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タクシー・ドランカー

2008/06/09 00:11
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プロフィール

クロサカタツヤ / KUROSAKA, Tatsuya

インターネットや通信、放送サービスが大きく変容する中、産業、政策、技術開発等の最新動向や、情報通信サービスと社会の関係性を考える上での「新たな視点」を、さまざまな分野でコンサルティング活動をしているクロサカタツヤ氏がお届けします。
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週末の夜なのでたまには徒然なるままに。居酒屋タクシーについての報道やエントリがあちこちで散見されたので、ちょっと気がついたことでも。

 

居酒屋タクシーは大した問題ではない

まず大前提として、官僚の残業が多いというのは、先に町村官房長官が会見で述べられた通りである。国会質疑における野党議員からの質問内容が、議会周辺でのヒアリングや裏取りをもとに役所へ上がってくるのが前日の夜。それから大臣の答弁案を書いて、省内調整をかけ、各方面に戻すという作業を行う。案件にもよるが、これが大体6PM-2AMくらいかかる作業となる。

この作業自体の善し悪しは本題と外れるが、一つだけ思うのは、この作業に付き合う官僚も気の毒なら、代議士は代議士で議会終了後も党内の委員会やら勉強会やら陳情対応やらが待っているという状況であり、「誰が悪い」という話ではないということ。むしろ諸悪の根源は、会議の進め方(あるいは会議体の設計そのもの)やドキュメントの作り方など、日本のホワイトカラーの仕事の進め方そのものの「緩さ」にあると思う。

さておき、本題の居酒屋タクシー。正直、タク券をはじめ残業タクシー代が出る会社に所属したことのある人ならば、こういう個人タクシーがあちこちにいることは周知の事実だと思う。何しろ私も前職に勤めていたころに何度か冷えた缶ビールをもらったことがある。あいにく深夜割増でも6000円弱で着いてしまう「おいしくない客」だったので、それほど熱心にリピート営業はされなかったけれど。

この行為自体は営業そのものである。その対象が国家公務員でも基本的に問題はない。あるとしたら国家公務員倫理法の「精神」への抵触だろうが、せいぜいが民間企業の社員が出張で貯めたマイルでアップグレードするという程度の話だろう。だから「ビールをもらうのが悪い」という論調だけなら、マスコミお得意の官僚叩きにほかならない。しかもマスコミ自身も深夜残業の多さで有名な存在であり、深夜にタクシーを使うことも日常茶飯事である(ハイヤーをガンガン使える一部の新聞社・テレビ局はまた別だが)。つまり「なんとまあ白々しい」という話だ。

 

とはいえ問題の気配はある

というわけでここまでなら「マスコミって相変わらずダメだね」と嘲笑していればいい話となる。もちろんそれも「マスコミ叩き」だから、かくいうマスコミと同じく「カタルシスという名の穴に落ちるムジナ」になる可能性は十分覚悟すべきであろう。

ただ、一部報道で現金の授受があったことがほのめかされており、これは官民を問わずいささか問題である。仮にタクシー運転手が運賃を水増し請求して、その一部を当人に還流していることになったら、これはリベートを受け取っているようなものであり、所属する組織に対する背任行為である。さらにこれが国家公務員の場合、倫理的にもその罪は民間のそれに比べてもより重いはずだ。

実際、夜中の霞ヶ関や丸の内や大手町を歩いてみると、深夜残業帰りの客を待つタクシーの行列が、個人タクシーという「会社という公のガバナンスから離れた事業者」ばかりなのは気になるところだ。有り得ないとは思うが、迎車中なのに実車状態でメーターを回してたり、お客さんが狸寝入りをしている中で首都高環状線をグルグル回ったり、といった悪用はいくらでも妄想できてしまうところである。もとより、悪用を妄想させてしまうシステム(と妄想してしまう人間)の問題なのだが。

 

政治家という職業のしんどさ

さて、ここから先は、酔っぱらいの床屋談義。

この問題を糾弾しているのは、年金問題で名を上げた民主党の長妻昭議員である。しかしよく知られているように彼は日経BP社の記者出身、つまりマスコミ出身である。ということは前述の通り、居酒屋タクシーの存在や、それを官僚が利用しているであろうことを知らなかったというのは考えにくい。となると気になるのは、彼がなぜこのタイミングで糾弾をはじめたのか、という背景である。

結論として今回の糾弾に関しては、このあとそれほど強烈な爆弾を彼が隠し持っているようには思えない。なにしろ普通に考えて、大きな問題に育つネタとはどうにも思えないのだ。ハイヤーの法人契約等ならまだ利益供与のような問題にもなろうけれど、あくまで個人利用者対個人タクシーという話だ。よほどピンポイントで刺したい人間でも役所の中にいるなら話は別だが、それでもせいぜい「クラゲに刺された」くらいの痛さだと思う。

となるとやはり彼の目的は最終的には「売名」ということになるのではないかと邪推してしまう。それこそミスター年金であるところの長妻氏クラスでも名を売らないとダメなのか?と思いがちだが、実は前回は選挙区では落選している。2回連続で選挙区からの当選に失敗すると、党内下部組織からの下克上を覚悟しなければならなくなるのがこの商売の厳しいところであり、その意味では、彼も背水の陣なのかもしれない。

というわけで、都内ホテルの宴会場にも夏場の大規模パーティの予約が入りはじめているらしく、そろそろ選挙が近づいてきているようだ。となると酔っぱらいの頭の中では、支持基盤が脆弱な議員が売名のためにあちらこちらで暴れ始める、という姿をどうしても思い浮かべてしまうのである。

 

秋葉原の事件の危うさとネット言論の脆弱さ

そんな絶妙のタイミングで秋葉原の通り魔事件は起きてしまった(被害に遭われた方にはお見舞いを申し上げます)。私自身はあのカルチャーとは縁遠いところで日々の生活を送っており、実態はよく分からないのが正直なところではあるが、規制をかける方向でのカタパルトとなる最悪のタイミングだということは分かる。せっかく青少年フィルタリング法案が実効性のないところで落ち着いたのに…というところだろう。

こうなると、これまで以上に戦略的に動かなければならないところなのだが、そうした動き方にいわゆるネット言論はまだ十分対応できていないと思う。それこそ冒頭の「居酒屋タクシー」にしても、私が見渡した限り、マスコミ(あるいは官僚)へのダメだしに終始するBlogエントリが多く、その背景にある業務構造や、問題化によって生じる利害関係の変化にまで言及しているものは少ないように思えた。これでは結局カタルシスの(再)生産の場となってしまうだろう。

このあたり、実は現状における「ネットの(言論面での)限界」なのかもしれない。ただ、こうした限界を打破できなければ、いわゆるネット言論は今後も何かに従属しつづける脆弱な代物に終始してしまうようにも思う。あるいは今回の事件によって秋葉原カルチャーが今後「生き残るのか、挫けるのか」の分水嶺に立たされている(ように見える)のと同じく、世の中の動きによって潰されてしまう代物になってしまうのかもしれない。

…と気がついたら、酔いもさめはじめてしまい、また日付も変わってしまったので、今夜はこのあたりで。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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