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ハート・オブ・和代

2010/05/08 10:22
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プロフィール

クロサカタツヤ / KUROSAKA, Tatsuya

インターネットや通信、放送サービスが大きく変容する中、産業、政策、技術開発等の最新動向や、情報通信サービスと社会の関係性を考える上での「新たな視点」を、さまざまな分野でコンサルティング活動をしているクロサカタツヤ氏がお届けします。
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週末なので、「勝間vs.ひろゆき対談」について、ちょっと落ち穂拾いをしておく。
 
 

事実関係

 
事実関係をサマってみる。

  1. 勝間さんとひろゆきさんがテレビ番組の企画で日本の課題や成長戦略について対談。
  2. そしたら大方の予想通りまったく噛み合わない。
  3. 勝間さんが番組内で「こりゃだめだ」とさじを投げたら、ひろゆきさんが「それはゲストに失礼だ」と反発。
  4. 番組終了後にあちこちで自然発火し、オーストラリアもびっくりの山火事に。
  5. 最終的に勝間さんがブログ謝罪をし、ひろゆきさんもオトナの対応を見せる。

 
そこで6)の展開にチャレンジということで、私が「「負けるが勝ち」とかいう本を出版する宣伝だったりしてね。」とtweetしたところ、一部ではウケたようで「謝る力じゃないの?」とか「勝間さんは現代のニーチェかも」という通好みの好反応を得たものの、実際には6)というほどの広がりは見せず、私的には勝間さんからフォローされるという栄誉を得ただけのションボリなお話に仕上がっている。
 
対談そのもの
http://www.youtube.com/watch?v=gqduJqJuQUs
http://www.youtube.com/watch?v=kyxMpFuInSk
http://www.youtube.com/watch?v=uwlKyWP1n2g

 
書き起こしテキスト
http://d.hatena.ne.jp/wt5/20100503
 
勝間さんの謝罪エントリ
http://kazuyomugi.cocolog-nifty.com/private/2010/05/52-7a45.html
 
ひろゆきさんのオトナテイストなエントリ
http://hiro.asks.jp/68256.html
 
 

対談そのものの私自身の感想について

 
対談についての私自身の感想は、特にない。噛み合わない議論から得られるものは何もないから。これを放映するのは電波の無駄であり、あまり電波を無駄遣いしていると池田先生あたりから怒られるので、番組の内容を変更して広瀬香美のPVでも流していた方が、良かったんじゃないかと思う。
 
それでも15分くらいを費やして(全部をまともに眺めると30分コース)眺めた私は何も収穫なしじゃ悔しいので一つ指摘すると、高音の早口で喋りたおすのはよくないと思った。内容のない討論なのにもっともらしい論争のように見えるというのが一点。あと、見る側に生理的ストレスを強いることで、逆に結果として対談の構図に引き込ませてしまう負の効果があるように思う。親御さんのヒステリックな怒号を強要される子どもの心理みたいなもの。
 
もちろんこれは相当な訓練が必要なこと。私も先日文化放送のラジオ番組に出演したのだが、その場ではイイ感じに喋れたつもりでも、後日放送を聞いてみると結構な早口でまくしたてていることに気がついて、ほんのり赤面したものである。こういう機会も今後あるかもしれないので、気をつけようと思っている。
 
 

惑わされる現代の私たちと勝間さんの功績

 
じゃあなんでわざわざエントリを起こしたのかと言われれば、この対談によって勝間さんの意義が必要以上に毀損されているように見えたから。まゆみんのエントリを眺めていたらそのことに気がついたので、書きとめておこうと思った次第(まゆみんが勝間さんを毀損しているというわけではない)。
 
URAMAYU - 幸福度とはなんぞや
http://uramayu.typepad.jp/blog/2010/05/%E5%B9%B8%E7%A6%8F%E5%BA%A6%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%82%93%E3%81%9E%E3%82%84.html
 
とかく価値観の多様化が謳われる現代社会において、ネットによるオープンな情報流通はその価値観の多様化を文字通り顕在化した。まゆみんのエントリにも

最近はtwitterやってると、なんだかいろんな人のライフスタイルがひたすらTLに流れ込んできて、自分の幸福度の価値観がわからなくなるときがままあるのです。

政治家やスポーツ選手みたいな有名人の生活が流れ、なんか毎晩セレブな飲食をしている人もいれば、ストイックな運動記録を流す人もいて、経済や政治情勢をとうとうと語る人もいて、徹夜で仕事する人もいるし、自分が気になっていたけど行けなかった飲み会の状況などなど・・・、すべてがフラットにTLに流れてくる。

羨望したり尊敬したりで、自分もこうしたい、こうしなきゃ、みたいな気になってくる。

ああ、でも私は毎晩セレブな飲食を出来るほどお金ないし、そんなに運動もストイックにできないし、政治も経済も自分の業務に直結してないし、夜は眠いし。
私は中流生まれ、中流育ちの庶民である自覚をもっと持て、みたいな。

ああ、私の理想のライフスタイルはなんなの?

