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CNET Japan ブログ

わが心の情報流通(2)

2008/04/07 23:56
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プロフィール

クロサカタツヤ / KUROSAKA, Tatsuya

インターネットや通信、放送サービスが大きく変容する中、産業、政策、技術開発等の最新動向や、情報通信サービスと社会の関係性を考える上での「新たな視点」を、さまざまな分野でコンサルティング活動をしているクロサカタツヤ氏がお届けします。
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年度末の忙しさにかまけていたら、「この前のエントリには続きがあるんですか?」という生暖かいお問い合わせを多くいただいた。年度末のどうしようもない忙しさにかまけていたのだが、このエントリの続きのことをたまに思い出しては、「さてどうしようか」と考え、筆が止まっていたのも事実。

というのは、お手伝いしている政府のプロジェクトでも、同じような問題意識であれこれ議論を重ねており、そのたびに前のエントリに書いた「で、自分はこの国をどうしたいの?」という問いに戻ってきてしまうのである。おそらくそこまで考えなければ届かないのは自分でも薄々分かっているのだが、まだ腹を括りきれていないのが正直なところ。

というわけで、ようやく一息つけたところで、自分自身の整理も含めて、改めて「堂々巡り」をしてみたい。

経験から学べるか?

多くの案件を通じて、共通して思うことがある。それは、

・問題の存在自体には薄々気づいている
・しかし問題の所在やその本質には気づけずにいる
・従って問題を正しく表現できない
・感覚を頼りに付け焼き刃や見当違いの対策を重ねてしまう
・現場がなんとか取り繕うので経営者はその失敗に気づけない
・フタを開けると大変なことになっている

という状態に陥っている企業や経営者がとても多い、ということだ。

一番最後の「大変なこと」が本当に企業の存亡に関わる状態であればいわゆるターンアラウンド・プロジェクトとなる。ただそこまで深刻でなくても、たとえばベンチャーならアーリーからミドルへの移行期等、また上場企業なら売上規模の桁を上げる等の「企業が自身のステージを上げる時」もまた節目であり、問題が顕在化しやすいタイミングとなる。

こうした場面でコンサルティングに臨むとき、よく話題にのぼるのは「これまでの経験から何か学べないか」ということである。実際、過去に学ぶことは重要だし、かつ比較的容易に採れる手法でもある。さらにそこで盛り上がってしまい、それを(成功・失敗いずれにせよ)事例をデータベース化して…ということまで考えはじめることもよくある。

もちろんこうした事例を収集・蓄積して分析することはとても重要だ。それは様々な分野で専門DBが事業化されていることからも分かる。ただ、そうした専門DBに共通するのは、それを使いこなすためのスキルやリテラシーが必要であるということである。そしてそれは何かといえば、「解決すべき問題を特定し、それを表現できる」ことである。

しかし前述のとおり、実際にはそれができないことが極めて多い。あるいは問題を無理に表現しようとして、間違った解法を導いてしまうこともしばしばある。となると、経験に学ぶだけで解決できるわけではない。より平たく言えば「そんな高級な方法で解決できる状況には(まだ)ない」ということがむしろ多いのだ。

ゲイツやジョブズやゴジラやプロマネ

こういう問題は、それこそワインバーグ先生の名著「ライト、ついてますか―問題発見の人間学」を引くまでもなく、以前から散々指摘されていることである。しかし相変わらず多くの人がこうした問題から逃れられず、同じ落とし穴に何度もはまる。

そういう同じ失敗の繰り返しに苛立った結果として、「スーパーマン待望論」が登場するのだろう。今風(かつIT業界風)に言えば和製ゲイツや和製ジョブズ誕生への期待、もう少し現場風に言えばプロマネ待望論である。ただそれは正直なところ「ゴジラが現れれば日本は変わる」というのと同じレベルの話である。いま問題に向き合って、解決を迫られている当事者としては、とても与することはできない。

一方、これをシステムとして解決しようとするのが米国流のアプローチであり、その先兵を養成するのがMBAなのだと思う。実際、MBA留学を経験した友人・知人に話を聞くと、学校ごとに方針や得意分野、またカリキュラムが異なるものの、「問題の本質をすばやく確実に把握し、適切に対処すること」の重要性とそのメソッドをしつこいほど教え込まれる、という点では共通している。

こうしたやり方が極めてエレガントに成功したのが、Googleだと思う。事業の拡大につれ、Googleの潜在能力を顕在化させるための経営手腕が、創業者の二人に不足していることを気づいたスタンフォード大学やセコイア・キャピタル等の株主は、エリック・シュミットを連れてきてその任に就かせた。この「ラリー・ページとセルゲイ・ブリンでは足りない」という問題の発見とその後の行動こそが、Googleが成功した一つの要因であろう。

