いろいろ書こうと思っていることが溜まっているところに、Google Buzzなどという代物が出てきて、書くことリストがひっくり返ってしまったのだけど、とりあえず現状の気分を書いておいた方が後々意味があるかもしれないので、書いておく。いや後々は、恥ずかしい思いをするだけかな。どっちでもいいけど。
Google Buzzとはなんぞや
よく分からない。
と放り投げてしまうとお目汚し以外の何者でもないので、とりあえず手がかりとなりそうな情報をCNETの記事から引用してみる。
グーグル、「Google Buzz」を発表--Gmailのソーシャル機能を強化Googleは米国時間2月9日、「Gmail」クライアントや「Google Maps」、新たな「Android」アプリケーションなどとの高度な統合が進められた、位置情報を認識するソーシャルネットワーキングツール「Google Buzz」の提供を早期に開始すると発表した。
標準的なGmailのインターフェースの新たなタブとして提供されるGoogle Buzzでは、リンクやGmailのステータスアップデート、「YouTube」の動画や「Picasa」の写真などを共有できる。他のユーザーが共有したデータにコメントを残したり、自分が他のユーザーの共有データへコメントしたりすることが可能だ。Google Buzzでフォローするユーザーについては、Gmailで頻繁にメールやチャットをやり取りしている相手が自動的に選ばれるようになっている。Google Buzz上のアップデートはTwitterへと送られるものの、まだTwitter上のツイート(tweet)の自動インポート機能は用意されていない。
というわけで、やっぱりよく分からない。分からない時は、似ているものと似ていないものの比較で考えてみよう。デュー・デリジェンスとカッコイイ名称を使っている資本市場の皆々様も、時間がないときはDCFなんか使わないで、マルチプルという「似た会社の時価」で価格算定しているんだから、大丈夫だよ、きっと。
まず似ているもの。twitterライクな何かっぽいのは確からしい。でもGmailっぽさやGoogleTalkっぽいのも同様に確からしい。画像やらリンクやらを取り込めるからFacebookっぽいというのも賛成だ。そういえばさっきから「っぽい」とばかり言っているが、工藤静香の「MUGO・ん…色っぽい」の歌詞にあるように、もしかしたらGoogle Buzzもそういう「目と目で通じ合う」世界を目指しているのかもしれない(ウソ)。
反対に、似てないものを並べてみよう。mixiとはかなり似ていない。モバゲーやプロフもしかり。アメーバなうは触っていないからよく分からない。はてな周辺はどうかな?もしかすると増田(匿名ダイアリー)とかはてブには、似ているかな。でも匿名というわけじゃないから某御用学者2.0氏の天敵ということは世界共通の敵であるところのイナゴはあんまり発生しなさそう。発言小町?似てるかも!(これもウソ)。
以上をまとめると、
- twitter風味ではあるが、
- 表示方法は時系列(タイムライン)ではなくスレッドなので、
- どちらかというと掲示板やソーシャルブックマークのように話題中心の、
- しかし文字ばかりでなく画像やリンク等も使える、
- facebook風味のはてブのような、しかしイナゴの発生しない、
- そんな感じのコミュニケーション・ツール
というところだろうか。というわけで、やっぱりよく分からない。
使い始めてから24時間経過したところの印象
そんなよく分からないまま使い始めて24時間が経過したのだが、現状の印象としては、@dankogai氏のこちらのエントリ(http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51399165.html)と基本的には同感というところである。
余談だが「Amebaなう」にはノイズしかない。よって論外。
おっと、引用箇所を間違えた。論旨はこちら。
そしてここがさらに重要なのだが、twitterのシグナルは自然減衰する。
twitterには、二つしか「掟」がない。一つは一つのつぶやきは140字以内であるということ。そしてもう一つは、つぶやきは時系列で表示されること。この二つはtwitter.com直であれ専用クライアントアプリを通してであれ変わらない。
シグナルの自然減衰は、この二つ目の掟による。SであれNであれ、Timelineの彼方へと消えていくのだ。
