AppleとGoogleによる協力が発表されました。
「AppleとGoogle、新型コロナウイルス対策として、濃厚接触の可能性を検出する技術で協力」
まず私はこの動きを評価し、支持します。
この取組は、公衆衛生という、現在最大の関心を集める「公益」に資する上に、あくまでオプトインに基づく任意性が担保されています。少なくとも現時点で公開されている技術説明の解釈も含めて、独占禁止法やデータプライバシーの規制とある程度は整合できると理解します。
※Googleの資料:https://blog.google/documents/57/Overview_of_COVID-19_Contact_Tracing_Using_BLE.pdf
技術的にも、OSのレイヤーでワークするとなれば、究極的にはアプリは不要です。そしてほとんどのスマートフォンに搭載されるOSなので、大規模な展開が期待できます。なにしろ、シンガポールではなく高度に私権を認めた民主主義国家である日本において、オプトイン前提かつアプリで、本当に実効性のある"trace together"を実現することは、事実上困難でした(この発表があるまで、努力はするべきだとは思っていました)。
その上で、日本政府への提言として、政府(とその周辺)でバラバラに検討されている「日本版trace together」の動きは、本件を踏まえて一度すべて検討を中断すべきだと思います。
次に、SNS(外資系を含む)や主要情報メディアのアプリ(ヤフーとNHKを想定)などに、APIを介して本機能が組み込まれるように準備することが期待されます。実効性の観点からは「普段使いのアプリ」での利用が最善だからです。
政府による(ユーザインターフェースとしての)アプリ開発は否定しません。しかしながらそれは「民間事業者が参照するためのモデルとしてのアプリ」または「どうしても民間事業者を信じることができない市民向けのアプリ」としてのみ、社会的に機能するものであり、その程度のリソース配分に留めるべきでしょう。
むしろアプリ普及に係る政府の役割は、本サービスを受け入れる前述の「普段使いのアプリ」を選定するトラスト形成の役割に徹するべきです。それが本当の意味での「データフリーフローウィズトラスト(DFFT)」でしょう。
さらに、個人情報保護委員会等の関連する規制当局は、これらの動きを逐次モニタリングしながら、各国DPA、とりわけ欧州EDPB/EDPSや米国FTCと緊密に連携し、Apple及びGoogleを従来の秩序における市民社会の中で確実に位置づけておくことが、強く要請されます。そうした姿勢に基づき、国際的な執行力を高めることが、おそらく、オプトインで本サービスを実現するための「トラストアンカー」になるはずです。
以上、4月11日午前9時22分現在の、私の見解です。今後見直す可能性があります。