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オバマに体を張れ

2009/01/21 07:03
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プロフィール

クロサカタツヤ / KUROSAKA, Tatsuya

インターネットや通信、放送サービスが大きく変容する中、産業、政策、技術開発等の最新動向や、情報通信サービスと社会の関係性を考える上での「新たな視点」を、さまざまな分野でコンサルティング活動をしているクロサカタツヤ氏がお届けします。
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仕事があってオバマ氏の大統領就任演説はライブでは聞けなかった。YouTubeホワイトハウスの両サイトに期待しつつ、週末のお楽しみにでもするとして、そういえばFCCの委員長も代わるんだったな、ということを思い出したのでメモ。
 
 

ネットに注力しそうな気配

正式かつ最新版の情報は追いかけていないが、新聞辞令ということでほぼジェナコウスキ氏(とりあえず発音に近いとこんな感じ?)に決定したのだろう。これを受けて日本のメディアでもすでに紹介されており、概略は下記のようなかんじ。

米FCCの次期Chairmanは,元ベンチャー投資家の可能性
Genachowski氏は,Obama氏の大統領選挙運動において技術政策を定めたTechnology, Innovation & Government Reform Policy Working Group団体に携わり,1994〜1997年にはFCCにおいてChief Counsel to the Chairmanを務めた経験がある。

元ベンチャー投資家というのは、Rock Creek Venturesのこと。私も、レストン(ワシントンDC郊外のベンチャー企業が集積している地域)あたりで以前何度か仕事をした時に、チラリと話を聞いたことはある気がする。ただ結論としては、後述するFCC時代の仕事の流れで受けていた、日銭稼ぎプラスアルファに近いと思う。

それより、オバマ政権の技術政策を眺めてみると、個別論の冒頭にネット絡みの話が触れられており、この領域にかなり力を入れたいのであろうことは明々白々。直接的なアイテムとしては、

・インターネットのオープン性を守る
・メディア所有形態の多様化の促進
・主に無線技術による次世代ブロードバンド促進

となり、ネット中立性とワイヤレス・ブロードバンドが大きなキーワードとして挙げられる。このほかにも電子政府、ペアレンタル・コントロール、知的財産権などに触れているので、興味がある方はご一読を。
 
 

同じアジェンダ、異なるアプローチ

ざっと見た限り、アジェンダ設定としてはブッシュ政権下のマーティン現委員長とそう大きく変わらない。ただアプローチは結構変わるような気もする。まあ政権が変わるのだから当たり前ではあるが。

彼の経歴に戻ると、1994-1997年にFCC委員長補佐の仕事を経験している。クリントン政権の1期目であり、ちょうどゴア氏が「情報スーパーハイウェイ」でがんばっていた頃であるのと同時に、連邦通信法の62年ぶりの大改正となった"telecommunication act of 1996"を導入した時期にもあたる。

ざっとおさらいすると、従来の地域・産業ごとの参入規制を撤廃し、電波オークションの導入を促した同法によって、通信キャリア、CATV事業者、新興企業などがあれこれ細かく割れてのシャッフルを目論んだのが同法の趣旨。当初は一応その通りになり、確かに通信の世界は大きく様変わりした。

このとき彼が補佐した委員長は、リード・ハント氏。オバマ氏の顧問も勤めているが、確か今はマッキンゼー、ブラックストーン、インテルの顧問をしているはず。要はその弟子筋が委員長になるということで、普通に考えれば当時の考え方を踏襲する政策方針を打ってくるだろう。となると単純には、

・マッキンゼー→規制緩和
・ブラックストーン→レバレッジ拡大、中国シフト
・インテル→欧州主体のテレコムルールへの挑戦

というあたりのキーワードがなんとなく連想される。すなわち、アンバンドルによる競争の促進、ファイナンス技術を駆使した産業構造の構築、米国主導の産業支配の確立、等。
 
 

とはいえここも茨の道

しかし、当然ながらあの頃と現在は大きく違う。まずもってワールドコムの粉飾会計による史上最大(ただしリーマン破綻前まで)の経営破綻を経験しているし、ブラックストーンも中国政府などの出資者に赤っ恥をかかせるパフォーマンスに沈んでいる。インテルも通信に関しては欧州陣営への挑戦をギブアップしてLTEでエリクソンの軍門に下りつつある。

