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Fox News:“Fair and Balanced”は「馬鹿げた主張」か?

2004/07/21 12:55
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「CODE」「コモンズ」等の著書や「クリエイティブ・コモンズ」などで知られるスタンフォード大学ロースクール教授ローレンス・レッシグ氏のBlogの日本語版。著作権や特許などの知的所有権の問題やオンラインカルチャー関連のトピックスを紹介します。
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「“Fair and Balanced”は“馬鹿げた主張”か?」Fox Newsの番組FOX News Watchは、Robert Greenwaldのドキュメンタリー映画『OutFOXed』を検証するセクションをこう始めた。驚いたことに、FOX News Watch出演者の一致した見解は「Yes」だった(!)。Neal Gablerいわく、「Fox Networkが共和党の見解を広めているというのは…ローマ教皇はカトリックだというようなものだ。自明のことで、…まったく否定のしようがない」。しかし、とGablerは続ける――まるで問題の映画を見てもいないかのように。「それがどうした?」

それがどうしたかって? はてさて、まず冒頭の質問についていえば、Foxはみずから“Fair and Balanced”、「公正で中立」と称している。もし「自明」ならば、フェアでもバランスが取れてもいないものを“Fair and Balanced”と呼ぶのは「馬鹿げている」という点には同意していただけるだろう。次に、Foxが偏向しているという事実は、メディア批評家にとっては確かに「自明の」ことだろう。Foxの番組を批判的に見ようとさえすれば誰にとっても明らかなはずだ。だがサンフランシスコで上映された際の質問にもあったように、メディア批評家以外の人々、あるいはFoxを見ない者にとって、公正で中立というFoxの宣伝がどれほど「馬鹿げた主張」であるか知ることには大いに意義がある。わたしの予想では、FOXの平均的な視聴者はニュース番組が実際にはどれほど偽りに満ちているかを知って驚くはずだ。

続くディスカッションは、『Outfoxed』を「説教じみて退屈」と評するJim Pinkertonの発言で始まった。かれにいわせれば、『Outfoxed』はFOX他の大メディアネットワークを「1950年代にキューバを支配していたマフィアどもよりも、ソビエト連邦よりも悪者に」見せているそうだ。これでは「説教じみて退屈」と感じたのも無理はない。そのように考えているとすれば、この映画を本当に見てさえいないのだ。マフィア云々というほのめかしはRobert McChesneyの、マフィアによるキューバの分割支配と政府によるメディアグループ寡占化への規制を比較する言葉から来ている――メディアグループが「マフィアよりも悪い」などという話はどこにもでてこない。ソビエト連邦というのも同じくMcChesneyからの引用だが、これもPinkertonの主張とは何の関わりもない。元のMcChesneyの言葉はただ、「プロパガンダがもっとも効果的なのは、聴衆が気づいていないときだ――ソビエト連邦のような場合ではなく」というものだ。

Pinkertonのもうひとつの見え透いた作り話は、『Outfoxed』が「不満を抱いた元従業員2,3人」の話で構成されているというものだ。この「2,3人」というのが7人を指しているのならば間違いではない(うち4名はサイトに掲載されている。3名は匿名を希望した)。だがもっと根本的な嘘は、「不満を抱いた2,3人の元従業員」の言葉だけがこの映画の根拠であるかのような言い方だ。『Outfoxed』はGrablerいうところ「自明の」結論を導くために5つの独立したソースを用いている:(1) Foxの元スタッフ、(2) Foxの内部メモ(FOX News Watchの出演者は誰一人として触れようとしなかった)、(3) 放送内容についての独立した機関による調査、(4) メディア・コメンテータたちへのインタビュー、そして(5) Foxの映像そのもの。

みずからも『Outfoxed』に登場しているCal Thomasは、「私の番組に出演した数多くの民主党員のことを無視している」のがこの映画の欠陥だという。これもまた事実ではない。『Outfoxed』には、Fox Newsに民主党の人間やリベラル派が出演していないという主張は一度も出てこない。主張されているのは――Thosmasもこれは否定していない――FOXの“balance”がアンバランスだということだ。事実、この映画の最も優れた場面のひとつは、Brit Humeの番組“Special Report”を数カ月に渡って観察したメディアグループの調査によって、この看板番組に招かれたゲストの八割以上が共和党員であり、民主党側の人間であった場合もそのほとんどが中道派だったという事実が明らかにされる部分だ。バランスがとれているとは言えないし、事実のフェアな報道でもない。

