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小保方さんの騒動について

2014/03/18 16:00
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プロフィール

クロサカタツヤ / KUROSAKA, Tatsuya

インターネットや通信、放送サービスが大きく変容する中、産業、政策、技術開発等の最新動向や、情報通信サービスと社会の関係性を考える上での「新たな視点」を、さまざまな分野でコンサルティング活動をしているクロサカタツヤ氏がお届けします。
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まずはじめに、小保方さんとそのチームに対する私の見解は、「ふざけるな」というものです。

人文科学ではありますが、私自身も一応は修士課程まで進んだ人間ですので、最低限の科学のお作法は分かっているつもりです。そうした経験に照らしても「これは単なる事故や軽過失なんかじゃない」と思っています。

特に今回は、国の税金が投入された国研であり、また日本を代表する研究機関の一つである理研を舞台にしています。また、世界中の多くの患者さんの期待を煽った以上、厳しい糾弾が必要なのは、言うまでもありません。擁護なんぞは必要ないと思っています。

そうした大前提を踏まえつつ。

本件は、日本社会の闇がギッシリ詰まった宝石箱状態です。その箱のふたが開いたどころか、ドーンとひっくり返された状態である以上、もはや「オボカタかコボカタがどっちか分からないのはふざけるな」みたいな意味不明な批判さえ成立しそうな勢いです。

そして、マスコミからソーシャルに至るまで、水をも漏らさぬメディアスクラムを組んでいます。

だからこそ、落ち着いて考えてみたいのですが、今回試されているのは、我々のリテラシーなのではないでしょうか。そしてそれは、STAP論文がnatureに掲載された、つまり理研や小保方さんがヒーロー視されていた当初から、一貫して変わっていないと、私は考えています。

まず、STAP細胞そのものについて。正確に理解できている人は、現時点でも少数だと思います。細胞生物学の基礎的な素養が必要ですし、またiPS細胞も含めた最近のトレンドを把握しなければならない。おそらく日本語で「刺激惹起性多能性獲得細胞」であることや、STとAPの違いなど、基礎的な理解さえも、備えている方は少ないように感じられます。

次に、学位授与の手続きや学術論文のプロトコルについて。論文には様々な種類があって、そのお作法にも共通するものと種類によるものがあります。おそらくこれは、修士以上に進まれた方でないと、そもそも関心もないはずですから、ご存知ない方がほとんどだと言えます。

国研のあり方や日本の科学技術予算の枠組みについても、相当難しいところがあります。これは国立大学や政府由来の研究所と、契約行為に至るまでの案件獲得行為に従事しないと、その複雑さや機微はわかりにくいと思います。さらにいえば予算獲得というプロセスを経験しないと、その重苦しさは共有できないかもしれません。

しかし、そのあたりの話は、その道のプロに任せておきましょう。

私がここで言うリテラシーとは、そういうことではありません。ソーシャルメディアによって可視化されてしまった、私たちの落ち着きや節操のなさ。私がいま気になっているのは、そのあたりです。

前述したような背景知識がほぼゼロであるにもかかわらず、今回多くの人がそれをお茶の間やソーシャルメディア上で論じている。誰かのふんどしを借りた物言いを繰り返しているわけで、つまり「知ったかぶり」です。そうやって周囲の耳目を集めるのは、子供の頃には多くの人が経験する手口だと思います。

私もたまにやっていましたから、思い出すと赤面する限りですが、知ったかぶりは当然理解が浅い。だから論理的、科学的、あるいは経験的に「いやそれ違うでしょ」と否定されると、一瞬にして主張が崩壊します。子供の頃は、それで恥をかいて終わり、ということで、世界の平和が保たれているはずでした。

ところが現代はインターネッツの時代です。断片的にでも科学的な理解や経験を持つ人が、あちこち物を言い、それが瞬時に世界へ広まる。知ったかぶりをしたい側からすれば、「ふんどしがいくらでも供給されている」状態というわけです。

知ったかぶりで承認欲求やカタルシスを得たいと考える人たちにとっては、パラダイスといえます。一度崩壊した脆弱な物言いも、別のふんどしに乗り換えて主張を変えればいいのですから。実際、


1月:「小保方さんは日本の星」

2月:「STAPを再現できない日本の科学技術は糞」

3月:「小保方と理研は国賊」←イマココ 


と主張を変える人を、今回あちこちで見かけました。この節操のなさは、やはり異常だと、言わざるを得ません。ちなみにこうした主張の変遷から次なる展開を予想すると、


4月:「消費税増税ウゼー」 


ということになると思います。なぜならば、騒ぎすぎた自分と、騙された自分に対する恥ずかしさや怒りが、おそらくそろそろ疼き出すからです。そして「割烹着バーカ」と言い放ったあとは、次の知ったかぶりの話題を探す。

これはネタではなく、すでに小保方さんを擁護したツイートを、自らの黒歴史としてクリーニングする方々が出てきていることからも、蓋然性は高いと思っています。おそらくマスコミも、消費税増税批判の予定稿を大量に仕込んでいるでしょうし。さらに、75日経った頃には「尖閣で戦争が始まった、がんばれ日本」とかいうことに…ならないといいですね。

閑話休題。

ここまで回りくどく書けば、そろそろお気づきですね。そうです、そうやって節操なく物言いを翻す方々は、小保方さんチームと同じ穴のムジナなのです。

彼女が博士論文から今日に至るまで一貫してやってきたこと、それはつまりそういうことでしょう。ウケることを狙い、承認されることを求め、自ら考えることなく権威に依存してきた。それは、私たちがソーシャルメディアやお茶の間でやっていることと、本質的には大差ないのではないでしょうか。

そう考えると、小保方さんは私たちの鏡だ、ということなのかもしれません。

いや、小保方さんが日本の国民性を代表しているなどとは、論理の飛躍であろう。あれは小保方さんチームが人間として劣っていたからであって、彼女らと一緒にされては困る--そういう物言いも分かりますし、私もそう思いたいです。なにしろ、冒頭に触れたように、私も同じく「ふざけるな」という気分ですから。

しかし、インターネッツで散見された物言いを見ていると、「そんなに踊らされて、踊り疲れたことに逆ギレするくらいなら、知ったかぶりなんかしなきゃいいのに」と思わされることも、正直あります。そして、そんな節操のない物言いを、私たちもついうっかり、しているのではないでしょうか。

少なくとも私自身は、それを否定することができません。

そしてその結果として、日本のみならず世界中を巻き込んだスキャンダルになってしまった。これはもはや否めない事実です。かつてES細胞で世間を騒がせたファン・ウソク氏と、それにはしゃいだ韓国社会を、私たちは冷ややかな目で見ていました。その時と同じ視線を、いま私たちは浴びようとしているわけです。

だとすると私を含めて、今回の顛末から何らかの自戒を得ることが、私たちの社会の質を高めることにつながるように、私には思えるのです。

mixiもtizenもほどほどにがんばっていただきたいので、オチは特にありません。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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