Ms.Bolandのオープンソースソフトウェアに対する(誤)認識についてのスレッド(人の発言は真か偽かのどちらかだった昔が懐かしい)を読んでいて、今年2月にジュネーブで開かれた世界情報社会サミット(WSIS)の準備会議に出席したとき、関わることになった奇妙な争いのことを思い出した。
私は2回目の準備会議の前に、3つの基調講演のうちひとつを行うように頼まれていた。講演前の記者会見で、ある記者がこれから何について話すつもりかと聞いてきた。私はイノベーションに対するパブリックドメインの重要さといった話題(いつもの退屈な話だ)を扱うつもりだと簡単に告げた。だがそのあとで驚かされたことは、準備会議のモデレータであるICC[国際商業会議所]事務局長マリア・カッタウイが、「“知的所有権”に関する話題はWIPOが扱うものあり、この場で議論すべきではない」といって私を叱りつけたことだった。
私は事前に用意していた内容を即座に変更し、まったく違う講演をおこなった――Ms.カッタウイの苦言に関わらず――仮にWIPOが独占的な管轄権を主張しようとも、知識と文化の発展にパブリックドメインが果たす役割について、この“情報社会”に関するサミットにおいて議論をおこなうことがいかに重要であるか、について。これで今後WSISに招待されなくなったことは確実だ(すくなくともMs.カッタウイからは)。
こんなことがあったからこそ、いまWIPOの立場で話していると称する人々が、WIPOもまたパブリックドメインについて議論する場所ではないと発言することが余計に大きな意味をもつ。WIPOでもなくWSISでもなく、他のどんな場所でもない。恐らくわれわれ“アカ”たちの間だけが例外だ。(同志諸君、次回の秘密共産主義者集会に備え、最高の共産主義学者たちによるこの報告書を読んでおくように)