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トロイ

2009/05/12 12:03
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プロフィール

クロサカタツヤ / KUROSAKA, Tatsuya

インターネットや通信、放送サービスが大きく変容する中、産業、政策、技術開発等の最新動向や、情報通信サービスと社会の関係性を考える上での「新たな視点」を、さまざまな分野でコンサルティング活動をしているクロサカタツヤ氏がお届けします。
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厚生労働省の「医薬品のネット販売規制に関する委員会」の傍聴記録を、津田さんがまとめていた。これがサイコーにおもしろいログだったので、紹介がてら。タイトルはもう言うまでもなく。

ということで行ってきました、伏魔殿こと厚労省の医薬品ネット販売検討会。いやーひどかった。本当はtwitterで中継しようかと思ったけど、そんな雰囲気じゃなかったのと、Windows7のRC版を入れたら通信カードが動かなくなって中継できませんでした。はっはっは。

もういろいろなところで記事も上がっているので、不完全版の議事録っぽいものを上げておきます。
「医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会」を傍聴してきました

アクセス先で認証を求められるかもしれないが、「キャンセル」すれば問題ないようだ。読みやすいのでぜひ全文をご一読いただきたい。
 
この委員会で、楽天の三木谷さんが孤軍奮闘しているのは、ネットに興味を持っている方ならご存知だろう。ログの中でもその様子はうかがえるのだが、この「三木谷さんvs.他全部」という構図を見ていて、社会とネットの関係を改めて考えさせられた。
 
本件も、あるいは従来の類似のケースも、ざっくり言えば「既得権者vs新興勢力」の戦いである。だから「ネットがいい/悪い」という議論は、結局のところ本質ではない。ネットは新興勢力がプレゼンスやポジションを持つための有力手段ではあるが、手段に過ぎなくて、かつそれは既得権者にも開かれている。
 
だとしたら、新興勢力側は、ネットであるということにアイデンティティを持つ必要はないし、さらに言えばあえて戦略的に「持ってはいけない」とさえ思う。もちろん、結果的にはネットによって新興勢力化したわけであって、実質的にはそれが不可分なものである、というのは十分承知の上での話だ。
 
新興勢力側がネットを旗印にしたがるのは分かる。しかしそうしてしまうことで、既得権者が新興勢力を叩きやすくなる。実際、「新興勢力=ネット」なのだとしたら、ネットの欠点をあげつらえば、新興勢力は同時に潰れていくことになる。既得権者にとって、こんなにラクな戦いはない。
 
また、一般的な戦術論からすれば、そもそも両者が対立する構図に持ち込んだ時点で、新興勢力はほぼ負けが決まっている。なにしろその土俵は、相手が勝つように決められており、既得権者がガチンコで勝負なんてことは絶対にしてくれないのだから。
 
年配者が引退するのを待てば、という意見もあるだろう。しかしこれも甘い発想で、むしろ消耗戦を仕掛けているのは既得権者なのだ。新興勢力は兵糧攻めに弱いし、時間が経つにつれて内部分裂したりして目も当てられない。生き残った時にはもう十分年老いて、気がつけば既得権者の側に下っ端として立っている、というシステムだ。
 
というわけで新興勢力は戦術を変えるべきだと思う。一言でいえば「正面きって戦うな、相手の懐に入って最終的に主導権を握れ」ということ。
 
新興勢力の最終目的は、母屋を乗っ取ること。だったら対立して潰されるのではなく、敢えて既得権者の懐に飛び込んで庇を借りて、彼らを気持ちよくさせて信頼を得つつ、じわじわと内部崩壊(消滅みたいな形で)させ、気がつけば新興勢力が中心ポジションを代替していた、という展開が必要だろう。
 
たとえば今回の医薬品ネット販売については、単に新興勢力側が「今まで通りやらせろ」というのではなく、同時に薬剤師会主導によるネット販売を支援していく、というような握りや手打ちも同時に水面下で進めるべきだ。なにしろ薬剤師側はネットのシロートであり、その展開に持ち込めれば勝算は出てくる。その中で、新興勢力側がいなければ立ち行かない状況を作り出せばいいのである。
 
その上でそんな「トロイの木馬」作戦を遂行する際に留意すべきは、中途半端なアイデンティティや功名心は一切捨てること。有名になりたい、儲けたい。そういう思いでガツガツしているうちは、どう騒いだりケンカしたところで、絶対勝てない。最後に利することはあっても、作戦遂行中はあえて自分が捨て石になるような覚悟が必要だ。ネットという看板を下ろすことも、その一つといえるかもしれない。
 
それがイヤだというのであれば、世の中が云々みたいなことは一切忘れて、無理のない範囲で遊んでいるしかない。ただ残念ながら、アーキテクチャや制度周りを含め、ネットがこれまでのような自由さを謳歌できる時間は、もうそんなに残されてないのだ。
 
それでもなお、ネットを社会に定着させたい、と願っている人がいるとしたら、やっぱり腹を括って既得権者の中に飛び込んでいく覚悟が、そろそろ必要なのではないだろうか。それが困難な仕事だというのは承知の上で、そうすることが、この国でネットを社会に定着させる、唯一の道なのではないかと、私は最近思っている。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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