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許されざる起業

2010/11/23 22:40
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プロフィール

クロサカタツヤ / KUROSAKA, Tatsuya

インターネットや通信、放送サービスが大きく変容する中、産業、政策、技術開発等の最新動向や、情報通信サービスと社会の関係性を考える上での「新たな視点」を、さまざまな分野でコンサルティング活動をしているクロサカタツヤ氏がお届けします。
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新嘗祭の佳き日に、仕事とか起業について感じたことを少々。
 
一年の収穫を日本中が祝うこの時期には、毎年税務署様からは有難いお便りが届く。本年分の確定申告の書類だ。有難いことに、今年も少し前に届いた。誠に有難い限りである。本当にいつもありがとうございます。
 
さておき、サラリーマン生活と一応の決別をしている身としては、これを眺めているとしみじみ思うことがある。日本の所得税方面の税制って、実は起業に向いてるんじゃないの、と。
 
たとえば、いわゆるトーゴーサンピンという言葉の通り、給与所得者に比べれば自営業者は経費を計上しやすい。これはスタートアップも似たようなもので、実際に経費がかかるのも間違いなく、その経費は常識の範囲内であればそれなりに認めてもらえるものである。
 
また財務省資料によれば、直間比率も7:3程度である。8:2という米国ほどではないにせよ、英国の6:4、フランスやドイツの5:5に比べれば遙かに状況はいい。前述の所得税や法人税と経費の関係を鑑みれば、事業や会社を起こそうとする人にとって、必ずしも悪いというものではない。
 
実際、日本には中小零細企業がやたらと多い。多いので中小企業庁なる省庁まで存在しているくらいである。となると、「なんだ、みんなちゃんと起業してるんじゃないですか」という話になるのだが、一方でネットをぼんやり眺めていると、日本は起業しにくい社会である、という物言いをよく見かける。このギャップは一体どこから生まれるのか。
 
そこで、中小企業庁が毎年まとめている「中小企業白書」を眺めてみると、設立登記件数こそバブル前とそう大きく変わってはいない(バブルの最中からはさすがに半減している)ものの、開業率が1992年頃を境に、6-7%台から3-4%台へと結構落ち込んでいることが分かる。そしてその後は基本的に横ばいのまま現在に至る。法人の総数は大差ないにせよ、前年比で起業件数が減っているとなれば、感覚としては「起業しにくい状況」といえるのかもしれない。
 
ではなぜ起業しにくくなったのか。一つは1990年に最低資本金制度が導入されて、株式会社の設立に1,000万円以上を要するようになった、というのはあるだろう。すなわち、会社設立に必要な種銭を集める能力の要求水準が上がった、ということ。
 
一方、その種銭の供給者、つまりエンジェル(あるいはダンナ)が減った、というのもある。1992年は、東海道新幹線で「のぞみ」が開業したり、ホンダが520万円のバイク「NR」を発表するなど、バブルの残り香が漂う一方で、有効求人倍率が1.0を下回り(以後2005年12月まで回復なし)、東証1部の平均株価が15,000円を下回るなど、「ダウントレンドのはじまり」を予感させる年でもある。
 
その最低資本金制度が、新会社法施行によって1円まで下がったのが、2006年。この年は前年比で見れば若干上向いているが、その次の2007年はまた低迷時期の水準に戻っている。中小企業白書に掲載されている推移は現状でここまでなので、本当に状況を知りたい時期はまだもう少し先にならないと明らかにされない。
 
というわけで、日本が起業しやすいのかしにくいのかは、相変わらずまだよく分からない。ただ、一方的に「しにくい」と言い切れる状況でも、ないようには思う。だとしたら、「なんとなく起業しにくそうという評判だから」というのは、起業しないことの言い訳にはどうやらならなそうだ。起業原理主義者ではまったくないので、けしかけるつもりはないのだけど、悩んでいる人はチャレンジしてみてもいいんじゃないかと思う。
 
実際、自分の足で立ってみるというのは、私自身にとっても極めて有益だった。たとえば、自分が事業を起こすにあたって、いくら集められるのか。そしてそれはなぜ必要なのか。それを種にしてどんなアクションを起こせるのか。収益をどう配分すればいいのか。さらにその成果に対してかかる税金がどのように使われているのか。そういうことを肌感覚で意識するようになる。そしてこうした感覚は、仮に事業がうまくゆかず、将来またサラリーマン人生に戻るとしても貴重なものとなるだろう。
 
ちなみに1992年の年始には、X JAPANが東京ドーム3Days公演「破滅に向かって」を催している、とWikipediaには書いてある。以前から、バブルが本当に終わった年として認識はしていたが、あれこれ興味深いものである。
 
タイトルは1992年にオスカーを手にしたイーストウッドの逸品から借用。この頃からイーストウッドは巨匠路線を歩んでいるように思う。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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