ソフトバンクの電力事業への参入は、分からないことが多いので、大したことが書けるわけではないが、備忘録的に簡単なメモを残しておきたい。
まず彼らが何をどうやろうとしているのかが、正直よく分からない。電力事業といっても、発電事業なのか、送電事業なのか、販売業なのか、それらの支援事業なのか。あるいは一昔前のエンロンのように、そのあたりを権利的に質草に取った上での金融事業というのもあった。
定款を変更するのは、そうしておかないとMAもままならないからというだけであって、おそらくまだ何も決めていないのだとは思っている。広げられるだけ風呂敷を大きく広げて、彼らにとって都合のいいことを見つけたら、最終的にはあたかも最初からそれを狙っていたかのように辻褄を合わせていくのは、彼らの十八番である。
一方で、何も決めていないように見えるわりには、目先の動き方が奇妙に具体化しすぎているのが、少し気になる。たとえば関西広域連合をはじめとした自治体を口説いたり、農地の転用による太陽光発電をぶちあげたり、といったあたりは、いざ打ち上げた以上はそう簡単に撤退できない話であり、空手形というには裏書きが明瞭だ。
確かに、農地転用はおそらく法的にも可能だし、基地局用地交渉のノウハウはそれなりに彼らにも溜まっているので、彼らにとって都合のいい条件で農地を買い取ることなく設備投資を進めていくことは可能だろう。
しかしそれこそケータイと同じで、一度作った基地局はそう簡単に撤去できないように、太陽光発電設備もまたしかり。また対象が電力という「より重いもの」である以上、農地側の都合で発電状況が変化するのは、「東京の中心でiPhoneがつながらない!」という冗談のような話では当然済まない。
そのあたり、相変わらず風呂敷でありながらすでにアンコを詰めているというあたり、いつもの彼らの風呂敷の広げ方とは異なる気配を感じる。この「まずは具体策を」というビジョンとパッケージの混同ぶりから、今回の案件が財務畑ではなくロビイング畑を中心に進められているような印象を受けている。
しかし、こうしたロビイング畑のアプローチは、およそ国の予算や政策をアテにした動き方である。いみじくも枝野さんが別件(銀行の債権放棄)で「あくまで民間の話である」と言ったように、いくらドービルで我らが菅直人首相が「孫さんの動きが心強い」と触れたところで、基本は相当額をご自身で資金調達していただかなければならない。
これまでの流れなら、みずほ銀行が調達に応じるかどうか、というところがカギを握るのだろう。しかし当のみずほ銀行は、震災直後に起きたシステムトラブル(によって生じた銀行経営上極めて深刻な事象)によって、いまそれどころではない。というかそういう危機感をもっていただかないと、血税投入という血の雨が降りかねない。
となると彼らのお財布候補として、野村證券やDCMのようなエクイティに水を向けられるのかもしれないが、彼らとて通常手数料だけでおいそれと引き受けられるリスクではなかろうから、MAの案件とのバーター等を考えているように思われる。というか私が担当者ならたぶんそういう気分になる。
そんなわけで、第三国からソーラーパネルを会社ごと調達するくらいなら、ウィルコム譲渡の際に受けたであろう恩義を、いまこそ礼節をもってお返しすべき時ではないか、と微妙な方面に話を向けたところで、今日はここまで。
(追記)DCMは日本でも活動しているプライベート・エクイティであって、NTTドコモのことではありません。