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東日本大震災を受けて

2011/04/15 00:00
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プロフィール

クロサカタツヤ / KUROSAKA, Tatsuya

インターネットや通信、放送サービスが大きく変容する中、産業、政策、技術開発等の最新動向や、情報通信サービスと社会の関係性を考える上での「新たな視点」を、さまざまな分野でコンサルティング活動をしているクロサカタツヤ氏がお届けします。
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震災について、いま何を考えているのかを書き留めておこうとしたのだが、何から書き出せばいいのか逡巡したまま、1ヶ月以上が経った。いまでも正直分からないままではあるが、それでも書き留めておかなければと思い、手を動かしてみることにする。
 
 

●まだ完全には前を向けない

 
地震国に暮らす者としては、来るべきものが来たとしか言い様がないのは、頭では分かっている。しかしいざ「その日」が来てしまうと、なぜこんなことになってしまったのだろうと、率直に思ってしまう。つい1ヶ月余り前までそこにあった、豊かで平穏な日常は、もう誰の手にも二度と戻ってこない。この現実を、私自身が、まだ受け入れられずにいる。
 
東京圏に暮らす私でさえもそう思うのだから、被災地でご家族や知人、あるいは家や仕事を失った方々の絶望たるや、いかばかりだろうか。帰ってこない母親をサンタクロースに願う幼い娘さん。自慢の息子を失って遺された孫と共に立ちつくす老夫婦。あるいは「せめて命絶たれる時は一緒に」という思いで衣服が絡まったまま見つかった親子の遺体。そんな話を見聞きするたびに、胸が締め付けられるのと同時に、ひとまず一家全員が無事に暮らせる我が身を、この上ない幸せと思う。
 
諸般の事情で、被災地の事情には、一般の方よりも多少明るいと思う。それもあって、まだ完全に前を向いて「復興」のことを考える気分には、正直なれない。もちろん生き残ったすべての人生は続くし、その人たちが生きていくための社会を考えるのも、自らの仕事のうちと心得て、動きはじめてはいる。しかし被災者の方々が未だなお、今日と明日を生き抜くのに精一杯である状況にあることを思うと、お気楽に将来像を描くことは、私には到底できない。
 
だから今は、遠い先のことを空想するよりも、今回何が起きたのかを検証すること、そして明日を今日よりもいい日にするためにはどうすればいいのかを考えることを、自分自身に課している。そして来るべき復興の日に向けて、被災者の方々置き去りにした議論は、絶対に避けなければならない。
 
 

●防げなかった二次被害

 
今回の震災で残念なのは、水面下も含めて二次被害が極めて多いことである。たとえば、申し送りが不十分なため、十分な治療が受けられずに避難所で亡くなる方が少なくない。一向に改善されない被災地の状況や原発に係る風評被害に絶望して自ら命を絶つ被災者もいる。
 
あるいは福島から避難してきた子どもたちがイジメの対象となるばかりか、大人の間でもそんな対応が少なくないという。これは原発問題の当事者である東京電力関係者も同じで、ガソリンスタンドに並んでいた東京電力社員が見知らぬ人から蹴られた、という話も耳にした。
 
また、被災地はもちろん、計画停電下の関東圏でも、窃盗や強姦等の犯罪が少なからず起きている。「震災後も冷静なジャパン」という海外からの評判を精神的な拠り所にしている向きもあろうし、事実海外に比べればよほどマシとはいえ、残念ながら治安はいくばくか悪化している。
 
地震と津波の犠牲ももちろん悔しい。しかし二次被害は人間によって引き起こされている面が多い。これは私たちがもっと知恵と勇気と行動力を持っていれば、防げたことでもある。それだけにより一層悔しいし、これらが現在進行形である以上、いまからでもできることがあるはずだと思っている。
 
 

●情報メディアの不足という事実

 
テレビは、震災当初は情報が不足し、津波や余震の警報装置となっていた。そして震災後の最初の日曜くらいからは、被災地からの映像が徐々に入ってきて、大津波の衝撃的な映像や福島第一原発が爆発する映像を繰り返し放映し、人々の不安をかき立ててしまった。しかしその後は、被災地でもがんばって生き抜いている被災者の映像が流れ、安堵した人も多いはずだ。
 
ネットは、テレビが情報を得られなかった震災直後、ソーシャルメディアを中心に一次情報を取得できるメディアとして、極めて効果的に機能した。しかしテレビの情報が増える頃になると、疲れや不安といった個々人の心理がそのまま投影されて、デマや諍いがあちこちで目立ち、情報メディアとしての欠陥を強烈に露呈した。
 
