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社長Blog太平記

2007/09/11 02:14
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プロフィール

クロサカタツヤ / KUROSAKA, Tatsuya

インターネットや通信、放送サービスが大きく変容する中、産業、政策、技術開発等の最新動向や、情報通信サービスと社会の関係性を考える上での「新たな視点」を、さまざまな分野でコンサルティング活動をしているクロサカタツヤ氏がお届けします。
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少し間があいてしまったのだが、前回と多少関連する(かもしれない)エントリを一つ。企業そのものの情報発信だけでなく、企業経営者自身の情報発信について。

社長Blogの興隆
経営者がBlogで情報発信する。こうした光景は今や珍しいものではなくなったが、それこそ10年前には上場企業の社長のコメントが毎日読めるなどという機会はほとんどなかった。よほど先進的な経営者でさえ、社内イントラでたまにエッセイを書くくらいが関の山だったはずだ。

こうした社長Blogには、大きく2つの流れがある。一つは、経営者自らの意志で個人としてBlogを書いているというもの。もう一つは、企業のオフィシャルな広報の延長線上としての社長Blogである。後者の場合は、企業のWebサイトでよく見られる「社長からのメッセージ」のようなコラムのBlog版として運用されるというイメージのものが多い。

両者にはそれぞれ違いがある。たとえば前者は経営者自身がキーを叩くことが多いのに対し、後者は広報部門が間に入って予めテーマやアジェンダを設定し、その上で経営者が必要な事項をコメントするというものも少なくない。また前者では経営者自身の趣味や雑感に触れられていることもあり、より「個人」の色彩が強く出やすいようだ。

環境変化とBlogのマッチング
こうした社長Blogの興隆は、経営者自身による情報発信の重要性が近年格段に高まっていることを示唆している。やや厳しめに見れば、社長が自分の言葉で話せないような会社に、まともなマネジメントが存在するはずがない、という考え方が広がったということだ。つまり、経営者に求められる役割が変わった(増えた)のである。

おそらく、ファイナンスの位置づけの変化を含め、企業とステイクホルダーとの付き合い方が相対化・多様化し、企業の代表者たる経営者には、よりコミュニケーションに積極的であることが求められるようになった、ということなのだろう。こうした事業環境の変化とテクノロジーやメディアの変化が相まって、社長Blogの広がりにつながったように思える。

私自身が投資家でもあるので、こうした流れは基本的にいいものだと思っている。投資活動においてバリュエーションやデューデリジェンスは呼吸するのと同じくらいに不可欠な作業なのだが、その時の「酸素」として、経営陣(特にトップマネジメント)がどんな顔をして、何に関心を持ち、それをどのように表現しているのかは、やはり重要な情報だ。

実際、ファンドマネージャやアナリストは、以前から経営陣との面会を重視してきた。直に会うことで感じられる機微や挙動から読み取れる情報は、案外大きなものなのだ。おとなりの渡辺さんからも聞いた話だが、最終的には社長と話している時の表情や眼球の動きが投資決定の重要な評価ポイントとなる、という投資家の声もあちこちで耳にする。

厳しい視線
従来は一部の大口・機関投資家にしか与えられなかった機会が、限定的であるにせよBlogを通じて一般の投資家でも得られる。こうした変化は投資という活動そのものを一層成熟させていくし、実際に市場でもそうした変化がここ数年で起きている。いわば投資の民主化のはじまり、とでも言うべき動きだと考えていいだろう。

一方それとは裏腹に、受け手の側には「自分自身の決定に責任を負う」という義務が生じる。たとえば社長がBlogで発信した情報を、受け手は自力で吟味・判断しなければならない。そこには、虚偽ではないにせよ誇張はあるだろうし、主観・客観が入り交じっている場合もある。それらを見極め、自分なりに評価を下さなければならないということだ。

こうした目で社長Blogを眺めてみると、危ういものも時折見かける。たとえば会食や外出先の様子ばかり書かれたBlogでは、果たして社長は会社にいるのだろうか、この会社のガバナンスは機能しているのだろうか、と気になる。またいくら社長同士が知り合いだからといって、他社の事業課題を無闇に指摘したエントリを見ると、不当競争を理解しているのだろうか、そもそも社会人としての礼節を備えているのか、とさえ感じることもある。

そんな厳しい視線に晒されながらも、これからの経営者は、主体的な情報発信から逃げることなく正面突破していかなければならない。すべての社長がBlogを書くべきというつもりはもちろんないが、経営者による情報発信が一般化した以上、リスク要因といって情報発信を避けることはできないのである。情報発信に前向きな企業には好感が持てるし、逆に判断材料を投資家や取引先に提供しない企業は、何ら関与に値しない。

積極と慎重のあいだ
ではどのようにリスクを管理すればいいのか。難しい問題だが、たとえばマネックス証券・松本氏エキサイト・山村氏のような情報発信に成功した経営者のBlogを見ていると、たとえば以下のような共通項があるように思える。

・経営者には公の顔しかないという自覚を持つ
経営者に「Blog上では一個人だから」といった甘えは許されない、ということである。極論すれば、ネットの内外を問わず24時間監視の目に晒されている、というくらいの意識が必要だろう。

・中途半端に書かない(書く/書かないの規律)
経営方針の説明やIRには広報戦略が必須である。こうした準備ができないのであれば、Blogではその話題には触れるべきではないし、思いつきのエントリなどもってのほかである。こうした書く/書かないに関する「規律」が求められる。

・あらゆる問題をカバーしようとしない
上記の規律にも関連するが、会社は公器である以上、いくら経営者が優秀であっても、様々な課題に一人で対応できるわけがないし、対応してはいけない。それを社長一人が背負ってBlogに記していくというのは、極論すれば単なるエエカッコシイである。

要すれば、コミュニケーションは積極的に、でも対応そのものは慎重に、といったところだろうか。当たり前のことのようだが、特に経営者は濃淡はあれど自我の強い人たちであり、その当たり前が案外不得意のようでもある。またどのあたりが不得意なのかを探ることで、コミュニケーションの課題の先に実はガバナンス上の課題が見える、ということもままある。

Webから見える経営課題
前回のエントリも含め、このあたりの領域が気になっているのは、どうもWebやBlogを見ることでそうした「企業の経営課題」をある程度察することができるような気配を感じるからである。また反対に、ステイクホルダー・コミュニケーションを課題として認識し、Webを軸に改善に取り組もうとする企業も周囲でちらほら見かけるようになってきた。

いずれにせよ、経営者自身による情報発信は企業にとって重要なチャネルの一つであり、ならばもっと戦略的に位置づけてもいい。もちろんそれは会社の宣伝を垂れ流すというのではなく、それこそ前述の山村氏のように、雑感や日常の出来事を中心に綴ることで人間としての個性や哲学を知ってもらい、結果として企業認知や関心を高めてもらうというアプローチもあるだろう。

このあたり、内部統制やコンプライアンスの議論とも関連して、まだまだやるべきことはあちこちに山積している。基本的にはケース・バイ・ケースなのだろうが、上記で紹介したように少しずつベスト・プラクティスもできはじめている。少なくともそれらへの目配りは引き続き必要なところだろう。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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