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ギャング・オブ・バルセロナ(3)

2009/03/12 12:44
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プロフィール

クロサカタツヤ / KUROSAKA, Tatsuya

インターネットや通信、放送サービスが大きく変容する中、産業、政策、技術開発等の最新動向や、情報通信サービスと社会の関係性を考える上での「新たな視点」を、さまざまな分野でコンサルティング活動をしているクロサカタツヤ氏がお届けします。
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続き物を書こうと思ったら繁忙状態に入ってしまい、途絶えるうちにネタの旬を逃す、というのはもはやマーフィになっている気がするので、これで最後。
 
 

日本勢の努力

日本勢について、あちこちで「プレゼンスがない」というコメントが書かれていた。確かにそうと言えなくもないのは、スポンサーの大きなところをHGやhuawaiにかっさらわれているからだろう。ただ、「ガラパゴス」が流行語になって以来、「日本勢が目立たない」という自虐論法がウケるとか、そう言っておいた方がラク、という背景もあるような気がする。

私の印象だが、確かに中国や韓国には及ばなかったものの、目立たないということはなかったと思う。NTTドコモ、NEC、パナソニックなどは、展示会場の比較的いい場所を押さえていたし、人だかりもできていた。アンリツなども「ああ、ここは日本の生きる道だな」と感じさせる展示だったし、アクセスのようにvodafoneやpalmと棟を並べて小屋を建てて大規模に展開する事業者もいた。

講演のラインナップで日本人が少ないのは残念だったが、例によって夏野さんがキーノートの枠で話していたようだ(私はその時間に帰国の途へ就いたので見られなかったが)。このほかARIBがモバイルWiMAXのベンダーを集めた合同展示を実施したり、企業規模でいえば中小企業となるところも独自に出展していた。こちらも、プレスセンターに近かったこともあり、玄人筋の注目を集めていたようだ。

もちろん私が日本人で、CNETのながいたん(著者註:CNET編集部内で永井記者の正式呼称が同名に決まったそうなので、今後はそれに従うものとする)をはじめ、省庁や企業のいろんな方から「日本勢の様子を見てきて」と言われていたので、注目していたというバイアスは割り引いた方がいい。しかし、じゃあノキアやエリクソンがそんなに目立っていたかというと、大差ないと思うのが、正直なところ。
 
 

日本勢のポジション

とはいえそれで「よかったね」とはならないのが当ブログの真骨頂。というのは、プレゼンスという尺度自体がそもそも間違っているのである。有り体に言えば、そんなものはカネで買えるのが、展示会ビジネスというもの。むしろここで尺度とすべきは、プレゼンスという「ツラのデカさ」ではなく、ポジション(立ち位置)、すなわち「お前はここに何しに来ているのだ?」ということである。

多くの方は、展示会なのだから商品を売りに来ているのだろう、と思うだろう。確かにその通りで、いくつかの企業でいくつか商談も進んでいたように見える。しかし、住宅ローンがあってはじめてマンションが商品になるように、商売とは商品と売り方の両方が伴ってナンボの世界。こうなると、日本勢の姿は、一気に萎んでみえる。

これまで述べた通り、今回の主役は中国やインドといった新興国だった。要は直近で彼らしか「買い手」がいないのである。特に中国に関しては3Gのインフラ投資を国家予算で賄うという発表も出ており、単に巨大な買い手というだけでなく、huawaiやZTEなどの自国ベンダーを育成し、将来的な「売り手」に育てようという思惑が透けて見える。加えて彼らは、こうした将来の成長を見越して、彼らはさらにその先の途上国への売り手の姿も、すでに見せ始めている。ポジションが明確かつ大きいがゆえの、プレゼンスの大きさである。
 
 

日本勢の限界

そんな彼らが主役となっているエコノミーに対して、日本勢といえば、明らかに劣勢だ。どんなにプレゼンスを維持したところで、ポジションがないのだから、仕方ない。

たとえば基地局ベンダーとしては「高性能なのは分かるけど、huawaiさんと比べて高すぎるよねえ」というところだろう。また端末に関しては「ノキアさんは、ノキアシーメンスの基地局とセットだったら、端末の仕入値をチョー安くしてくれるんだけど、オタクはそういうことできる?」と足下を見られているか、「まあうちは高機能端末はsamsungかLGでいいや」といったところか。

