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グッバイ、レバレッジ!(4)

2008/12/21 15:06
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プロフィール

クロサカタツヤ / KUROSAKA, Tatsuya

インターネットや通信、放送サービスが大きく変容する中、産業、政策、技術開発等の最新動向や、情報通信サービスと社会の関係性を考える上での「新たな視点」を、さまざまな分野でコンサルティング活動をしているクロサカタツヤ氏がお届けします。
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気がつけば前のエントリから2ヶ月が経ってしまった。とりあえずシリーズの締めくくりとして、日本の話と、ベンチャーの話。
 
 

これからもっとひどくなる

…と1ヶ月前くらいに手元で書きかけたのだが、その通りになってしまった。しかし残念ながらまだまだ混乱は収まず、むしろ本番はこれからだと私は思っている。株価の急落、円高の急進、債券市場もひどいことになっている。米国は実質ゼロ金利、日本も政策金利が再びゼロ寸前の0.1%まで落ち込んだ。貸し渋り、貸し剥がし、賃金遅延、人員削減。まるで鳥肌実が唱える念仏のようである。

海外はもっとひどい。フィリピンや韓国をはじめとした通貨危機表面化が控えているし、年末に見通し発表がはじまる欧州企業の決算の数字も、いいところがあるわけはない。そして年明けには米国の消費や失業率をはじめとした主要指標が軒並み深刻な結果となろう。ビッグスリー?どこがビッグなわけ?みたいな。

金融経済にしても、CDOのデフォルトに続き、CDSのクラッシュがどこからともなく起きるかも分からない。そもそも、未だ以て損失は確定できずにおり、また確定できない間に損失は日々拡大している。銀行や証券会社等の株価が軒並み低水準に低迷しているのも、言わずもがなというところである。

また各国ともゼロ金利に近づいて、マクロ経済的には日本が経験した「流動性の罠」や「失われたn年」に世界中が陥りつつある。需要が株式から国債へシフトしているのも、単に企業の成長が停滞するだけでなく、その裏返しとして政府部門や中央銀行の資金需要が高まる見通しゆえのこと。というわけでIMFにお金を入れた日本の判断は、基本的にグッド・アイディアということになる。
 
 

企業の命運は誰が決めるか

CDSの話から日本のミクロ経済環境に触れておくと、前回のエントリのあと、「でもCDSなんて現場の金融機関は気にしてないんでしょ?」というご意見をいくつかいただいた。確かに通常の融資なら相対取引なのだから、CDSを無視することは可能だ。誰がなんと言おうとオレはオレの考えでカネを貸し続けるぜ、ということである。しかし、融資元の金融機関が公開企業である場合、そうはいかない。

銀行とて株主がいる。その株主からの「なんであんな倒産しそうな会社に今さらカネ貸しとるんじゃボケが」という声が高まれば、最終的には株主代表訴訟を招く可能性もある。融資先が(株式市場、債券市場のいずれに対する)公開企業であれば、その実態は白日の下に晒されているのだから、なおさらだ。それに、そんなだらしのない銀行経営をしていたら、せっかく年明けにももらえるはずの公的資金を逃しかねない。

こう考えると、CDSのベーシスポイントが上昇している企業の生殺与奪は、もはやその企業そのものではなく、その面倒を見ている金融機関が握っていることとなる。たとえばソフトバンク(執筆時点で1020bp)に関してはみずほFGが、またJAL(同1550bp)に関しては日本政策投資銀行(DBJ)が、それぞれ行く末を決めるということだ。また逆に言えば、その舵取りの如何によって、その金融機関自身の命運も決まる、ということである。

ちなみに、DBJは「公開」かもしんないけど「企業」なの?企業じゃないとすると潰れないんじゃないの?潰れないとするとCDSってJALの場合は関係ないんじゃないの?ところでみずほFGってDBJと違って民間企業だよね?という、今後のすべての雌雄を決するであろう、あまりにも重要すぎる論点は、それなんて心のオフバランス、じゃなくてすでに分かり切ったことなので割愛。 
 

