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CNET Japan ブログ

グッバイ、レバレッジ!(2)

2008/10/16 01:39
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プロフィール

クロサカタツヤ / KUROSAKA, Tatsuya

インターネットや通信、放送サービスが大きく変容する中、産業、政策、技術開発等の最新動向や、情報通信サービスと社会の関係性を考える上での「新たな視点」を、さまざまな分野でコンサルティング活動をしているクロサカタツヤ氏がお届けします。
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前回の続き。書く時間が取れぬ間に、事態は急速に進んでおり、たかだか数日で実態と異なる記述になっているかもしれないが、それこそが読み手も書き手もいまを生きている証左だということで。
 
 

米国の今後

米国が拙いということは前回書いたとおり。G7、ではなくG20による協調や、金融機関への公的資金注入、またインターバンク取引の保証など、一連の施策によって、目の前の危機はひとまず回避された格好だが、それとてカンフル剤に過ぎないと考えている。正直、年内持つとさえ思えない。

たとえば相変わらずGMあたりはいつどうなってもおかしくない。また投資銀行はひとまず一服したように見えるが(もちろん見えるだけだが)、今度はJPモルガンやシティなど商業銀行の一部が怪しい。投資銀行の銀行への看板掛け替えが話題になっているが、そもそもクリントン政権下でグラス・スティーガル法が事実上撤廃されて以降、商業銀行と投資銀行の垣根は取り払われているのだ。投資銀行で起きていることは、商業銀行でも起きると考えるのが素直というもの。まして投資銀行以上に投資業務に不慣れな連中の所作である。

というわけで、根本的には何ら問題は解決されていない。米国は今後衰退していくという見立てに異論を唱える人がいるとしたら、よほどの米国好きか、米国が衰退したら生活が困るという人だろう。しかし残念なことに誠に残念ながら、その米国の資産を支える富裕層自身が米ドルを空売りして一儲け、というのが現実だ。残念なことこの上ない。
 
 

火の手はすでに欧州へ

米国がダメ決定となったところで、問題の核心はすでに欧州とアジアに移ったといえる。米国のていたらくをじっと見つめていた彼らは、さすがにいろいろ学習したとあって、米国より早いピッチで、銀行の国有化や預金保護に動き出している。

しかし、この手の問題というのは大抵の場合、加害者より被害者の方が痛手を被るものだ。おそらく一般市民が短期的に直接受ける被害は、米国よりも多いのではないかと思う。それゆえの銀行国有化であり、預金保護ではあるのだが、実態が明らかになっていない段階で「保護します」と宣言しなければならないあたり、厳しさのレベルがうかがえる。

そもそも欧州も、実体経済が毀損されている状態である。たとえばニートという言葉はそもそも英国に端を発するが、実体経済が毀損されているのにニートという概念が成立するのは、すでに経済の根幹を金融経済に依存していることの裏返しである。すなわちニートを抱える父ちゃん母ちゃんが、なけなしのカネを危ない金融商品に突っ込んでいるのである。
 
 

欧州統合、遠のく夢

またここに来て悲しい現実が露呈しているのだが、欧州と一口に括ったところで、実態は結局一枚岩にはなれていなかったのである。たとえば先日の主要4カ国首脳会談では、文言こそ「がんばります」と足並みを揃えたものの、「なんでキリギリス(ラティーノ)をアリ(アングロサクソン)が救わなきゃいけないんじゃ、このボケが」という不協和音が行間からにじみ出る結果になった。

大体、アリ陣営としても死活問題である。ドイツはロシアからの天然ガスを止められたら冬を越せない状態であり、「グルジア問題ですか、それが何か?」という勢いで西シベリアの共同油田開発に合意している。またイギリスとて戦略的な要衝たるアイスランドを、自らが動けないスキに目の前でロシアにかっさらわれようとしている。

これに対し、ラテン側代表であるフランスのサルコジ大統領は「議長国である日本が選挙でgdgdだからサミットが開けない」と言っているが、ドイツから色よい返事をもらえなかった八つ当たりというところだろう。そもそもロシアのヘゲモニーの下に入っているドイツや、絶賛意気消沈中の英国に何かを頼もうというのが筋違いというものだが。またそのサルコジ氏をして、ラテンの落第候補筆頭であるイタリアのベルルスコーニ首相からの「頼むよサルちゃん」という要請にはやんわりお断りを入れているようにも見える。端的に言えば、誰しもが逃げの局面なのである。

そんなわけで、欧州は国ごとで明暗がはっきり分かれてきた。フランスはアフリカに旧植民地という権益を確保しており(ジダンやアンリの出身地は?という話)、ギリギリなんとか逃げ切れるだろう。またロシアには腐っても天然資源があるし、イギリスも重要資産は一応インドに避難させている。しかしそれ以外の国々は「どうなってしまうの」という状況だろう。特に現時点でユーロに参加していない「クローネな人々」は、アイスランドも含めて、ドキドキの展開である。
 