Thosmasはさらに続けて(あのすばらしいアナウンサー声で。彼の声は最高だ)途方もないことを言い出す。引用すると:

思うに、FOXがこれほど共和党寄りに見える理由は…他局のやっている事との対比によるものだ。Media Reserch Centerが行った調査のように、他のネットワークでどんなことが言われているか調べてみれば…左寄りの非常に強い偏向があることが分かるだろう。FOXが保守的に見えるのはそれらとの対比によるものだ。

われわれにはMedia Research Centersのような組織がもっと必要だとわたしは考えている。左側にも右側にも、さらに――想像してみてほしい――政治的な意図がない機関さえあっていい。だが、そうしたメディア研究機関がGreenwaldのように実際の映像を集めて要点を示してみせたとは聞いたことがない。またこのドキュメンタリーがおこなっているのは、Fox Newsの自称する“Fair and Balanced”と実際の姿を比較してみせることだ。

Jane Hall(誰? American University, School of Communicationの助教授らしい)は、この映画は「主張に反する証拠をすべて無視している」と非難する。彼女に言わせれば、Fox Newsには大勢のリベラルが出演しているという。例えば――本人いわく――彼女自身もリベラルだったそうだ。Hallはまた、非営利のメディアウォッチ組織FAIRを設立したJeff Cohenも「五年間に渡って」Fox News Watchに出演していた、という。

Jeff Cohenだって? Jeff Cohenは出演していないどころか、インタビューされているなかでもFOXに最も批判的なひとりだ。また既に書いたように、Fox Newsにはリベラルが一人も出ていないというのがこの映画の主張ではない。かわりにこのドキュメンタリーが伝えるのは、Clara Frenkの調査によれば、Fox Newsに招かれるリベラル派の「質」が保守派のそれをあきらかに下回っている――リベラル派の場合は「無名」か「貧弱」かどちらか――ということだ。

さらにHallは、この映画に関してまかり通っているまったく根拠のない馬鹿げた主張を幾度となく繰り返した。Fox NewsのCEOであるRoger Ailesのコメントが得られていないことで、この映画の主張そのものまでが(なぜか)信頼性を失うという話だ。実際には、Roger Ailesが「Fox Newsは“Fair and Balanced”なニュース局になるはずだった」と語る場面、および2000年大統領選の夜、Fox Newsで働いていたGeorge Bushの従弟がはなはだ貧弱な根拠に基づいてBushの当確を宣言したことは視聴者の期待を裏切る行為だったと述懐する場面がある。だがRoger Ailesが登場する2つのシーンが仮になかったとしても、だれかを批評する映画を公開するためには、批評される相手からのコメントが含まれていなければならないという考えは馬鹿げている。わたしの著書には多くの批判的な書評があり、知的なものもそうでないものもあるが、誰も公表前にわたしのコメントを求めてきたことなどない。そんなことをすればむしろ倫理に反しているとさえいえるだろう。

しかしFox News Watchという番組全体でもっとも楽しめたのは、最初のセクションと第二部との落差だった。最初のセクションは――誓って言うが――「メディアの偏向」がテーマだった。第一部では最初から最後まで、NewsweekのEvan Thomasによるただひとつの発言に焦点があてられた。Media Research Centerの引用では、Evan Thomasの発言は次のようなものだ。

メディアはKerryを勝たせたがっている。KerryとEdwardsは若く精力的なオプティミストとして報じられることになり、これはことによっては15ポイントほどの追い風になることだろう。

この一雑誌の一編集者による一言が、Fox News Watchの面々にとっては、メディア一般に「リベラル寄りの偏向」が存在している明らかな証明となるらしい。だがその一方で、(1) Foxの元スタッフによる証言、(2) Foxの内部メモ、(3) 放送内容についての独立した機関による調査、(4) メディア・コメンテータたちへのインタビュー、(5) Foxの映像そのもの、からなるドキュメンタリーは、番組のホストEric Burns曰く、「それほどフェアであるとは言えない」。

おそらくかれらが正しいのだろう。なにしろかれらは“Fair and Balanced”という言葉を商標として所有しているのだから(少なくとも、この商標への異議申し立てが解決するまでのあいだは)。

[オリジナルポスト 7月18日午後4時35分]
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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