ラジオは、テレビほどのインパクトもなく、またネットほどに一次情報を扱えるわけでもない。しかし音声という特性を最大限活かして、被災地で寂しい思いをしている人、緊急地震速報や計画停電で不安になった人、テレビやネットに疲れた人に、寄り添うようなメディアとして機能しているという。またコミュニティFMが被災地の情報ハブになっているという現実もある。

新聞は、当初タイムラグもあって、まったく役に立たないと思われていた。しかし電気さえもまともに使えない被災地における数少ないメディアとして、いまでも現地で重宝されていると聞く。多くの人がまとまった情報量を共有できる効率的なメディアとして、新聞の存在意義が示された格好でもある。
 
このように、テレビ・ラジオいずれも、情報メディアとしての能力と限界をそれぞれ露呈した。そしてこれだけ多様な情報メディアがありながら、どれも帯に短し襷に長し、であった。これは、有事ゆえに顕在化したものの、問題の構造は平時でも変わらない。そのことに気づいた人も少なくないはずだ。
 
 

●震災後に姿が現れた新しいこの国のかたち

 
震災後しばらくは枝野官房長官の落ち着いた対応に評価が高まった。しかしここに来て、原発問題が長引き、被災地の状況も一向に改善されないことから、政府に対する批判は日に日に強まっているように感じる。
 
私自身、政府を手伝う仕事も少なからず手がける身ではあるが、今回の震災対応に関しては、政府を闇雲に擁護するつもりはない。問題は多々あったし、前述のように「もっと機動的に動ければ回避できたであろう二次被害」もある。そしてこれは現在進行形であり、真っ当と思える批判も少なくない。
 
政府が信用できない、とは思わない。原発問題も含めて、政府はおそらく事実を隠蔽してはいない。コミュニケーションの方法にはひどく問題はあるものの、間違ったことやウソを言っているわけではない。政府の発表を冷静に分析できる人であれば、それなりに現状のリスクは把握できているはずだ。
 
それでもなお政府に問題があるとすれば、彼らの信用の問題ではなく、そもそも今回の震災は政府の能力を超えてしまっている、ということなのだろう。残念だが、信用以前の問題として、私たちの政府では今回の震災に係る問題を解決できなかろう、ということである。
 
では誰に頼るか。海外からの支援は大変ありがたく、今後も協力を仰ぐべきだが、彼らに解決可能な問題は、全体の一部に過ぎない。かくなる上は、政府ではなく私たち一人ひとりが、自らのコミュニティに責任を持ち、小さなガバナンス(私はこれをマイクロ・ガバナンスと呼びたい)の下に大同小異しつつ、コミュニティ間の連携を進めていくより他に、道はないだろう。
 
その上で、日常生活はマイクロ・ガバナンスの下に形成されたコミュニティが自律的に担い、一方で政府には政府にしかできない仕事(外交、防衛、国家財政等)を担ってもらう、という役割分担が、これからのこの国のかたちになるように思う。というより、現実問題として、おそらくそれしか選択肢は残されていないと、私は思う。
 
 

●必要なのは行動と言葉

 
当面の私たちに必要なのは、
 
・被災者を最大限いたわる
・動ける人はがんばって動く
・日本が生きていることを世界に伝える
 
ということだと思う。取り立てて難しいことではなく、やるべきことは山積しているのだから、どんどんやるべきだ。そして「お節介かな、怒られるかな」と思っても、怒られたり横っ面を叩かれることを恐れずに、やってみることが大事だろう。
 
そういう思いを言葉にすることも、大事だと思っている。口先ばかり達者でどうする、という批判もあろうけれど、一方で人間は言葉で考え、動き、場合によっては生き死にさえ決まってしまう生き物である。だとしたら、自らが考えることを言葉にして、それによって自分自身を奮い立たせたり、誰かを鼓舞するすることは、可能なはずだ。
 
そして、亡くなった方に報いるためにも、この国の新しいかたちを、私たち自身で作らなければならない。遺された被災者や、ひいては私たち自身が、今回の震災を踏まえてよりたくましく生きていける、そんな社会を作らなければならない。それは、私たちが次の世代にできる精一杯のことでもある。少なくとも私は、幸いにして健康に生きている二人の子どもに、そんな社会を手渡していきたい。

 
というわけで、私もそれを実践すべく、エントリにしてみた。みたのだが、読み返してみて、まるで言い足りないことに気づく。しかしそこで踏みとどまっていては先に進めないので、このエントリを踏み石として、いまできることを粛々とやっていこうという、一種の決意表明にしたい。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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