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さらに代替補償制度について

2004/10/30 00:29
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lessig

「CODE」「コモンズ」等の著書や「クリエイティブ・コモンズ」などで知られるスタンフォード大学ロースクール教授ローレンス・レッシグ氏のBlogの日本語版。著作権や特許などの知的所有権の問題やオンラインカルチャー関連のトピックスを紹介します。
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(William Fisher教授によるゲストBlog)

代替補償制度についてのポストには多くの興味深いコメントが集まったため、新しいスレッドを始めることにした。寄せられた全てのテーマを扱うことは望むべくもないが、一部を取りあげよう。

(1) ポルノグラフィ。現在非常に多くの人がポルノへのアクセスに金を出している。もしなんらかの代替補償制度(ACS)が導入されれば、税として収められた一部はオンラインで無料流通するポルノグラフィの制作者にも支払われることになる。これは懸念すべきことだろうか? わたしの考えでは問題ではない。ポルノグラフィがこれほどありふれている事実の方を懸念すべきだという言い方もできるが、ポルノ制作者へのACSを通じた資金供給は市場を通じた支払いよりも深刻な問題であるとは思えない。

ありうる反論:「他人がポルノグラフィを買うことに文句を言う権利はないかもしれないが、自分の支払った税金の一部たりともそうしたものに充てられたくない。」返答:もし平均的な量の音楽や映画を視聴するなら、そしてACSに用いられるサンプリングのシステムが作品の消費頻度を正しく測定するなら、あなたの支払った税金はあなたが視聴した作品のアーティストにしか渡ることはない。別の言い方をすれば、ポルノへの支払いに貢献するのはポルノを視聴したときでしかない。(同様に、あなたの税金がブリトニー・スピアーズに支払われるのは、あなたがブリトニーを聞いたときだけだ)。確かに、この議論が成り立つためにはサンプリングシステムがうまく機能しなければならない。だがそれについては既に触れている。

最後の(そしてより強力な)反論:「問題はわたしの支払った税金がポルノ制作者に渡ることではなく、いかなる税であろうとポルノ業者に支払われるようなシステムの立法を拒否する議員たちだ。つまり、ある種のACSを導入する場合、そうした議員はあらゆるポルノグラフィを適用範囲から除外することに固執するだろう。よってわれわれは非常に危険な道に足を踏み入れる――どの作品が許容されるべきかを政府の役人が判断することになってしまう。」 この問題が深刻な障害であることには同意する。これはACS固有の問題ではないが、ACSが立法の過程でどのように歪められうるかをよく示している。

(2) 負担の不公平(Cross-subsidies)。ある種のACSのもとでは、レコード化されたエンターテインメント作品をわずかしか、あるいは全く消費しない人々も、大量消費する人々と同じ額を負担する。これは不公平であり、同時にさまざまな経済的歪みを生じさせるという議論はしばしばなされる。これにはかなりの説得力がある――このような負担の不均衡は間違いなくシステムの不利な点の一つだ。この問題は、(すくなくともわたしの案では)ブロードバンド加入者のISP料金だけが課税されるという点で緩和される。(よって、インターネットを本当にメールと天気予報のためだけに使う人々は税負担のもっとも大きな部分を逃れることができる)。また税率の決定に「ラムゼイ価格」を用いることで問題はさらに軽減されるだろう(これは第六章で詳細に議論されている)。最後に、“.ant”がコメントしているように、税を負担するISPが高額のプラン加入者には低額の加入者より多くを請求すれば大幅に改善できる。とはいえ、不公平な負担という問題を完全に解決できるわけではない。では、これは致命的な欠陥だろうか。わたしの考えでは否だ。税の金額自体は大したものではない。(最大のものはブロードバンド接続料金への(間接的な)課税だが、制度が導入された最初の年ではおよそ月に5ドル程度となる)。われわれは別の領域でははるかに大きなレベルの不公平を許容している(例えば公教育のことを考えてみよう。米国ではおもに固定資産税で賄われるが、子のない家の所有者にも多くのいる家の所有者にも平等に課税される)。結論:代替補償制度による総体的な費用削減は、負担のささやかな不均衡を十分に補うものと考えられる。

(3) 派生作品。ある種のACSが持つ最大の利点のひとつは、わたしの考えでは、他のレコードからのサンプリングを含むラップソングや加工・編集された映画、マッシュアップといった複合作品を扱う合理的な仕組みを作りだすことだ。現行の著作権法と鋭い対称をなす点として、わたしの主張する案のACSでは、2つの条件を守る限り、既存作品を基に新しい作品に作りかえることが認められる。その条件とは、(a) 新しい作品を登録する際には、オリジナル作品の著作権保有者を明記する。(b) 新しい作品にもオリジナル作者のクレジットを表示する。 改変された作品がダウンロードあるいはストリームされれば、利益は原著作権者と改作者の双方に分配されることになる。(このようなシステムを実際に機能させる方法の詳細については第六章を参照)。もたらされる結果は、インターネットの多くの利点のうちもっとも重要であるかもしれない、変形や編集を通じた文化的活動の可能性を解き放つと同時に、さまざまな種類のクリエータに引き続き正当な報酬を保証するものになるだろう。

(4) 受けとるのは誰か? Kristinがコメントで示唆したように、ACSによる支払いの少なくとも一部は、レコード会社などの仲介者ではなく直接アーティストに支払うようにすべき理由はいくつもある(そのような理由については第五章で詳細に扱っている)。だがここには2つの落とし穴がある。ひとつには、この方向を追求することは、大手の中間企業がこうした計画を支持するというすでに低い可能性をさらに低下させる。もうひとつは、代替補償制度は私的財産の不当な「収用」にあたり、憲法で禁じられているとする訴えが受け入れられる可能性もまた増えることだ。

さまざまな形のACSへの更なる批判と反論については、最近Andrew Orlowskiが“In the City”コンベンションでおこなったスピーチの関連部分を参照されたい。http://www.theregister.co.uk/2004/09/23/orlowski_interactive_keynote/page7.html

代替補償制度の問題についてはおそらくこれで充分だろう。明日は、同じくらい意見の分かれる問題――価格差別化――へのコメントを試みるつもりだ。すべて予定通りに行けば、木曜か金曜には、開発途上国での薬の流通を巡って現在起きている危機的状況について議論できればよいと考えている。

これまでのすべてのコメントに感謝。

Terry Fisher

[オリジナルポスト 10月26日午後3時48分]

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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