なんかぼんやり盛り上がってましたね。
【炎上】イケダハヤト(アフィブロガー) VS 田端信太郎(LINE執行役員) 35年ローンという借金の是非をめぐって大論争 | netgeek
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ところでこの記事はステマらしいという噂が飛んでいますが、その真偽はとりあえず別の方に確認いただくとして。読んでいて感じたことを書き留めておきます。
結論としては、「どっちの言うことも分かるけどそこじゃないんだよなー」という感じです。
まず、35年後が云々、という論点設定自体がおかしい。これはイケハヤさんがいろいろ「分かってない」んだと思います。なぜかといえば、35年後のことなんて、誰も分からないからです。
大学で経済学の初歩的な講義を受けた方なら、「ライフサイクル仮説」という言葉に聞き覚えがあるでしょう(あって欲しい)。詳細はここでは割愛しますが、生涯で得られる所得を寿命で割り算してみた、というヤツです。それを踏まえて、人生の時々でどんなカーブを描くと、世の中どうなりますかね、というような話。
このライフサイクル仮説は、我が国においてはあまり妥当じゃないかもしれない、とたまに言われます。老後の社会福祉があまり充実していない(ように見える)ため、貯蓄過多になりやすい、というのがその一因とかなんとか。
そのあたりの真偽は財政学の専門的な議論が必要ですが、市民感覚としては「そうかもねー」と思えるでしょう。とかく我々にとって35年後の将来なんてのは皆目見当がつかない、ということです。
だからフラット35を我々自身がリスク評価したところで、「分かんねー」というのが正しいわけです。この「分かんねー」というのは、リスク評価のための妥当な構造(仮説)を得られないということであって、そうした状況下で評価された(ように見える)リスクは、結局私たちの「現時点での心の鏡」でしかありません。
すなわちそこで論じられているリスク評価(らしきもの)の結果が、過大であろうと過小であろうと、そもそもリスク評価自体が安定しないので、そこに論点を合わせると、「それプロレスじゃね?」ということです。
そう考えれば、あんな細そうな身体でアングル決めようとするイケハヤさんのプロレスラー魂はなかなかのものだし、湾岸地帯をランニングして鍛えている田端さんがそのアングルにのるえげつなさも立派なものだし、とにかく紅組も白組もがんばっていただきたいわけです。
さておき。では、住宅ローンの問題を論じることに、大して意味がないのか。いや、そんなことはないはず。
たとえば私は、住宅ローンにおける最大の問題は、35年後ではなくて、スタートから10年くらいが経過した頃だと思っています。自分自身(および世帯を構成する家族)のライフスタイルの変化が、不確定性(※)を伴って生じるので、本当にその家に住み続けるのが妥当なのか、一番迷いが生じる頃です。
※「不確実性」とは経済学的な意味で峻別しています。
その時、住宅ローンの元本がどれくらい返済されているか。よく知られているように、住宅ローンは当初ほとんど元本を返済していませんね。じゃあ10年経って「やっぱ売ろうか」という時、本当に借金を返せるのかな、どうかな、みたいな。
一方で住宅ローンは住宅を担保にした借金ですから、住宅そのものの資産価値はどの程度低減しているか。そして市況はどのような状況か。そうした制約条件にも、大きな影響を受けます。
当たり前ですけど、この当たり前すぎる事実が、割と頭痛かったりするわけです。特に我が国は「新築教」というアレな宗教が猛威を振るっていますし、耐震性基準とかも変わっちゃいますからね。
そんなわけで、おうちを買って10年くらい経って、「うーん、人生どうしよっかなー」という時期において、「でも住宅ローン抱えて10年経ったけど全然返済終わってないもんなー」という状況が、世帯主はもとより世帯を構成するすべての人生における選択肢を狭めるかもしれないわけです。
そう考えると、住宅ローンって割と大変ですね。
いやそんなの当たり前じゃん、借りる前に考えないヤツがバカなんだし、腹括ればいいんじゃね…という声が挙がるのは分かります。
でもねー、もしぼくらが社会システムの変化に対してそこまで自覚的になれるんだとしたら、我が国はいまごろデフレからは脱却してるはずなんですよ。
大体、自分の家族がどうなるかってことさえも、よく分からないですし、親になってみると「できるだけ干渉せずに育ててあげたいな」って思うわけですからね。
そうやってみんな自分の人生(とせいぜい家族の人生)を部分最適していくわけですが、そこに住宅ローンという代物が、正負の如何を問わずにレバレッジとして入り込んだ時、実は私たちのライフスタイルの中で、行使できるオプションは、ものすごく減っているのかもしれない、ということは、もう少し議論されていいんだと思います。
そしてさらに言えば、そうした悩ましき部分集合の総和が、我が国におけるホワイトカラーの「正規雇用だいすき!終身雇用マンセー!」を生み出す背景だとすると、これはみんなで囚人のジレンマごっこをしているのかも分からんね、というわけです。
なにしろ金融機関って、終身雇用マンセーの会社に勤める正社員なホワイトカラーを優遇して、住宅ローンを貸し付けるわけじゃないですか。
ウソだと思うなら、大手企業の本社入口とかに、通勤時間帯に紛れ込んでみるといいですよ。通勤途中の皆様に、金融機関の人が「優遇しまーす!皆様にだけ金利お安くしまーす!」ってチラシを、ガンガン配ってますからね。
ま、そのへんの話は、また別の機会に。