シリコンバレーの理想と現実

米国礼賛というつもりはない。それこそ、MBAホルダーだからといって問題を確実に発見できたり仕事ができると保証されているわけではない、というのが現実である。しかし、ただ座してスーパーマンを待つよりは、システマチックな手法も取り入れつつ、ステイクホルダーと共に問題を探り、市場、産業、あるいは社会全体で解決策を模索するという方が、結果的に早くて確実のようにも思う。

そしてそれを純粋培養して効率化したのが「シリコンバレー」なのだと私は理解している。よく日本では「シリコンバレー=エンジニアのパラダイス」と認識されているが、私はむしろエンジニアが生産的に活動できるための社会インフラや資本市場が高度に整備されていることがシリコンバレーの価値だと思う。実際、そうした機能があれほど集積・機能している地域は、米国の中でも彼の地だけであり、極めて特別な存在と言えるだろう(あとはDARPAが担っている役割は比較的近いものがあるが、これはやや特殊なのでまた改めて)。

ただ、それとて最近の資本市場の激動からは逃れられていないようだ。それこそかつては整然と機能しているように見えたVCたちも、最近はいたずらにパフォーマンスを求められ、日本の筋の良くないベンチャー投資と似たり寄ったりの状況が散見されるようだ。それこそ前述のセコイアでさえも、「技術的には無価値なベンチャー」にいきなり札束持参で頭を下げに行くような動き方を一部では迫られていると、伝え聞く。

じゃあどうしたい?

というわけで、シリコンバレーを日本に作ろうとしても、そもそも「何周遅れ?」という話であり、また資本市場が揺れている現状では、「何を今さら?しかもこのタイミングで?」というような話になってしまう。

それでも、愚直に学んでキャッチアップしていくべきことは、いくつかあると思っている。たとえば私が思いつく限りでも、

・ステイクホルダーへの教育(ファイナンスの質的向上)
・経営者の教育(問題を発見・表現する技法の体得)
・技術の事業化・資産化というマインドの形成
・それらを支える情報や人材の流通基盤の構築・活性化

などは、シリコンバレーとの比較云々以前に、日本が明らかに遅れを取っている領域だと思う。もちろんこれを満たせばすぐに「理想の国」になるとはとても思えないが、少なくともこれくらいは必ず達成していなければ、この国は決して楽しくなるまい…少なくとも私がそう思っている以上、これらが私の当面やりたいこととなる。

それで何してる?

以上、まとめてはみたが、気の遠くなるような作業でもある。というより、一人で何かできると考える方が間違いで、何らかのレバレッジが必要だ。私にとってのその一つが、昨年の夏頃から縁あって参画している「情報大航海プロジェクト」だと思っている。

情報大航海プロジェクトについては、当初のコミュニケーションの失敗(かつ現状でもまだまだ課題山積ではある)により、相変わらず日の丸検索エンジンを推進する国家プロジェクトと誤解している方もいるかと思う。ただ実際の目的は、大小問わず企業の中でなかなか表に出てこない技術開発を引っ張り出し、それを世の中でもっとカジュアルに、しかしできるだけ信頼できるカタチで使えるようにすることにある。別に「和製Google」を作っているわけではない。

この中での私の役割は、プロジェクトの全体を見渡しながら、Web技術やモバイルの台頭によって表面化する制度的課題を検討する、いわば制度設計のお手伝いである。具体的には、たとえば個人情報保護や著作権関連の法制度を、もう少し現実のネットやビジネスの視点で使い勝手のいいものにできないか、そして産業振興に資するような形でいろいろな整備を進められないか、さらにそれを国際協調や海外発信できないか、といったあたりが直接的な作業領域となる。実際すでに昨年度(3カ年のプロジェクトの1年目)も海外の政府関係者といくつか意見交換を進めている。

もちろん私は、制度設計したりきっちり法整備すれば何でも問題が解決する、とは思っていない。法制化することの弊害だってあるし、プロジェクトオーナーの経済産業省もそのことは承知している。ただ現実に法制度が社会に与える影響は大きい。ならばむしろそれを使って、第一線の人たちが何を感じているのか、そしてそれを受けて今後の情報通信産業をどう(再)デザインすべきか、を広く大きく議論する「契機」になればいいと思っている。

というわけで、カミングアウトしてしまった以上、今後もたまに触れる機会があると思うが、何卒お付き合いいただければ幸いである。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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