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マクブライドのFUDふたたび

2004/01/23 23:05
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「CODE」「コモンズ」等の著書や「クリエイティブ・コモンズ」などで知られるスタンフォード大学ロースクール教授ローレンス・レッシグ氏のBlogの日本語版。著作権や特許などの知的所有権の問題やオンラインカルチャー関連のトピックスを紹介します。
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12月の公開書簡が暖かく受け入れられたことに気を良くしたらしく、SCOグループのCEO Darl McBrideが今度は議員たちに向けて手紙を書いている。ワシントン中に送付されている手紙のテンプレートはこの文章だ。前回同様、この手紙も事実とはなんの関わりも持っていない。それどころか、今回は前回にも増して強烈な内容だ。

この手紙でも繰り返されているひとつの議論についてはこのエントリで扱っておいた。だが、今回の手紙は憲法ではなく政策を核としている。McBrideが憲法のみならず政策も理解していないことを明らかにしているのだが。

McBrideいわく、「GPLをデザインした者たちは、著作権保護の領域からパブリックドメインへと移行させることにより、ソフトウェアを“解放”(フリー化)することを目的としてライセンスを作成したと堂々と認めている」。実際にはもちろん、GPLでライセンスされたソフトウェアはパブリックドメインではない。GPLソフトウェアは著作権の保護を受けており、その上で一定の利用条件が定められている。またパブリックドメインにある創造的制作物の重要な例としてはTCP/IPがある。(なんと、インターネットは憲法違反だ!)。

「GPLはウイルス的効果を持つよう、プロプライエタリソフトウェアを“フリー化”するよう巧妙にデザインされている」。これも誤りだ。GPLがそのライセンスによって“プロプライエタリ”なソフトウェアをフリーにすることなど不可能だ。著作権者自身がそのコードをフリーにすることを選択しない限り。McBrideはその選択を憲法違反だと主張している。コードがフリー化されたとしても、それはGPLの条項によるものではない。

SCOはもちろん、GNU/Linuxのコードのうち少なくとも一部は“盗まれた”ものだと主張している。正確にどの部分が“盗まれた”ものだと思っているのかはあいかわらず明かされないが、McBrideはそれが大きな部分だと確信しているようだ。いわく、「同じコードの大部分をフリーで入手できるのであれば、SCOからUNIXのライセンスを受けようとするものがいるだろうか」。「同じコードの大部分」? 正確には?

「オープンソース[McBrideの原文まま]ソフトウェアが導入されるたびに、ライセンス可能で著作権に保護されたプロプライエタリソフトウェアの販売が取り消され、あるいは可能性を奪われている」。ここにはいくつもの誤りが含まれている。まず、繰り返しになるが、GPLライセンスのソフトウェアは“ライセンス可能で著作権に保護された”ソフトウェアだ。するとMcBrideが言おうとしていることはこうなる:「オープンソース[原文ママ]ソフトウェアが導入されるたびに、プロプライエタリソフトウェアの販売が取り消され、あるいは可能性を奪われている」。これは真実だ。だが経済の成長は効率の追求によるものであり、不必要に高い価格によるものではないはずだ。McBrideが売り込もうとしている現代版重商主義はMarshallの経済理論によって一世紀も前に否定されている。おなじ論法にしたがえば、McBrideはインターネットも価値を破壊したと主張しなければならないはずだ。その非プロプライエタリなプロトコルがノベルやマイクロソフトやIBMのプロトコルを置き換えたことによって。このような議論はあまりにもばかげている。

「議会は公正な競争に反する略奪的価格設定やダンピングという困難な問題に常に取り組んできた」「究極の略奪的価格とは“フリー”であると私は主張する」。おやおや。マイクロソフトからの支援はどうした? インターネットエクスプローラも憲法違反?

「SCOグループは複数の政府機関と接触をおこなった。そのほとんどが我々の申し立ての持つ意味に理解を示したことに我々は勇気づけられている。」実に恐ろしい話だ。こうした問題に対する政府の無理解は今に始まった話ではないが。

「GPLが……我が国で最も重要な産業のひとつの基盤を浸食し続けることは許されるべきではない」。「許される」べきではない? ブッシュ政権が今度はGPLの禁止を計画しているとでも?

破綻しつつある企業の総帥が、追いつめられて訳の分からないことを口走り始めるのも勿論よくある話だ。(たとえばエンロンの年次報告書など)。だが、もしこの法螺話を真面目に受け取る政府の人間がいるとすれば、そのときこそわれわれは本当に困った問題を抱えていることになる。

[オリジナルポスト 1月22日午後3時52分]
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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