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虚構地帯となったDC

2006/01/23 05:41
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「CODE」「コモンズ」等の著書や「クリエイティブ・コモンズ」などで知られるスタンフォード大学ロースクール教授ローレンス・レッシグ氏のBlogの日本語版。著作権や特許などの知的所有権の問題やオンラインカルチャー関連のトピックスを紹介します。
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インターネット上では公開されていないらしいThe Washington Internet Daily紙に、新通信法案が年内に下院を通過することを予測する記事があった。ただひとつの障害は“議論を呼ぶ” “ネットの中立性(net neutrality)”提案だという。委員会のMajority chief telecom counselであり、“ネットの中立”に反対するHoward Waltzmanいわく、「われわれはこうしたサービスを政府による重い規制で管理するのではなく、市場に委ねようと考えている」。ネットの中立を義務づける規制は「ブロードバンド回線を鉄道扱いし、公共輸送機関として規制する」というWaltzmanはこう説明する:

「インターネットが発展した理由は規制のない環境にあったからだ。公共輸送機関的な規制はインターネットにとって完全な後退となるだろう。」

半分だけ正しく、全体に間違っている。言うまでもなく、インターネットが研究機関を超えて初めて一般に普及したのは規制された回線――すなわち電話回線の上だった。もし電話会社が政府規制の「締め付け」から自由であったとしたら何が起きていたかは明白だ。1964年にPaul Baranが初めて[分散ネットワークを]提案したときと同様、電話会社はインターネットを潰してしまっていただろう。現在のインターネットが生まれ繁栄することができたのは、規制による「締め付け」が電話会社に中立な振る舞いを要求していたからだ。

よってWaltzmanはインターネットの過去について間違っている。だが、ネット中立の義務付けがどんな結果をもたらすかについては正しいといえるだろう。「インターネットにとって完全な後退」となることは確かだ――すなわちわれらがインターネット普及率で世界をリードし、競争が価格を下げサービスを向上させていた時代へと。だが今、ネットワークの所有者がイノベーションを拒否できた時代への逆戻りを二大通信会社の双方が語る時代、米国のブロードバンドはひどい状況だ。使う指標によるが、われわれは世界12位から19位あたりにいる。二カ月前にWall Streent Journalが報じたように、米国のブロードバンドは「遅くて高価」だ。Verizonのエントリーレベルのブロードバンド接続は786kbsで14.95ドルであり、メガビット当たり約20ドルとなる。フランスでは月36ドルで20メガビット/秒、つまりメガビットあたり約1.8ドルだ。

フランスはなぜ安くて速いブロードバンドを実現できたのか? 米国議会が1996年に成立させたが通信会社はほとんど従わなかった(そしてケーブル会社は従う必要がなかった)「厳格なアンバンドリング」規制を取り入れたからだ。同じことは日本にも言える――規制の「締め付け」が可能にした熾烈な競争がより速く、より安いインターネットを生んだ。もちろん、わが国で「オープン・アクセス」を主張するものはもはや誰もいない。「ネットの中立性」はフランスと日本で有効に働いた戦略の不十分な代替品に過ぎないが、それも規制であることには違いない。

さて、われわれは以下の2つの状況を経てきた。

 (a) インターネットに対するコモンキャリア的規制があったとき
 (b) インターネットに対して有効な規制が事実上なかったとき

またわれわれが次の2つの状況を経験したのも確かだ。

 (c) インターネット接続サービスにおける目まぐるしく激しい競争
 (d) 先進国でほぼ最悪といってよいブロードバンドサービス

(c)であったとき(b)だったという主張は真ではない。
この国に(c)があった頃の状況は(a)であり、(d)である現在の状況が(b)だ。

とはいえ、大統領が電話を盗聴する固有の権威を持っているような場所では、事実というものが軽視されていたところで驚くものもいまい。

ブロードバンドは、鉄道でなければ高速道路のようなインフラストラクチャーだ。もしインフラの整備を“市場”だけに頼るなら、より高価でより少ない結果しか得ることはできない(たとえば現在のアメリカ合衆国のように)。

[オリジナルポスト 1月13日午後8時31分]
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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