英国がなぜ広告費のネットへのシフトで米国以上に元気なのか、という問いがこちらにあったので、忘れないうちにメモ。
まず出典はこちらから。
2009年前半、英国のインターネット広告支出は4.6%増加した。マイナス17%という広告市場全体の成長率を上回り、テレビを超えて同国最大の広告媒体となった。
業界団体Internet Advertising Bureau(IAB)の半期に1度の調査報告書によると、2009年前半のネット広告支出は17億5000万ポンド。広告支出全体の23.5%を占め、初めてテレビを上回った。
IABのガイ・フィリップソンCEOはReutersに、インターネットは同氏の予想よりも早くテレビを超えて最大の広告媒体になったと語った。この伸び具合は年末に向けていい前兆だ、とも。
思いつく限りでもいくつか理由があるので並べておく。
ひとつは、英国はそもそも国内経済の規模がそれほど大きくない、ということ。分母が小さければ、分子のちょっとした動きで傾向が変化する。しかも記事の行間からもうかがえるが、景気後退により、ただでさえ大きくない経済活動が一層小さくなっており、さらにその一部分である広告費全体はそれに比例してますます小さくなっているはず。その中で、比較的効率がいい(というか安い)と思われるネットにシフトするのは、ある意味で当然の帰結。
次に、英国は欧州の中では比較的ネットやモバイルのインフラ整備が進んでいる、というのも理由の一つとして挙げられるだろう。実際、欧州を旅行してみればわかるかもしれないが、みんなケータイでカチャカチャやってはいるものの、SMS/MMSが中心。そうした中で、比較的ネットを使いこなしている印象がある。それこそiPhoneの普及もそこそこ伸びているはずだ。
それら、経済規模やネット普及の文化的背景として、当然ながら英語圏であるということは大きい。国際金融を触っている方ならおわかりいただけるだろうが、米国は英国のオフショアだ、というアナロジーは比較的理解されやすいレトリックだと思う。英語と米語はかなり違う(そして実際のところ私は米語しか話せない)とはいえ、一応通じるわけで、米国中心であるネットの経済活動を、欧州のどこよりも取り込みやすいのは間違いない。それこそコンテンツひとつとっても、完全に共有できるものは少ないかもしれないが、チューニングは容易だ。
さらに、BBCが大きすぎるというのも理由としてある。そもそも英国の放送行政は大抵「BBCってどうよ?」というのがアジェンダの中心に据えられている。そしてBBCは民業圧迫の声をよそにひたすら肥大化しており、品質もきわめて高い。というわけで、経済規模だけでなく、そもそも広告媒体としてのマスメディアの規模感も、それほど大きくないのである。
以上を並べてみてみると、まーそりゃネット広告費がテレビを抜くのは当然だわな、という気分。ではあるのだが、それが実際に実現しつつあるというのは、やはり感慨深い。そして日本もそうなるのかな、というところに当然思いをはせるわけると、マスメディアもgdgdならネット広告業界もgdgdなのが現実。なので、どっちもちゃんと構造改革しないと、まあ分母も分子もシュリンクしていきますよね、というつまらない結論しか導き出せない日本の私。
タイトルは、いわずと知れた007シリーズから。