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アメリカの夜

2008/09/28 14:14
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プロフィール

クロサカタツヤ / KUROSAKA, Tatsuya

インターネットや通信、放送サービスが大きく変容する中、産業、政策、技術開発等の最新動向や、情報通信サービスと社会の関係性を考える上での「新たな視点」を、さまざまな分野でコンサルティング活動をしているクロサカタツヤ氏がお届けします。
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2週間ほど、欧州出張に出ていた。現地の投資銀行家たちとのミーティングだったのだが、我ながらすさまじいタイミングだったと思う。数ヶ月後(あるいは数週間後)に彼らが同じ職場にいるのかももはや定かでない。

あまりにいろいろな話を聞いてきたので、私の中での整理はまだついていない。ただ放っておくと時間ばかり流れるので、五月雨でも書いていこうと思う。

まずはその前段となるような話として、ちょうどおとなりの渡辺さんのmixi日記上での議論が興味深く、私の頭の中が少し整理された。mixiに書いた日記だが、ノリも含めてそのまま転載の方がよさそうなので、普段とは文体が違うが、そのままにしておこう。

〜〜〜

もともとは

1)切込隊長の「政府紙幣ってどうよ」というエントリに対して、
2)マンデル・フレミングモデル(MF)から考えるとおかしいんじゃ?という指摘があり、
3)このタイミングでMFモデルって使えないんじゃ?との反駁が出た

という流れです。

まずは大学院時代に公共経済学のTAをやっていた者として(わっはっは)、MFモデルとその前提となるIS-LMモデルををざっくり約すと、「国民所得と利子率を基準にした財市場と資本市場の均衡(IS-LM)に、国内外の利子裁定の影響を取り込んだもの」となります。で、この理論適用条件を現実的に考えると、

・公的部門の影響が相対的に小さい
・資本移動の影響が明確になりやすい

等の、経済規模がある程度小さい、それでいて最貧国ではないような、すなわち比較的政治が安定している新興国あたりが対象となります。

が、もう一つ、IS-LMモデルにも共通する大前提として、「国際間の利子裁定が行われる」ということが挙げられます。つまりちゃんと市場がワークしている平時であるということ。冒頭の「3)このタイミングで」という疑義は、ここにかかるわけです。

で、そのへん(現状はMFモデルの適用環境にないこと)はざっくり同意するとして、感慨も含めて思ったのは、

「米国ってのはつまり巨大で立派な新興国だったのね!」

ということ。米国市場自体、対外投資による流動性のみを生命線としていた市場なので、むしろMFモデル的な意味で「良く出来てなければならなかった」ということなんだと思います。

でもやっぱり、そのモデルはいつか終わりが来るわけで、どこかでファンダメンタルを確保しないといかんわけです。覚めない夢がないのと同じ。たとえばそれは、生産剰余であるとか、それに基づく内需であるとか。

その意味で、ドルの信用が落ちるとか、社債が発行できないとか、そういう事態が起きている現在というのは、少なくともドル・ショック以降最大の変化であり、ソロスが言う「長年のバブル解消フェーズ」とか、市場関係者がチラホラ言い始めている「アメリカのアルゼンチン化」というのは、かなり腑に落ちます。

そんでもっていま米国の資本市場では「マイケル・ミルケン復活説」というのが流れています。オリバー・ストーンの「ウォール街」って映画をご覧になった方は、ゲッコー氏(マイケル・ダグラス)と言えば分かりますね。もちろんご本人のカムバックというよりは、要は社債もリスクマネー調達も止まってしまったので、80年代みたいなジャンクボンド・マーケットが必要なんじゃないの?ということですが。

しかし、80年代頃の米国はいまと違って、まだファンダメンタルがあった。すでに病にかかってはいたものの、自動車産業はあり、まだパンナムがいたわけです。また世界秩序も今とは違い、軍事という公的部門の支出が、国民経済を支えるメカニズムとしてそれなりにワークしていました。しかしきょうび、COTSのかけ声一発で、国防総省が使ってるPCはみんな中国・ベトナム製ですよ!

そう考えると、GSやMSが「銀行になる」という産業構造の崩壊含みでの変化だとか、社債発行の困難により今後生じるであろう超大型の倒産(たとえばGMはいよいよカウントダウンに入りましたし、ホテル産業とかもどうするんでしょうね状態)を視野に含めると、ニーズがあるのは分かるけれど本当に MM出現するの?それ囚人が脱獄したいというニーズと一緒じゃない?とも思うわけです。ここがグリーンスパン「お前が言うな」元FRB議長の言う「100 年に一度の変革期」ということなんだろうな、と。

だからやっぱり、そう簡単に「米国は復活する」とはもはや言えないんだろうなーと。とはいえドルに対するオルタナティブがないところでこの状況に突っ込んでしまった以上、プチバブルを含めたボラタイルは生じる、というより必須でしょう。

で、以前の日記でも触れた通り、残念ながら日本は米国債とファニー・フレディをしこたま抱え込んでいますから、ポジション解消するにも、途中の下り坂には若干お付き合いをせざるを得ません。MUFGがMSの普通株を取得するなんて、はっきりいって収監された大親分のところに差し入れに行っているようなもんですから。まあそうしないとMSが抱えている不動産をはじめとする日本国内の資産がふやけて、日本が相当イタタな状況になるわけですが。

ちなみにGSの優先株を受けるバフェットは大親分の管財人で、同郷のポールソンは「いいところもあったんだから恩赦してよ」とせがむ弁護士。この構図は概ね正しいと思っております。そういう意味じゃ、大親分のショバであった我々日本経済も、今年度中くらいはスナップショットとしては「シートベルトをお締めください」だと思います。

でもまあ、この先ずっとダメかと言われれば、そんなこたあないんだと思いますよ。やっぱり米国と日本って良くも悪くも全然違うので。マクロ経済的な観点としては、中期的にはそれなりに楽観視できる要素も、相対的にはあるんじゃないかな、と思います。

が、ぼくの最大の懸念は、そのマクロ的な相対優位を、ぐるっと回ってミクロ側は本当に活かせる状態なの?ということ。結局、本質を見極めずにラベリングするのが大好きなのは大きくは変わってないし、人口動態上の問題は何ら解消される気配はなく、また伝統という美名の下で仕事を変えようとしない姿も相変わらず。

実際、冒頭の一番最初の問題提起である「1)政府紙幣の要否」の議論は、ぼくは日本の公的部門の再分配機能が機能不全を起こしている現状では、あまり意味がないと思っております。だって議会は相変わらず何も決められないし、霞ヶ関は「民主党政権になるかもね」とサボタージュをはじめてるんだよ?!政府紙幣を刷る前にやるべきことがあるだろうと。

というわけで、欧州出張で聞いてきた話も含めて、今回のあれこれを自分なりに咀嚼して腑に落とそうとすると、「お前らもっとがんばって仕事しろ」というメッセージにしか聞こえないわけです。気負っても仕方ないのでサラリといきたいところですが、でもホント、がんばらないとね。誰が裁定するのかって、「お前じゃ!」という話なんだと思います。

〜〜〜

一点補足すると、欧州の投資銀行家たちの間には、いま一斉に"back to the fundamental"というかけ声がかかっている。ただそれは実のところ言うは易しで、そう簡単ではない。

そして日本にも似たような問題と限界を抱えている産業や企業がある。そういえば帰国する機内で開いた新聞に「王監督が辞任」と書いてあったのを思い出し、ああまた日本でのタフな仕事に戻らなければならないな、と身を引き締めた次第だが、これはまたいずれ改めて。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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