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時代はグローバル

2008/08/16 08:36
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私の勤めているIBMという会社はIT企業、それも外資系なので、日々の会社生活の中でグローバルに向き合うことがどうしても多くなります。先週はベルギー人の研究員との議論、インド研究所の所長との電話会議、インドネシア人研究員のレビューなどに始まり、火曜日には製造業のお客様に対するマーケティングを担当しているしている米国人女性と多くの情報交換をしましたし、次の夜には全世界の研究所とお客様とのプロジェクトをレビューするボードの電話会議がありました。木曜日の夜には、米国から来たシニア・バイスプレジデントとの夕食会があり、その翌日の朝はタウンミーティングでした。もちろん、それ以外にも多くの電子メールのやりとりを海外と行っていますし、読んだり書いたりする文書も半分くらいは英語です。

私は生粋の日本人で、日本で生まれ日本で育ちました。ですから、ご多分に漏れず英語は苦手でした。今でも苦手であることは確かなのですが、それでも仕事の上では必要なのでこれは付き合っていかなければいけないものだと思っています。

グローバル企業への変革の努力

IBMはインターナショナル・ビジネス・マシーンズという名の通り、創業から100年近くにわたって国際的な企業として活動してきました。しかし、数年前まではその実態は、「全世界で共通の製品を売ってはいるものの、それを支える会社内部の仕組みは各国でばらばら」というものでした。現在、IBMは急速に「グローバルに統合された企業(Globally Integrated Enterprise)」へ脱皮しようと努力しています。グローバルに統合された企業とは、グローバルに統一した仕組みで運営される企業です。たとえば、私たちの会計のプロセスはマレーシアのクアラルンプールで処理されています。あるいは、交通費の精算や、人事関係の処理の一部は、マニラのセンターで処理されています。また、購買関係のプロセスは、全世界に一元化されて中国で処理されています。このように、同じプロセスを一箇所に集めることによって、効率的に、なおかつ高品質で標準化されたサービスを提供できるのです。

この「標準化されたサービス」というところは非常に重要なポイントです。ご存知のように、企業の社会的責任というのはどんどん高まっています。米国の企業会計改革法、いわゆるSOX法に代表されるように、企業は内部統制とその透明性を求められています。もし、国際企業の会計の基準がそれぞれの国の法人によって違っていたら、全体の会計の結果も不透明なものになってしまうでしょう。各国の現地法人の会計プロセスが同じ基準であることを保証するためには、それらのプロセスを一箇所にまとめてしまうのが一番わかりやすい、言い換えて言えば透明性が高いでしょう。このように、企業の内部統制の透明性を高めるのも「グローバルに統合された企業」になることの大きな目的の一つなのです。

なぜ今グローバル化か?

しかし、「グローバルに統合された企業」が21世紀になって急速に注目されている理由は他にもあります。もともとIBMは国際企業でした。しかし、私の入社した80年代には、「グローバルに統合された企業」になるためのインフラが十分でなかったのです。私が入社したのは1983年ですが、当時は海外とのコミュニケーションは非常に限られたものでした。電子メールなどというものはもちろんありません。国際電話も非常に高価でした。海外とのやりとりは、便箋に書いたメッセージを社内メールの封筒に入れて発送する、そうすると1-2週間後にやはり社内便で返事が来る、というようなものでした。当然、出張旅費の精算などというものは紙の上で行われますから、それらの処理はローカルに、できれば同じ事業所内の総務部門で完結するのが最も効率がよかったのです。当時は、出張旅費の精算を海外のサービスを使って行う、などという発想はありえなかったというわけです。

今はもちろん、ほとんどの処理がオンライン化されています。会計の仕組みでも、購買の仕組みでも、東京で入力されたフォームの処理がマニラで行われようが、クアラルンプールで行われようが、通信にかかるコストは極めて小さなものであるはずです。このように、ITによって社内プロセスのコスト構造が劇的に変わると、会社の構造そのものも見直さなければならない、ということなのではないかと思います。大学を出て会社に入ると、会社の仕組みとはこういうものか、社会の仕組みとはこういうものか、と新たに覚えることが多々あるでしょう。このような仕組みはそれなりの理由があって作られてきたものであるはずです。同時に、これらの仕組みは未来永劫続くものではなく、社会環境や科学技術の変化によって、また変わっていくものだ、ということも心に留めておいたほうがよさそうです。

私たちは何をすべきか?

グローバル化への変化はチャンスであると同時に、私たちにとっての課題でもあります。特に言われるのが、インドや中国への仕事の流出です。特にIT業界においては、インドや中国で大量の情報処理技術者が養成されていて、低コストで高品質なサービスを提供してきているようになっています。私が担当している基礎研究の分野でも同じことが起きてきています。このような中で、私たち技術者・研究者はどうしていけばよいのでしょうか? 私たちの価値は、グローバルな中で共通の土俵の上で比べられますから、究極的には私は、一人一人が世界で通用する技術者・研究者になることが必要なのだと考えます。「この分野で自分が世界でトップクラス」と言える分野を持つことです。

言うのは簡単だが、世界でトップクラスを狙うのは難しいのではないか、と思われる方も多いかと思います。しかし、良いニュースがあります。世の中がどんどん複雑化、多様化していることです。特に、ITは世の中のほとんどの場所で使われています。身の回りのいろいろなものを考えてみてください。冷蔵庫、テレビなどの電化製品は今ではITによる制御が欠かせません。製薬やヘルスケアの世界でも、情報処理が競争力の源泉になっています。証券や銀行など金融業界ではもちろん、ITをいかにうまく使うかがキーです。行政もどんどんIT化されています。教育もそうですね。大学では成績や単位取得の管理などがほとんどIT化されていると思います。「XXのITの専門家」のXXのところにいろいろな分野を入れてみてください。他の人がほとんど注目していないエリアがいくらでもあるのではないでしょうか。そのように考えると、「この分野で自分が世界でトップクラス」と言えるようになれる分野は、探せば結構ありそうです。そういうわけで、実はIT業界に生きる私たちには、まだまだ広がる明るい未来がある、そう思うこのごろです。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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