さらにNTTドコモに至っては、「キャリアは技術を持たない」という世界的な産業構造と異なる存在であるところからして、彼らがすごいのは分かるんだけど、自分(来場者)とどう関係あるのか分からん、という「ぽかーん」感が漂っていたようにも思う。ちなみにこのあたり、別に私の妄想で書いているわけではなく、ランチの時に同席した海外企業やジャーナリストたちの率直な声である。

長くなるので皆までは申さないが、こうなるとやはり国ぐるみでエコノミーごと持ち出していくことが必要なのだろう。実際すでに「株式会社中国」や「株式会社韓国」、あるいは「ノキア・シーメンス・シティバンク・ホールディングス」という単位での戦争となっている(なのでノキアは大変なわけだが、さておき)。これに立ち向かうのだとしたら、やはり「株式会社ニッポン」で攻め入るしかないだろう。これはもはや戦争であるといってもいい。そしてこれはモバイル産業だけの話ではない、が皆までは申さない。

こうした議論にいろんな抵抗があるのは分かる。しかし市場原理がどうの、官民の役割分担がどうの、あるいは戦争がどうの、と言っている時点で、もはや勝負にならないというのが現実である。国ぐるみでインフラ投資して産業育成を進めようとしている連中に、たとえばパナソニック単体、あるいはドコモ単体で立ち向かえというのは、はっきり言ってカミカゼ特攻隊や人間魚雷の世界だ。それならばむしろ戦争しない方がいいとさえ言える。
 
 

プラットフォーム層への関心

日本の話を書くと長くなってしまうのでこのへんにして、もう一つ重要なポイントは、プラットフォーム層への関心が再び高まっているということである。平たく言えば、App StoreやAndroid Marketを、みんなやりたがっているのだ。

実際、今回の展示会をにらんで、ノキアも同様のプラットフォームを作ると発表した(かゴニョゴニョ話した)はずだし、マイクロソフトも同様である。Yahoo!も今回展示をしていたが、多分やりたいのはそういうあたりなんだろうな、という気配をうかがわせる。ただし気配だけということは現時点ですでに遅れを取っているので、やっぱりあの会社厳しいんだろうな、という感があったのも事実。

この動きを読み解くのは、実は結構難しい。素直に読み解けば、端末の世界はすでに概ね雌雄が決したので、次はプラットフォーム層が戦場となる、そのための後手(先手はアップルやグーグル)を各社が打ち始めた、ということになるだろう。実際この戦略がきれいに進むのであれば、事業の付加価値は端末そのものよりもプラットフォームのトランザクション(そしてそれを生み出すアプリケーション)に軸足が移るはずだ。

ただ私はどうもそんな単純な話ではない、というか単純にコトは進まないような気もしている。たとえばいくらApp Storeが成功しているように見えるといっても、まずもってあれはAppleというブランドの下に成立しているエコノミーであって、実際iPhoneの世界市場におけるシェア(当たり前だがノキアはその数倍のシェアを持つ)を考えれば、特殊なエコノミーと考えるのが妥当だろう。またAndroid Marketは、まだ立ち上がったとは言い切れないし、当のGoogle自身も当面の端末販売台数は限られると見ているはず(ゆえのHTC縛りだと思っている)。

どうもこのあたりはまだ腑に落ちないところが多い。実際一部からは「アプリ作るの厭きた」という声さえも聞こえており、エコノミーとして本当に継続していくのかはまだまだ怪しいというのが実際のところだろう。ただ、とはいえジャイアントたちはすでに動き出しているし、日本国内でも通信プラットフォーム研究会等で同様の議論が続いている。

またアクトビラが実はそこそこサービスとして立ち上がりつつあることからも分かるように、このあたりは通信・放送融合の現実解となる可能性も秘めている。大体、どうもGoogleには「Androidをモバイルのプラットフォームと思ってくれるな」と考えているフシがある。というわけで、もう少し継続的に考えていこうと思っている。
 
 

来年どうするかはながいたん次第

というわけでまとめるのも億劫なので、過去の記事・エントリのリンクをもってまとめと代えさせていただく。

次世代ケータイインフラは世界規模で戦国時代に
ギャング・オブ・バルセロナ(1)
ギャング・オブ・バルセロナ(2)
ギャング・オブ・バルセロナ(3)

ちなみに来年のバルセロナは、最後のプラットフォーム層あたりの展開が見えていれば(そしてながいたんからまたプレスバッジ取得の許可を出していただければ)、行ってみていいかな、と思っている次第。ただこのあたりは、モバイル以外の領域からの動きとセットで見る必要があるので、むしろCESとかCeBITにも行ってみるべきなのかも。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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