Google Buzzには、このtwitterをtwitterたらしめている「量の制約」と「時の流れる方向の絶対性」の二つが決定的に欠けている。だから Signalがものをいう社内連絡には最適でも、SなのかNなのか意識しないことが重要なつぶやきには不快で不適だ。
Google Buzzは、ビジネス用途としては大変結構なものだと思う。gmailの一機能として組み込んだことは大正解だ。業務連絡用のプラットフォームとして多いに受け入れられるのではないか。それだけで Google Buzz は成功だ。
しかしtwitterキラーを開発するのは、Googleには無理。そしてそれはtwitterのみならず、Webの世界にとってよいことなのではないか。
多分そんな感じなんだろうなと今のところは思う。私なりの言葉を使うなら、twitterは「職場におけるタバコ部屋」っぽい感じがあるのに対して、Google Buzzは「気の利いた上司がビールやポテチを持ち込んで開いた新規事業検討会」みたいな感じである。とはいえ私はタバコ飲みではないので、前者のホントのところは分からないのだけど、あくまでイメージで。
そして仮にその解釈が妥当だとすると、前者は「ニコチン中毒」という強制的な動作回路がある限り永久に不滅なのに対し、Google Buzzがある程度機能しつづけるには、
- 気の利いた上司がいて、
- 気の利いたビールやポテチが用意されていて、
- それなりに楽しい時間が過ごせて、
- かつそう遠くないタイミングで明示的な成果が出る、
という状態にならないと、なかなか難しいんじゃないかと思う。それなんてドリーム・オフィス。すなわち、モデレータの必要性やインターフェースのさらなる洗練、そして何より実効性・実用性というところである。
ちなみに前述のアナロジーは「アナなロジー」というくらいであって、だからtwitterは永久に不滅だということを言いたいわけではない。twitterにニコチン成分は含まれていないし、だとするともしかするとタバコ部屋じゃなくてトイレや給湯室かもしれない。そしてそれはイジメの温床にもなる。実際twitter(というかより正確には日本語圏における「ついったー」)って一部には殺伐としてきている感もある。
積分系twitterとしてのGoogle Buzz
分からないと言っている人間が本質を追っても漉なことにはならないので結論は出さないが、とりあえず方向感だけでも定めてみようかと思う。
一つはGoogle Buzzは「積分系twitter」ではないか、という仮説。これだけ読むと意味不明なのだが、これは芦田宏直氏(@HironaoAshida)の「twitter微分論」を援用した上で、Google Buzzがその反対に位置づけられるのではないか、ということ。
となると芦田さんのtwitter積分論を引かなければならないが、さすがに教育者だけあってすでに講義も行われているので、興味のある方は一度じっくりご覧いただければと思う。そのアウトライン(http://www.ashida.info/blog/2010/01/twitter_7.html)の中からざっくりと引くとこのあたりかと。
- 現在における「今、何してる」「今、何思ってる」ということを前後の関係(積分)なしに表出し続ければ、人間の〈格差〉(人格差異、知識差異、専門性差異、経済的差異、民族的差異、その他その他)はほとんど無くなってしまう。
- 積分する契機の減少
- 〈人間〉とか、〈私〉とか、〈主体性(主観性)〉とか、〈考え方=思想〉とかは積分の結果だが、自分の表白を被フォロー者がどんどん否定し、分断していくことによって、属人性・積分性契機は後退する。
で、芦田さんはこの微分的な性質こそがtwitterのおもしろさの本質だと看破する。その論旨に同意した上で、だとするとGoogle Buzzはtwitterの正反対にポジションを取ったのだな、と思うのである。
これは前述の「タバコ部屋vs.新規事業検討会」のよりエッセンシャルな議論だと思っている。なので、私自身はtwitterマンセーと言うつもりもなければ、Google Buzzはダメだと断言するつもりも現時点ではない(もちろん芦田さんもそんなことは言っていない)。ただGoogle Buzzの特徴を掴もうとする上で意味のある整理だとは思う。
…というわけで長くなったので分割します。続きは近日公開、のはず。タイトルは宮崎駿の作品から。
追記、後編はこちら。