お使いのブラウザは最新版ではありません。最新のブラウザでご覧ください。

CNET Japan ブログ

バイオテロリズム

2004/09/04 00:07
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

プロフィール

lessig

「CODE」「コモンズ」等の著書や「クリエイティブ・コモンズ」などで知られるスタンフォード大学ロースクール教授ローレンス・レッシグ氏のBlogの日本語版。著作権や特許などの知的所有権の問題やオンラインカルチャー関連のトピックスを紹介します。
ブログ管理

最近のエントリー

(Richard Posner判事によるゲストBlog)

ラリー・レッシグはInsanely Destructive Devicesと題されたWIREDのコラムで、考えうる最悪の技術災害のひとつ、テロリストによって引き起こされる天然痘の蔓延について論じている。これが技術災害と呼べるのは、第三世界を含むどこでも安価かつ容易に入手可能な設備と生命工学技術によって、遺伝子改良された「強化型」天然痘ウィルスを作成できることが実験によって分かっているからだ。そうした強化版ウィルスは「ふつうの天然痘」よりも致命的であるだけでなく(通常の天然痘ウィルスは犠牲者の30%「しか」殺さない)、さらに深刻なことに天然痘ワクチンの効果を受けない(そして天然痘には治療法が存在しない)。天然痘は強い感染力をもち、初期症状も目立たないため、たとえば世界中の主要空港に設置されている噴霧式空気清浄機を利用すれば発覚までに非常に広い範囲に拡散させることができる。発覚した頃には感染者の隔離も有効ではなくなっているだろう。仮に隔離を実行する医療関係者やセキュリティ人員をワクチンの保護なしで動員できたとしても。(わたしの近刊Catastrophe: Risk and Responseの一章に詳細な議論がある)。

レッシグは技術的あるいは規制的方法でこの脅威に対抗できる可能性に絶望している。代わりにかれが(ブッシュ政権の外交政策に関する間違いようのないほのめかしと共に)持ち出すのは、われわれは「現在の孤立したカウボーイ主義」を放棄しなければならない、なぜならそれは「怒りに満ち、われわれへの復讐を求める者たちを数世代にわたって作りだしている」。よってわれわれは、「われわれを皆殺しにしようとする理由をなくすことに力を注ぐべきだ」。わたしは同意しない。怒りの「理由」はあまりにも多様すぎる。ユナボマーのことを考えてみよう。かれの抱く特定の不満を取り除いてやるためにわれわれになにができただろう。あるいはイスラム主義者たちだ。かれらにとっては西洋的価値観――例えば女性の解放を含む――こそ最大の怒りの元だ。そして当然、テロを免れるためにひとたびわれわれの生き方を変えてしまえば、テロという手段でわれわれの生き方を左右しようとするものたちに新たなインセンティブを与えてしまう。

レッシグの主張は追いつめられたあげくの苦し紛れであり、考えが足りない。バイオテロリズムに対抗することは非常に難しいとはいえ、実質的なリスクの軽減は不可能ではないはずだ。手段はIAEA(国際原子力機関)を模した国際組織の創設(ブッシュ政権はこれに反対した)、致命的な病原体および毒物へのより厳重なアクセス管理、そして現在設置されているような噴霧式空気清浄機の空港への導入禁止といった簡単なものも含む。テロリストにとってそうした噴霧器が致命的な病原体を撒き散らすように細工することは極めて容易だ。

だがもちろんお定まりの、そして深刻なジレンマはある。天然痘ウィルスのような病原体に有効なワクチンを開発するためには、そうした変種、遺伝子加工された「強化版」バクテリアやウィルスのサンプルを作る必要がある。だがそのサンプルもまた潜在的な兵器であり、作成技術はテロリストによっても利用されうる。そして新しいワクチンの開発のために多くの人間が技術を身につけるほど、悪用可能な知識を持つ者が増えることになる。

このジレンマを解決する方法は自明ではないが、ひとつの可能性は新ワクチンの研究を公開された大学の設備から非公開の大学関連施設へ、たとえばMITのLincoln labのような場所へ移すことだ。そうした施設は通常の大学環境よりも安全な条件の下で機密研究をおこなっている。

[オリジナルポスト 8月27日午後3時17分]
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
運営事務局に問題を報告

最新ブログエントリー