とあるのだが、正しくこういう気分と悩みを、放っておくと抱えがちになるのが、現代社会の日常というものだろう。
 
なにもこれは残念でガラパゴスな日本のwebの世界に限った話ではない。マスメディアとて登場人物が大量に回転し消費(バタやん的に踏み込んで言えば「消尽」に近い)されているし、それこそ日常会話の中でも私たちは常に「ネタ」に飢え、それを猛烈な勢いで消費・消尽して生きている。およそ仙人のように他者との接触を遮断しない限り、うっかりすればすぐ惑わされてしまう、そんな社会に私たちは生きているのである。
 
そんな中で勝間さんは、「自分探しとか社会のせいとか脳内リゾートで四の五の言ってないで、基準と規範をもって社会で仕事しろ」と主張した。それこそが彼女の功績であり、私もそれなりに首肯するところでもある。いや、私自身は彼女の著作を、1冊を人から借り、あと数冊は立ち読みした程度なので、あくまで勝手な解釈かもしれないが。
 
断っておくと、私は別に勝間さんにそんなに共感しているわけではないし、断り教の信者でもない。勝間さんが都知事になるくらいなら蓮舫さんの方がいいとさえ思っているくらいである。それでも彼女のこの主張は大事なことだと思っている。自分に直接関係する問題ならもちろん、そうでない社会問題に関しても、結局最後は自分がどうするかが誰しも問われるからだ。
 
そして今の日本の停滞感の根っこも、最終的にはすべてそこにあると思っている。有り体に言えば、夢見がちなことばかり言ってないで、みんな足下を見てもうちょっとちゃんと仕事しようぜ、ということに尽きる。
 
 

論点設計の失敗と丸投げの限界

 
実はこれ自体は、あまりに常識的過ぎることでもある。というわけで今回の対談に話を戻せば、おそらくこの点についてはひろゆき氏も共感(もしくは少なくとも共有)できる認識だろう。だからこの主張を土台に据えれば、今回の対談の失敗は避けられたはずだ。
 
しかし今回勝間さんは社会システムだのベンチャーだのという、ちょっと位相の違うアジェンダを持ち出した。しかも残念ながら付け焼き刃の感を否めない認識の浅さであった。そうした上滑りの議論の応酬こそ、今回の失敗の最大要因だろう。
 
たとえば彼女は「日本はベンチャーを起業しにくい」と言っている。もちろんこれは、

  • 夢みがちなVCが途中で話をねじ曲げがち
  • 規制が多いからそれをかいくぐることをベンチャーだと誤解しがち
  • 既得権者が強いからダンピング競争になりがち

というきらいもある以上、完全に間違いとは言い切れない。しかし実際にはVCは基本的に出資先のソーシングに困っているくらいであり、また優遇税制や自治体による補助金等も潤沢に用意されており、これ以上のお世話は箸の上げ下げレベルに入っていく可能性がある。
 
この点、より詳細に突っ込めば、

  • 出資者側の情報流の未整備によるソーシングのボトルネックの発生
  • ステージごとの資本政策の不在
  • 偏ったEXIT戦略
  • EXIT後の成長戦略や実務能力の不在による投資家や消費者の不信感の増加
  • アンダーグラウンド勢力の介入を許す市場運営

等、課題は山積している。ただそれは「起業しにくさ」ではなく「起業した後の成長のしにくさ」であり、実は問題が異なる。少なくとも起業のしやすさという議論で言えば、外部環境の整備よりも、残念ながら起業する側のビジネス経験や常識の不足によるものが少なくない。
 
このあたり、実務をちょいと触っていれば概ね理解できるところである。というか、実務家数人とランチでもすればすぐ話なんぞ聞けるはず。その点を見透かされて反論されたら「こりゃだめだ」というのは、それなんてドリフ、という話である。いかりや化する勝間和代。そんな勝間さんを私は見たくない。勝間さんにはキレイでいてほしいじゃないですか。
 
さておき。もし今回のアジェンダ設計が勝間さんの本意なのだとしたら、彼女はちょっと間違った方向に進みはじめているような気がしている。ベンチャーがどうとかデフレがどうとか、あまりに彼女自身にとって地に足のついていない「手を抜いた日経の見出し」のようなお題目を、浅学なままに持ち出すのは、それこそ彼女本来の主義主張に反するのではないかと思う。
 
そしてもう一言添えておくと、今回の番組に関して、制作者は勝間さんに企画と進行を丸投げしすぎで、そのリスクが顕在化したと考えるべきだろう。もちろん彼女とそのチームがそういう条件で番組への参加を受諾しているのかもしれないが、彼女たちとてスーパー(ウー)マンではないし、もしどこかでそう思っていたのなら、それこそ夢見がちもいいところである。
 
どこかでリスクヘッジをしておかなければ、今回のような事故は今後繰り返されるだろう。それは多くの人たちにとって不幸なことでもある。そういう意味でも、みんなちゃんと仕事しましょう、ということで、これも他山の石メソッドというありがちなオチをつけて結びとしたい。
 
タイトルは「ハート・オブ・ウーマン」からの借用。メル・ギブソン主演。皆までは申さない。
 
(5/8 16:37追記 YouTubeのリンクは落ちているようです。というか違法だったんですね。ごめんなさい)

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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