 

しばらくはモラトリアムが続く

ただ、それでも私は「長期的には米国より欧州の方がマシ」とは思っている。ことほどさように米国には「ファンダメンタルがなにもない状態」であるし、辛うじて残っている産業にしても、そもそも米国でなければならぬ理由はまったくない。米国でなくてもいい産業なのに米国企業が世界を支配できたメカニズム全体で崩れようとしている昨今、お先真っ暗と考えるのが素直なところだ。

これで軍事産業とのコネクションが強い「シビリアン」オバマが大統領になった暁には、米国唯一最大の公共事業である「戦争」があちこちで勃発という状況が生じてしまうかもしれない。大体いつの世も、最初に暴走するのはシビリアンであって、現場を知っている軍人上がりは武力行使に慎重なもの。対日姿勢も良好なので、ぜひベトナム帰りのマケインに勝っていただきたいところである。そんな空気を東西の海岸沿いに暮らすインテリ層はあんまり読めない気がするけれど。

閑話休題。とはいえすぐに米国がアルゼンチンになるわけではない。というのは、パクス・アメリカーナに変わる新しい秩序の形態、あるいは米ドルに変わるオルタネイティブの存在(あるいは概念)が、未だ見つかっていないからだ。ここで空白を生じてしまうと、おそらく本気で世界戦争が起こるだろうが、さすがにそれは回避したいというのが世界人類共通の願い。

というわけで、その姿が何なのかが明確になってくるまでの過渡期の間は、米国・米ドルによる秩序が、ある程度支えられなければならない。世界中が必死に米国を支援したり、米国のオイタを恩赦したりしているのは、結局そういうことである。ユーロは米ドルくらいもはやダメだし、中国は自国を支えるので精一杯。これで円高にならない方がおかしいというものだ。

MUFGがモルガン・スタンレーを、また野村がリーマンの主要部門を、それぞれ引き受けようとしているのも、そうした理由と見ている。もちろん米国の元投資銀行たちが有する日本の不動産と国債を支えないと日本の銀行も大変、というのが現象面的なニーズだが、それも含めて「空白を作らない」ことが大事となる。少なくとも、ソフト・ランディングは無理だとしても、新宿上空あたりでのクラッシュは避けていただきたい、というのが本音だろう。
 
 

アジアはどうなってしまうの

今回の危機を受けて、「これからはアジアの時代だ」と意気込む向きがある。確かにそう思いたいところだし、そういう面もあるのだが、そんなに単純な話ではないと私は思っている。

まずアジアは欧州以上に一枚岩ではない。多様性と言えば聞こえがいいが、要はバラバラということだ。正直、中国と日本、あとぎりぎりシンガポールくらいは大丈夫だろうが、残りの国々はヘッジファンドに通貨ごと揺さぶられかねない。おそらく経済規模の小ささとその根拠となる生産性や能力の低さによって、かなり厳しいことになろう。

またアジアは成長セクターと言われ続けてきており、確かに国別の成長率はここしばらく非常に高かった。しかしそれは「日本とシンガポール以外は全部発展途上」ということも意味している。日本人がPCを買い換えるよりも、手縫いの人々にミシンを渡した方が、生産性向上に寄与する、ということだ。

というわけで、金融経済的にもオモチャにされやすいし、自律的に成長を続けられるほどにはファンダメンタルが強くない。このファンダメンタルには政治的な安定性を含めた社会的成熟度が含まれるわけだが、優等生だったはずのタイですらひどいことになりはじめている体たらくである。これも残念なのだが、自ら覚醒しない限り、しばらくアジアの時代は来ないだろう。

それこそ最近ネットでかしましい「韓国はどうなってしまうの」という話はまさにその典型である。一見成熟しているように見えるが、歴代大統領はほとんど逮捕されるか殺されるか、というような国だ。結論としてはジンバブエ化してしまう可能性すら否定できないわけだが、いま彼らを救える外貨準備高を有するのは日本と中国しかないので、ジンバブエ化を回避するにはIMF経由でどちらかのヘゲモニーに正式に入るしかないだろう。

その時彼らがどちらを選ぶのか。あるいはそもそも選ぶ権利があるのかは定かでないし、今のところ今月上旬に日本はお断りを入れた形になっている。某国からのつなぎ融資も11月中には引き上げられるはずで、12月の討ち入りの頃には彼らも修羅場を迎えることになるだろう。北の方の首領様もご存命かすでに定かでなく、海保の皆様におかれては、厳冬の日本海でのご武運をお祈りするばかりである。
 
 

またしても長くなってしまった

人生とはヒマつぶしであり、ヒマつぶしには道草をはむことがベストソリューションである。とはいえまた長くなってしまった。道草を食べ過ぎると消化不良を起こすので、次回に続く。このあとは改めて、日本の行く末と、いわゆるベンチャーについて、もうちょっと考えてみたい。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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