"Itojun Fund"の創設が先のISOCに承認された、という話を聞いた。
これまでのitojunさんの功績を讃え、IPv6の研究開発や普及活動に貢献した人を支援するファンドとして運営されるという。オーガナイザーとして、itojunさんのご家族のほか、村井純氏、江崎浩氏、Ole Jacobson氏、Randy Bush氏、Bob Hinden氏といった、IPv6の(というよりインターネットの)第一人者が顔を揃えている。
ISOCでこうしたファンドが作られるのは"Jonathan B. Postel Service Award Fund"に続いて二人目となる。その事実からもitojunさんの功績の偉大さを改めて認識させられるが、むしろ同氏の意志が今後も続くことを、IPv6の普及活動に関わってきた端くれとして素直に喜びたい。
以前よりは風当たりは弱まっているようだが、巷ではIPv6の要否といった議論が相変わらず続いている。その議論自体は私も否定するものではないし、実際「アドレスが枯渇するからIPv6に移行すべき」という議論には幾ばくかの論理的な飛躍があると思っている。いずれ改めて書くが、それはそれで別途検討が必要だ。
ただそんな議論が些末に感じるほど、インターネットは危機的な状況を迎えている、と私は感じている。ざっと考えただけでも、産業構造(ネット中立性)、技術・運用(IPアドレス枯渇、ルーティングテーブル崩壊)、社会の中の位置づけ(広義のセキュリティ問題)など深刻な課題がある。しかもそれらはそれぞれ高度に政治的な問題を孕んでいる。
そんな困難にIPv6の実装という形で回答を示したitojunさんから、我々は「宿題」を課せられたのかもしれない。私ごときにそれを解く力などはもちろんないが、それでも私なりに考えたことはまとめていきたいし、たとえば"Itojun Fund"の精神のように、解こうとする人を私も何らか助けたい。そんなことを改めて思い、たまには短いエントリを認めてみた次第である。