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touch me if you can

2007/11/10 03:43
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プロフィール

クロサカタツヤ / KUROSAKA, Tatsuya

インターネットや通信、放送サービスが大きく変容する中、産業、政策、技術開発等の最新動向や、情報通信サービスと社会の関係性を考える上での「新たな視点」を、さまざまな分野でコンサルティング活動をしているクロサカタツヤ氏がお届けします。
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重めのエントリが続いたので、少し口当たりの軽いものを。

iPod予想の答え合わせ
もう2ヶ月前の話になってしまうのだが、パネルディスカッションの方で以下の話を書いた。

次期iPodとiPod nano、どんなのが出る?

GPSや各種センサーがあれこれ付いたら楽しいかも、と思います。

iPodは私たちに「音楽をデジタルで聴くとこんなに楽しいことがあるんだよ」という提案をしてくれたと思います。そんなiPodなので、iPodを名乗るのであれば、そのコンセプトから大きく外れないところで進化してほしいですね。

たとえば、音楽はシチュエーションやTPOに合わせて選曲したいもの。従来のシャッフル機能もよくできているのですが、夜の浜辺を散歩しているならボサノバ、朝の通勤途中ならアップテンポな曲、というように、今自分がいる場所やその環境の情報でシャッフルの傾向が変わるというのもおもしろそうです。

ナイキとのコラボレーション(Nike+iPod)でまた新しい地平を開いたように、「音楽+何か」というところを引き続き開拓して欲しいと思います。それこそ、通信機能あたりは当面iPhoneに任せておけばいい、とさえ思っています。

すでに新しいiPodが出ている今日としては「答え合わせ」なのだが、結果としては

・既存のiPodの高機能化(小型化、大容量化、リデザイン)
・通信機能の付加(iPod Touchのラインナップ投入)

というところで、多くの方が大体予想通り、あるいは当たらずとも遠からず、というところだったと思う。その後の展開としては、予想以上にiPod Touchが「盛り上がっていない」というところが意外といえば意外なところだが、これもどことなく「そんなものかな」という納得感がある。

MP3プレイヤーとしてのiPod
iPodビジネスは踊り場にさしかかっているように思う。というのは、Apple(とその投資家)が当初期待したほどiTMSビジネスが盛り上がらず、結果として「気が利いていてカッコいいMP3プレイヤーの一つ」という位置づけに終始しているように思えるからだ。またAmazonなどの競合に一部コンテンツも奪われるなどして、競争環境も厳しくなっている。

実際、以前aboutmeに「iPodの中身は何が入ってる?」という質問を放り投げておいたのだが、現時点でおよそ8割が「手持ちのCDから作ったMP3」となっている。もちろん地域差や年齢差等はあろうが、おそらく世界的にもそんな位置づけなのだろう。

もちろんAppleもそれを敏感に察知して、だからこそDRM解除に動いているのだと思う。以前のエントリでも触れたが、ハードウェアメーカーは一般に、流通形態が違法だろうと合法だろうと、とにかくハードが売れるきっかけになればなんでもいい、という立場だ。実際JEITAなどは権利者に対し強硬な姿勢を取る側にいて、Appleの動きもそれに倣っている。

変えられないポジション
そんなiPodの位置づけを変えようとする試みとして登場したのがiPod Touchなのだろうが、前述のように必ずしもユーザには受け入れられていないようだ。それこそ、登場した瞬間は私も「買っちゃおうかな」と思ったものだが、結局買わずにいるし、今となっては別にいらないとも思う。これは私自身の認識だが、おそらく

・音楽プレイヤーとしての成熟不足(容量が小さい、筐体がでかい)
・無線LANしかメディアがないので通信端末として使う気が起きない

というところで、つまり何にせよ中途半端に見えてしまうのだ。とはいえ、じゃあiPod Touchが3GやHSPAに対応していたら買いたいかといえば、それはすでにiPhoneであり、iPodではない。

ここにiPodの悩みの本質がある。iPodがCDから起こしたMP3を再生するものである限り通信はいらないし、iTMSでコンテンツを買うにしてもPCがあれば事足りるのだ。というより現状はむしろその方が快適なように設計されているのだから、面倒な公衆無線LANなんぞよりは、おうちに帰ってPCにつなげた方がよほどいい。そんなApple自身が作り上げたiPodのポジショニングが、iPodの成長を阻害しはじめているのだ。

そう考えると、もしAppleが通信という手段でiPodの位置づけを本当に変えたいなら、iPod Touchのようなパッケージではなく、既存のclassicやnanoに通信機能が搭載されるべきだろう。またそれは、あたかもローカル・ストレージにアクセスするスタンドアロンのiPodのように、オン・ディマンドかつシームレスにネットの先のコンテンツへアクセスできるものでなければならない。

しかしこれはリスクを伴う大仕事となる。なにしろ実際問題として、無線系の高速通信デバイスは、まだそこまで小型化・省電力化が進んでいない。またノードが貧弱(stupid)なら、それこそ日本の携帯電話網くらいのインテリジェント・ネットワークを使わなければ、権利処理や決済をこなせない。それはAppleとしてサービス機能の一部をキャリアに売り渡すことを意味する。よほどのディールでない限り、到底容認できなかろう。

登るべき山を探すApple
このあたり、Appleも相当悩んでいるのだと思う。Appleが期待しているほど、「新しいお客さん」がAppleのサービス・コンセプトに付いてきてくれていないし、Appleが新しいことをしようとしても、技術動向やApple自身のビジネススタイルがその制約となりはじめているのだ。

これは事業体としてのAppleが踊り場にさしかかっていることを意味する。Macが頭打ちの現状でiPodも成長が鈍化してしまうと、iPhoneがよほど大化けしない限り、売上的にも「今がピーク」になりかねないからだ。

あるいは、iPhoneを「iPodナントカ」ではなくわざわざiPhoneと名付けたのもその一環だろう。要は「iPodとは別モノなんですよ」ということを明確に打ち出さないと、新規市場の開拓が難しいことをすでに認識しているのだと思う。一見当たり前のことのようだが、このあたりのビジネスセンスは本当に見事で、そんな当たり前ができない日本のメーカーは周回遅れであることを自覚すべき、と僭越ながら私は思うが、それはまた別の話。

もちろん、先日のLeopard発売を見ても分かるように、買い換え需要はきちんと確保しているので、急に業績が悪化することは考えにくい。要は内部留保を蓄積していく時期(つまり収穫期)に入ったということで、これはこれで新たな経営オプションの獲得を意味するので悪いことではないが、成長期はひとまず終息しつつある印象が強い。こういうステージが変わる時の経営の舵取りは、実は結構難しい。

というわけで、Appleの株を買いますか?と問われたら、ロングショートいずれにせよ私は今はポジションを作らないだろう。ロングでは高値圏の気配がするし、ショートでも当面は高止まり感があって旨味がなさそうである。もちろんAppleのことだから相当筋読みをしているはずが、だとしたらなおのこと、それが見えてからでも投資判断は遅くないはずだ。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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