すでに始まった不良債権ビジネス

実はそんなギリギリの動きはすでに起きつつある。先日、みずほFGの潜在的不良債権の本丸と目されるイオンについて、三菱商事が筆頭株主になることが発表された。マスコミもブロガーの多くも、救済というトーンで論じる方が少なくないが、これが単なる救済でない可能性があるのは、コーポレートファイナンスを生業とする方なら一瞬で読み解けるはずだ。むしろ読み解けないとしたらちょっと拙い。

そもそももし本当に救済なら、イオンの増資を商事が引き受けなければ、生のカネはイオンに入らないのだから、今回のように商事が市場で買い増すということはない。流動性を低めて株価を維持するのでは、という反論もあろうが、今回彼らが買い増したのは発行済み株式総数の2%程度であり、ここ数ヶ月の売買高から鑑みて、流動性にはほとんど影響を及ぼさない規模である。

だとすると菱食がイオンの商流を拡大するという通常の業務提携なのか。もちろんそれを狙っているというのはあるだろう。しかしそもそも現時点で菱食はイオンの最大商流の一つであり、株を買い増す必要はほとんどない。いくら資源高でカネがだぶついているからといって、300億円規模の投資を、何の考えもなしにポンと出しているようでは、それこそ商事側の株主代表訴訟のリスクもある。

では彼らは何を狙っているのか。ここで皆までは申し上げないが、イオンの資産の多くを占め利益の源泉となっているのは「腐っても不動産」であること、不動産は最終的には値段が付けられるがゆえに腐っても不動産であること、民事再生法では現在の経営陣が温存されるので株主や債権者のコントロールが効きにくい(旨味が少ない)こと、会社更生法は株主から出せること、会社更生法に踏み切ればそれを出した人(株主)と債権者等で管財人をコントロールできること、商事および菱食をはじめとしたその子会社はすでに最大債権者の一人であろうこと、今回のディールによって筆頭の座を出し抜いた相手がみずほFGであること…等を勘案すれば、いろんな想像ができると思う。

あくまで一般論だが、BS全体の1%程度の金額で、そのすべてのコントロール権が手に入るんだとしたら、これは格安ですね、という感じ。
 
 

日本のリスク

というわけで、動きのあるところはあるのだが、全体としては残念ながら悪循環からは、少なくとも来年末、場合によっては数年は抜け出せないように思う。さらに言えば、前述のように、悪循環で安値になってくれないと動きたくないという人もいる悩ましい事情があるわけだが。というかデフレ大好きな日本の消費者ってみんなそうだよね!だから白い犬のケータイがウケるんだよね!とも言えるが。

大体、某脳厨バンクの皆さんが抱えているフレディやファニーだって、そろそろ5兆円くらいに赤いのが膨らんでいるんじゃないかと思われるが、一向に誰も決着を付けたがらない。問題が大きくなるのに先送りするのは、この人たちなりにマクロ経済全体を考えてのことなのか、あるいはエラい人の定年でも待っているのか、はたまたもうすぐ選挙だからなのか。

しかも高橋洋一氏の指摘(この金融政策が日本経済を救う)によれば、日本の政策金利がゼロではなく0.1%であることで、結果的に流動性は失われ、また日銀は金融政策を事実上放棄したことを意味するという。詳細はこちらにお任せするとして、確かにこの通りになるとすると、キャッシュフローを金融機関に依存する企業にとっては、年明け以降はシャレにならない事態が勃発するだろう。こちらもエラい人の定年待ちか?そんなの待つ間にみんな死んだら意味ないとも思うのだが。

というわけで我らが日本も本番はこれからであり、身の処し方を慎重に選んでいかなければ、一発で恐慌の引き金を引きかねない状況にある。マクロミクロ合わせて、ざっとリスク要因を考えてみても、

