫の省エネが進んでも、より大きな冷蔵庫を買ったり、その中で食料を無駄にしていては、全体として温暖化ガス排出削減にならない、生活の考え方を見直すべきだ、ということです。

今回の議論では、特に産業界の参加者が多かったためか、この議論はあまり発展しませんでしたが、私には大いに考えるところがあります。というのは、私の息子は今大学生ですが、彼は今のような贅沢な生活は将来できない、と考え、今から質素な生活に慣れる必要がある、といろいろなことを実践しているからです(最近は肉を食べるのをやめたそうですが、親としては複雑な心境ではあります)。一方、私自身は今の贅沢な生活習慣をやめられるかどうか、正直なところ心もとありません。家庭での排出量のトップは給湯と暖房であるのだそうです。今日は一日とても寒い日でしたが、私も暖かい室内履きをはいて、暖房をつけずにすごしました。受験生である私の娘は最近流行のきざしがある湯たんぽを愛用しています。このようなところから一歩ずつ生活習慣を変えていければ、と思います。

生活習慣の問題にしても、あるいは英国のようにリーダシップを発揮しようという気概にしても、私たちの持っている価値観を変えていく必要があると指摘もされました。そのアイディアとは、低炭素であることが「クール」であるような新しいライフスタイルを提案していくことです。このようなライフスタイルが、日本から発信できれば、ちょうど日本のアニメやサブカルチャーが世界の多くの人に受けているように、大きな影響力を発揮することができるのではないでしょうか。

人口問題

前回のブログで、温暖化問題の要因はP*A*Tであることを学びました。上の議論はアフルーエンスのA、すなわち人々の贅沢指向に関するものです。今回のGIOディープダイブでは、しかし、P (Population, 人口問題)についての議論がまったく出ませんでした。日本では人口は減少傾向にありますから、日本の排出量に関しては要因とはなりませんが、世界的規模で見ればこれはこれで大きな問題で、日本の役割もあるような気がします。

終わりに

 

温暖化の問題は大変難しい問題ですが、これだけの専門家の方の議論を聞いていると、その問題の真っ只中にいることが、(少し不謹慎ではあると思いますが)実はぞくぞくするような感覚でもあります。2050年になって振り返ってみて(もちろん私は生きていないと思いますが)、「あの時の危機を乗り切った人類の叡智」の一部に少しでも関われていられることは、素晴らしいことではありませんか?

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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