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米国の混乱は再分配の機能不全を一世代放置したからではないかという雑文

2017/01/31 13:00
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クロサカタツヤ / KUROSAKA, Tatsuya

インターネットや通信、放送サービスが大きく変容する中、産業、政策、技術開発等の最新動向や、情報通信サービスと社会の関係性を考える上での「新たな視点」を、さまざまな分野でコンサルティング活動をしているクロサカタツヤ氏がお届けします。
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日曜くらいにfacebookのグループ(リンク)に書いたものなのですが、こちらにも少し改めて書いておきますね。

入国拒否問題で、MITが弁護士を主要空港に貼り付かせて、帰国する学生たちのサポートで臨戦態勢を敷いているそうです。そしてMITに限らず、主要大学はどこも同じだという話が、あちこちから聞こえてきます。あるいは、「いま米国にいる対象国の学生は、国外に絶対に出るな」とも。

米国でいま何が起きているのか。日本でもこのあたりから、ようやく気づき始める向きも出てくるはず。今のところ当事者ではない日本だからこそ、敢えてちょっと「引き」の目線で考えてみると、結局は再分配の機能不全を放置したツケが回ってきたんだろうと思い至ります。

修士の学生(つまりクリントン政権とほぼ同じ)だったころ、公共経済学のTAをしていたので、特にそう思ってしまうのかもしれません。でも、そういうバイアスを抜きにしても、大きな要因の一つなのは、おそらく間違いない。彼の国に少し滞在してあちこちぶらぶらしてみると、肌身で感じられますし。

いやいや、オバマケアがんばってたじゃん、というのはあるかもしれません。確かに、社会保障プログラムという意味では、いくつかの瑕疵は認められるものの、相当がんばったと思います。

でも、あれは正直手遅れだった。それを必要としている人たちにしてみれば、「何をいまさら」ということだと思う。だからある意味オバマ前大統領のせいではない。もっと前にやらねばならなかった。

特にセーフティネット側の話ですから、事態は深刻です。よくこういう議論の時に指標として挙げられる失業率や収入の改善は、フローの問題ですから、表面的には「うえーい」ってなりますけど、フローの改善はどこまでいっても表面的な問題でしかない。自分の懐に手を突っ込んでみれば分かるように、格差って資産が起点ですから、むしろ資産なき人たちにとってのラストリゾートは、社会保障なんですよ。そこが底抜けしていたら、「風邪ひいたら死ね」と言われているのに等しい。

じゃあいつだったら間に合ったのかと「たられば問答」をしてみると、たぶんビル・クリントン時代でしょう。といっても90年代の話ですから、ネットを探してもなかなか論考は見つかりません。

そんなわけで、慶応の学生さん(たぶん法学部の久保先生(リンク)のゼミ卒業生)の卒論をちょっとご紹介したいと思います。こんなところで引いてこられるとはお釈迦様にも分かるまい。でもぼくも慶応の教員の端くれ(リンク)ということで、ご容赦ください。

クリントン政権におけるヒラリー・クリントンの役割

http://fs1.law.keio.ac.jp/~kubo/seminar/kenkyu/sotsuron/sotsu11/cakagi.html

話を戻すと、ヒラリー・クリントンが取り組んで、完全に失敗した、医療保険制度改革。仮にあれが成功していれば、こんなことにはなっていなかった、かもしれない。20年以上前だから、つまり一世代前です。

そう、米国は、再分配の機能不全を、一世代分、放置してしまった。それどころか、そこを回避してトリクルダウンを目指しても、結局機能しなかった。そもそもレーガノミクス以降の結果論的再分配は、トリクルダウンによるものではなく、ボルカーによるスタグフレーション対策の効果でしょうし。

そしてトリクルダウンって、失敗するとものすごく社会全体を不穏にするんですよ。大国だなんだっておだてられても、その恩恵に与れない人たちにすれば「何が大国だ」という気分になるでしょう。そりゃ怒るよね。

理屈の上では、グローバリゼーションの恩恵を最も受けているのは、米国です。でも、これまでの米国に怒っている人たちの気分を、日本風に言ってみれば、そんな理屈は「日曜朝の情報番組に出てくる評論家たちの説教」または「アルファブロガー()乙」みたいな感じにしか、聞こえないでしょう。

いま起きているのは多分そういうことだと思います。だから一過性の問題ではない。というか、来るべきところまで来てしまって、もうルビコン川なんてあっさり渡った後なのかなーどうかなー、と思っています。

いやいや、それこそレーガン大統領の時もすごかったよ、という年配の方もいらっしゃいます。確かに、プラザ合意とか、スターウォーズ計画とか、なかなか激しい。それに対する中曽根元首相も、ウィリアムズバーグ・サミットでの活躍など、本当にがんばったんだと思います。

ただ個人的には、レーガン大統領の治政に関する機微は、さすがに覚えていないんですよね。それ以降であればなんとなく肌感覚があるんだけど。だから「どこかに着地できるのか」は、正直分かりません。

おそらく我が国から見た当面の日米関係は、今週末に予定されているマティス国務長官の来日の結果如何で、概ね決すると思われます。従いまして、その成功を強く祈っていますし、静かな雰囲気の中で同長官をお迎えし、冷静な話ができるよう、一人の国民として見守りたいと思います。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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