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典型的Declan:「速報!匿名性の排除発言にレッシグが返答」

2003/12/08 13:34
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「CODE」「コモンズ」等の著書や「クリエイティブ・コモンズ」などで知られるスタンフォード大学ロースクール教授ローレンス・レッシグ氏のBlogの日本語版。著作権や特許などの知的所有権の問題やオンラインカルチャー関連のトピックスを紹介します。
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あいかわらずのDeclanスタイルだが、Economistの記事に引用された私の言葉をめぐって、Declanのメーリングリストで大騒ぎが起きている。問題の「Fighting the worms of mass destruction」は、インターネットの諸悪――spam、ウイルス、ワーム等々――に対処するさまざまな方法と、問題への多くの観点を紹介したいかにもEconomist的な記事だ。

Declanはこの記事を読み、こう結論した:「レッシグは自由を確保するために匿名性を排除したがっている。」そして当然、彼のメーリングリストと私のメールボックスはその考えに対する怒りの声で溢れかえることになった。

だが、どうやら誰も問題の記事を読もうとはしていないようだ。Declanの発言は、実際に記事に書かれていることとは何の関係もない。確かめたければこのまま読み進んでもらいたいが、私の結論は(いつもと同様)こうだ:Declanは才能あるライターであり、すばらしい批評家でもあるが、注意深い読み手よりは爆弾魔に近い。彼の読者はこれを心に留めておくべきだろう。

問題の記事はEconomistのテクノロジー分野を担当する新しい記者と私の長いインタビューを基にしている。記事中では4カ所で私について触れているが、これがその4カ所だ:

…スタンフォード大学教授でありサイバー法の第一人者であるローレンス・レッシグは、政策決定者たちはサイバースペースに関して常に「愚かで買収可能」であることを示してきたと語る。彼らの現在の奇妙な優先順位をそれ以外にどう説明すべきだろうか、と彼はいう。インターネット上の著作権はレコード会社の強力なロビー活動によって最優先課題とされているが、彼らは犯罪の被害者というよりはむしろ急速に時代遅れになりつつあるビジネスモデルに頼った企業というべきだ。優先順位の最下位あたりに、ようやく数千万の消費者が影響を受けるオンライン・プライバシーの問題が現れる。

…製造物責任を負担するためのコストがソフトウェアのイノベーションを阻害するのではないかとの声もあるが、スタンフォードのレッシグはそれを否定する。小規模な新進企業が開発する、小さなシェアしか持たないオペレーティングシステムは、よりコンピュータ犯罪者の標的になりにくいため、支払う保険料もより少額となるだろう。

…インターネットのセキュリティ問題に対するもうひとつのアプローチはユーザー側にフォーカスしたものだ。有害な行為を思いとどまらせると同時に、犯罪者の確実なトレースと特定を可能にする。しかしこれは製造物責任とおなじく法的な論争を呼ぶものだ。レッシグはハッカーを捕らえるための懸賞金システムを提案する。これにはハッカーの追跡に最もふさわしい人材、つまり別のハッカーたちを登用することも含まれる可能性がある。「これがうまくゆくことには今の仕事を賭けてもいい」とレッシグは語る。

…自由を保全するためには、匿名性[anonymity]を仮名性[pseudonymity]で置き換えることができるかも知れないとレッシグは示唆する。

Declanの「レッシグは自由を保全するために匿名性を排除したがっている」という推測は最後の引用部分をもとにしている。だが、記事中で「匿名性を排除」したがっていると書かれているのは私でない。記事の次のパラグラフはこうだ:

「私はある意味、匿名性の根絶という考えのファンだ」NovellのチーフテクノロジストであるAlan Nugentは語る。「もしそれがセキュリティの対価ならば。」

Economistの(匿名の)ライターが「匿名性を仮名性で置き換える」と書くとき、それはNugentの発言と関連づけられている。私が記者に詳細に説明したように、われわれは仮名システムの正当性を認め、それを強化してゆく必要がある。そうすることによって人々のプライバシーをより保護することができるからだ。だが仮名を選ぶ権利を主張することは「匿名性の排除」ではない。わたしはそんな発言はしていないし、記事にも書かれていない。Declanが言っているだけだ。

続くメールでも、彼はあいかわらずDeclan節を披露している。メールの表題は"[Politech] Larry Lessig replies to Politech over limiting anonymity [fs][priv]" (レッシグ、匿名性の制限についてPolitechメーリングリストに答える)だが、これもまた誤解を招くものだ。わたしはAaronのメールに対して返答しただけであって、彼がDeclanにもCC:していたとは気づいてさえいなかった。だがともかく、Aaronへの返答のなかでも、わたしが強調したのは仮名システムを強化する戦略が必要だということだ。Aaronにはこう書いた:

私が語ったのは、あらゆるプライバシーを破壊しようとする法的なトレンドがあるということだ。愛国者法のような愚劣な法律は、どんな形のプライバシーも事実上根絶やしにしている。これに対応するには2つの道が考えられる。第一の道は、絶対的な匿名性を擁護し、そのためのシステムを構築することだ。そして第二は、仮名での活動に対する効果的な保護を確立することだ。ここでいう仮名とは、トランザクションをトレースしてユーザを特定することは可能だが、実際にトレースをおこなうためには捜査令状のようなものが要求されるシステムのことを指している。わたしは政府がこのようなシステムを構築すべきだとはいわないが、こういったシステムが許可され、奨励されるべきだと考えている。

私の見方では、前者を選んでも前進は見込めないが、後者を推進してゆくことができればプライバシーを大いに向上させられる。仮名のアイデンティティに対する確固とした倫理とアーキテクチャは、適切に保護されれば、われわれに今日以上のプライバシーをもたらすだろう。

もちろん、このアーキテクチャがトランザクションと個人のプライバシーとの間のリンクを適切に守れないこともあり得るだろうし、それは実際に起こるだろう。例えば政府機関の人間が、単に疑わしいというだけで個人を特定する情報を得ることができてしまうというような場合だ。もちろん私が求めているのはこうしたことではない。私が主張しているのは、たとえ政府機関であっても、このリンクを通して情報を得るには非常に強い捜査令状的なものを要求されるシステムだ。現在のわれわれの社会では、そうした監視行為はほとんど何の説明もなしにおこなわれている。

ここでも「匿名性を制限する」ようなことは何も言っていないことに留意してもらいたい。わたしが語ったのは仮名性の拡大についてだけだ。にもかかわらず、Declanはメールの冒頭で「ラリー・レッシグはそもそも“絶対的な”匿名性が気に入らないのだ、という印象を受けるのは何故だろうか?」と書く。そして彼はわたしが最初から採っていない立場――「われわれはリメーラなどを排除すべきだ」といった――に攻撃を加える。

繰り返すが、わたしはそのような発言は一切していない。実際、スタンフォードCISの仕事の多くはそういった種類の匿名性を弁護することなのだ。だからこそ、仮名を選択する権利を支持するという私の議論を、Declanが一体何を根拠にして“匿名性への反対”に歪めているのかは理解しがたい。

このふたつの議論を区別できないのは、もっとも粗雑な頭の持ち主だけだろう。そしてもちろん、Declanはそうではない。だからこそ、これは単なる挑発であって議論とはいえない。私に憤激のメールを送ってくる方々は、怒りの矛先を本当の原因に――わたしの言葉ではなく、わたしが言ってもいないことを勝手に作り上げた誰かに――向けることを考えてはいかがだろうか。

[オリジナルポスト 12月5日午後6時07分]
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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