・米ドル建て資産の目減り
・米ドル建て不良債券の増加
・外貨建て資産のポートフォリオの未整備
・国内市場の脆弱化と外需依存体質
・国内産業の空洞化
・その依存先である中国経済の崩壊
・辛うじて残る第3次産業の低い生産性
・少子高齢化による内需と生産力の頭打ち・低迷
・巨大な財政赤字
・富の再分配機構(つまり政治)の機能不全

など、枚挙に暇なし。普通に考えれば他人様に同情している余裕はなくて、シートベルトを締めつつ我が身を案じるのが先となる。ちなみに、このタイミングで首領様が亡くなったりするのは本当に困るのだが、残念ながらもうすでにお隠れあそばされたようなので、この冬は海保と海自の皆様にがんばっていただきたく、カンパの一つでも送りたい気分である。誰か、ふるさと納税じゃなくて「省庁別納税」とか、やってくれないかな。
 
 

世界とのお付き合い

さておき。余裕はないと言ったものの、世界はもっと余裕がない。今回相対的にまだ日本が一息つけているように見えるのは、

・金融がそれほど痛んでいない(ことになっている)
・もともと景気はずっと悪かったから体感的に辛くない
・デフレ慣れしている
・なんだかんだいっても教育水準が高い(はず)
・なんだかんだいっても技術がある(はず)
・なんだかんだいっても貯金が1500兆円積み上がっている(はず)
・その1500兆円が投資信託や外国債等には揺さぶられなかった
・オレオレ改め振り込め詐欺で少し切り崩されたけど

といったポジティブっぽい要因によると私は思っている。「はず」とか「っぽい」という弱気も含めてあれこれお察しいただきたいが、とりあえずこれを守り抜いて、切るべきタイミングで切るべきカードを切れば、なんとかしのげるかな、と希望的観測の一つでも打っておきたい2008年の年の瀬。

そんな中、唯一同情を強要されるのが米国。「全米が泣いたって言ってるんだから泣けよコラ」と、毎度おなじみのごとく恫喝される我らが日本だが、安全保障を彼らに依存していることと、官民ともに積み上がるドル資産の重さを考えると、残念だが去来する思いがどんなものであったにせよ、とりあえず泣いておかなければならない。すなわち、彼らの新しい大統領がドカンと打ち出す予定になっている、数百兆円規模におよぶ経済対策を、米国債購入という形で、日本(と中国)が買い支えなければならない。

しかしだからといって、米国と日本が、未来永劫一蓮托生、色即是空空即是色、になる必要もない。産業の空洞化、脆弱な社会インフラ、底辺を支える人々の非英語化(至るところスペイン語の看板が増えているのはご存知の通り)、等を考えると、残念だが中長期的に米国の衰退は免れず、最終的にはアルゼンチン化するだろう。

もちろん多少のボラティリティもあるし、世界有数の教育水準を誇る国だから、今すぐどうこうということはない。産業空洞化といっても、ボーイングってどこの会社でしたっけ?とか、日本の穀物ってどこから来ているんでしたっけ?とか、GMの技術力はあんまりバカにすんな、といったことはやはり言えるので。しかし私が生きている間くらいのスパンでは、目に見えて分かる衰退が現れているはずだ。

というわけで、当面の破綻を回避しつつ、ゆるやかにはお別れをしていかなければならない。アルゼンチンは素敵な国だが、彼の地での商売はさすがに気分的に遠すぎる。せいぜいブラジルくらいだが、それとて毎年決死の思いで来日してくれていたジョアン・ジルベルトが、今年はとうとう断念してしまったことを考えると、やっぱり遠い。 
 

ああまた次回に続いてしまうのか

じゃあどこと仲良くすればいいのよ?という話を書こうと思ったが、またしても長くなってしまったので次回に続く。今度こそ次回が最終回。もうそろそろ他に書きたいことが山積しているので。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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