お使いのブラウザは最新版ではありません。最新のブラウザでご覧ください。

CNET Japan ブログ

代替補償制度への最後のコメントと他の選択肢

2004/10/30 01:25
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

プロフィール

lessig

「CODE」「コモンズ」等の著書や「クリエイティブ・コモンズ」などで知られるスタンフォード大学ロースクール教授ローレンス・レッシグ氏のBlogの日本語版。著作権や特許などの知的所有権の問題やオンラインカルチャー関連のトピックスを紹介します。
ブログ管理

最近のエントリー


(William Fisher教授によるゲストBlog)

代替補償制度(ACS)の導入というわたしの提案への前回の反応から、特に鋭い反論をいくつか選びだした。回答を試みたのち、ACSが導入されなかった場合、エンターテインメント産業にはどのような制度が現れることになるかという難しい問題を扱う。

評価額の問題 CoryおよびErikからの非常に優れた疑問:「このシステムは消費者の評価の差という問題を扱っていないようだ。例えばThe Economistは、Entertainment Weeklyよりもはるかに高い年間購読料を取っている。なぜなら、より少数の(と思われる)購読者層にとっては相対的に価値が高いからだ。あなたの提案する支払いのシステムは少数にとっては高い価値のあるニッチアイテムをどう扱うのか?」 わたしの提案が、消費者から見た価値の差につながる多くの変数のうちただひとつ――作品の長さ――しか扱う仕組みを持っていないのは確かだ(『Promises to Keep』第六章の関連部分はここをクリック)。だが音楽や映画といった、個々の価格差がそれほど大きくない分野では許容範囲内だと思える。現行の市場ベースのシステムであっても、CDやDVDは分野を問わず非常に似通った価格で売られているし、劇場のスクリーンに映る内容に応じた入場料の差はさほど大きなものではない。とはいえCoryの例にあるように、印刷メディアやソフトウェア、ゲームについて同じことは言えない。これはわたしの案にそうした分野が含まれていない理由の一つだ。

なぜ自発的な寄付に頼らないのか Ianのコメントと、かれが指摘するFairShareの提案は、このよくある議論を常になく魅力的な新しい形で示してくれた。わたしの返答は:才能あるアーティストへの投資の機会を作ることで、音楽の消費者が気に入ったアーティストへ寄付する意欲を高めようという試みは非常に評価できるが、二つの問題が考えられる。ひとつめは、クリエータへの自発的な協力をしたがらない良く知られた消費者の態度だ。人々が給仕にチップを払うのは、ひとつにはそれが広く一般化した社会的慣習であり、またひとつには給仕と目と目が合う距離にあって、期待されているチップを出さないことを恥ずかしく思うからだ。インターネットではどちらの条件も働かない。残念な結果として、PayPal等はアーティストにとって大きな収入源となることに失敗している。もうひとつの懸念は、もし現在の傾向が続けば、アーティストにとってレコードの売り上げから収入を得ることがますます現実的でなくなってゆくことだ(一部の人々は、例えばJensが思慮深いコメントで述べているように、レコード売上げがアーティストにとって主要な収入源ではなくなることを歓迎するかともかく受け入れ、また他の人々は嘆いているが、いずれにしろ否定しがたい現実だ)。その結果、なんらかのACSやその他の大きな改革[後述]がない限り、Ianが示唆する仕組みにおける投資者はますます資金の回収が難しくなり、システムは純粋な投げ銭に近づいてゆく。そして投げ銭の仕組みはこれまでのところうまく機能していない。

大きな政府 ACSのような仕組みを政府に組織・運営させる危険を強調する複数のコメントがあった。そうした危険が深刻なものであることは同意するし、第六章である程度詳しく扱っている。このようなリスクの認識は、章の最後で解説されている自発的な「エンターテインメント生協」――政府運営のACSに似ているが、税ではなく加入者が支払う会費に基づくもの――を提案する理由のひとつでもある(そうしたシステムをどのように構築するのか、人々に加入を促すものは何かといった点に興味があればこちらの概要を参照)。とはいえ、すでにおわかりのように、責任をもった政府部局がそうしたシステムを運営する能力について、わたしは前回の議論参加者の一部ほどには望みを捨てていない。欧州にある政府運営の徴収機関や、法的に監督されている米国の私的徴収組織(ASCAPとBMI)は完璧にはほど遠いものの、大災厄というほどでもない。すくなくとも、作曲家たちはそうした組織が存在しない場合よりは得をしている。『Promises to Keep』では、そうした徴収機関の欠点を特定し、改善策を示すことを試みている。最終的にわたしは、改善に向けた努力のほうが他の代案よりも見込みがあると判断した。

その他の選択肢 代案といえば、もしわれわれがACSや自発的なエンターテインメント組合の導入に向かわなかった場合は何が起こるだろうか。もっとも可能性が高いのは以下の三つのうちいずれかだ:

1. 無許可の複製は拡大をつづけ、消費者はエンターテインメントの必要をますますオンラインで(無料で)手に入れたもので満たすことになる。現在のような映画産業は崩壊する――もしかすると、企業や財団や政府機関からの助成金に頼る小規模な独立スタジオがとって替わるかもしれない。ミュージシャンは引き続きレコーディングを続けるが(急速に進歩するデジタルレコーディング技術のおかげで安価にできる)、そこから利益を得ることはなく、レコードは実演の宣伝媒体として扱われる。

2. #1のような予測に恐れをなしたレコード会社と映画スタジオは、議会を説得して著作権システムを大幅に強化する。例えばINDUCE Actの導入やデジタル記録物の無許可複製に対する刑事罰の劇的な強化によって。われわれは長年続いている「麻薬戦争」とよく似た「海賊行為との戦争」を迎えることになる。

3. あるいは、レコード会社と映画スタジオは議会を説き伏せてConsumer Broadband and Digital Television Actを成立させる。この法案はあらゆるコンシューマ向け電子機器に対して、メディア企業が決定する電子透かし技術の組み込みを義務づけると同時に、すべてのアナログ入出力端子を違法にする。

これまでのポストで、なぜわたしは#1を望ましくないと考えるのか説明してきた――あきらかに全員を説得できてはいないが。とはいえ、#1はもっとも可能性が低いシナリオだ。レコードおよび映画産業には十分な権力があり、また議員の多数派はかれらに同情的なため、#1で予測された変化が目前に迫れば、#2や#3のような法律が制定されることになるだろう。そうした選択肢の長短は第四章で扱っている。その話題に移る前に、何か他の予測があればぜひお聞きしたいと思う。

Terry Fisher

[オリジナルポスト 10月27日午前9時05分]

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
運営事務局に問題を報告

最新ブログエントリー