またプレイヤーの顔ぶれも変わった。法改正から10年を経た今、通信キャリアはM&Aによって再び塊と化している。またアプリケーションの世界でも、あの頃はAOLやYahoo!がスターだったが、今はGoogleだ。またその彼らも株価はこの1年で半分以下と傷んでいる。BSの多くが現金であり、おそらくその現金も米ドル建てだろうから、むべなるかな。

となると、冒頭の意気込みに反して、ネットの領域は身動きが取りづらいのが現状。正直、大変な時期に大変な仕事を選んでしまったナーと思っているような気もするが、それはオバマ政権を支えるほとんどの人にとって同じこと。ポジションを持つ人が米ドルを空売りしながら米国外に流出しつつある中で、あえて踏みとどまらざるを得ないというのは、おつとめご苦労様です、という気分でもある。
 
 

当面はメディアとライツ?

さておき。当面彼の主要な仕事は、メディアの産業構造をどうするか、というところが主戦場となるのではないか。マーティン現委員長下のFCCが出した「異なるメディア間でのメディア所有を容易にしたらいいんじゃないでしょうか」という提案を上院が「ボケが」と突き返したのが昨春。政権と議会が揃ったので、まずここに着手するように思う。

従ってライツの問題は結構動きが活発化するのではないか。そういう視点で冒頭の技術政策を再び読んでみると、

・アメリカの知的財産の海外での保護
・アメリカの知的財産の家庭での保護
・特許システムの再構築

というあたりがきっちり書かれているところが心憎い。

ただこれは、ハリウッドと仲のいい民主党政権だけに、結果としては権利者保護(かつプロパテント)の方に振れてしまうんじゃないかというような気がする。そしてそういう流れを勝手に受けて、日本でも某NIKKEI NETあたりに連載を持っている「困ったちゃん」が暴れ出すとしたら、正直目も当てられない。関係各位におかれましては、先手を打って一つ備えをしておいていただきたいところである。
 
 

無線のロードマップが多少変わるかもしれない

無線ブロードバンド・インフラの整備という話も、ちょいと先行きが不透明。モバイルWiMAXのダメさとインテルの心変わりについては再三触れているので割愛するが、FCCが検討しているAWS-3(2.1GHz帯あたり)を使った米国全土の無料Wi-Fi計画も、そもそも地デジ移行がスケジュール通りに進めばという話。

そんでもって移行スケジュール変えるのがいいと思うよ、というのを当のオバマがすでに就任前から言っている(言わされている)のは既報の通り。これに対して、オークションで周波数を買った通信キャリア(ベライゾンとAT&T)は表面上「ガオー」と怒っているわけだが、まあ本格的ないざこざはこれから、というところだろう。

日本としては、テレビ屋さんの話はとりあえず棚上げ(あまりにも前提条件が違うので)するとして、次世代無線技術(というかHSPAとLTE)の普及ロードマップに影響がでるかもしれない。結論としては、潜在的に巨大市場である米国のLTE普及が遅れることで、日本でのLTEのローンチも遅れたり限定的になったりする可能性がある、ということ。

特にLTEに関しては日本勢は後追いのアプローチを採っており、なかなか来ない、という状況は続くのではないかと私は読んでいる。あるいは場合によっては、LTEは結局「燃料電池車」に過ぎず、当面の本命はハイブリッド車、すなわちHSPAやその他の技術でしたね、ということになるかもしれない。実際、誰がどう使うのか、それをどう打っていくのか、まだ誰もビジネスモデルを描けていないはず。
 
 

あとプライバシーの話も

あと、プライバシー保護強化の話が技術政策(インターネットのところ)の一項目として触れられているのも、非常に興味深い。このあたりは、領域としては行動ターゲティング広告(あるいはレコメンデーション・サービス)、また企業名でいえばGoogle, Yahoo!, Facebook, MySpaceあたりがターゲットとなっていくので、そのまんまネットの世界の話であり、いわゆるWeb3.0やモバイルサービスの話でもある。

このあたり、日本国内でもにわかに動きが出てきているのだが、諸々話が長くなるので、またエントリを改めて、いずれ触れたい。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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