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上位層と下位層の間で(1)

2007/07/17 22:56
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プロフィール

クロサカタツヤ / KUROSAKA, Tatsuya

インターネットや通信、放送サービスが大きく変容する中、産業、政策、技術開発等の最新動向や、情報通信サービスと社会の関係性を考える上での「新たな視点」を、さまざまな分野でコンサルティング活動をしているクロサカタツヤ氏がお届けします。
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ネットワーク中立性という議論
先月末から今月はじめにかけて、ネットワーク中立性に関する資料が立て続けに公開された。

「ネットワークの中立性に関する懇談会」報告書案
「P2Pネットワークの在り方に関する作業部会」報告書
「インターネットは誰のものか」(行政のキーパーソン・谷脇氏の著書)

ネットワーク中立性をごく大雑把に説明すると、インターネットをビジネス面で誰がどう支え、そのために富をどう再分配するのか、という議論である。具体的には、インフラを支える通信キャリアやISP等の「下位層」と、アプリケーションを提供するコンテンツ・サービス事業者等の「上位層」の対立を基本構造とし、主に前者(通信キャリア等)が後者の「儲けすぎ」に異議を唱えるという形で問題提起されている。

最も先鋭的な議論は「ネットただ乗り論」である。すなわち、上位層事業者は下位層事業者のインフラにただ乗りしているのでは、ということだ。たとえば米国では、MCI(通信キャリア)からGoogleに移ったインターネットの父であるヴィントン・サーフ氏の言葉を借りると、

いくつかの米国の通信事業者は、ブロードバンド利用の拡大を受け、Googleのようなアプリケーション・プロバイダが発生させるトラフィックを伝送するための費用を、彼ら自身に負担させたい、と主張しています。一方Googleは当初から、Googleとエンドユーザはブロードバンド・アクセスのための費用を支払っているではないか、と主張しています。

という状況で、すでにFCCや議会マターの話となっている。また日本でも同様の議論は展開されており、ISPとGyaoがトラフィックの費用負担について意見を戦わせている。ただ米国に関しては、現時点ではインフラ側の主張は認められておらず、また中間選挙で議会の枠組みが変わったことで、今のところは議論が水面下に潜りつつある。

深く、広く、複雑な構造
一見すると、インフラがアプリに「ショバ代よこせ」と言っているような話である。ただ、実際にはそう単純化できる問題ではない。インターネットの内側の構造は複雑な要素がいくつも絡みついており、極めて慎重な解き方が求められる。

たとえば情報通信産業の構造や規制状況は各国で異なる。米国だと、単に上下対立という縦方向の構造だけでなく、強大すぎるCATV事業者のアンバンドルという横方向の課題もあり、縦横を同時に解く必要がある。また日本は、NTTの物理層(特に光ファイバ)への投資と支配をどう御していくのか、という縦方向の深さや複雑さを考慮することが必要だ。

また一方で、事業者の資本・収益構造がすでに多国籍化しているという現実もある。GoogleやYahoo!はどこで稼いでいるのか、あるいは米国に市場を有するT-mobileの親会社は誰か、といった話である。事業者の側が市場を選ぶ以上、たとえばある国で規制を強化した場合、そこから事業者が離れ、結果として市場を衰退させる可能性がある。

さらに市場によっては、上下両層の垂直統合による事業化が進んでいる場合もある。たとえば日本や米国の携帯電話キャリアは垂直統合指向(反対に欧州では比較的アンバンドル指向)にある。こうした場合、バンドルとアンバンドルのどちらが市場活性化や全体の利益につながるのかを考える必要もある。またNGNを「物理層とサービス層を統合する試み」と考えれば、NGNもこの領域に含まれる議論だ。

そして技術の変革期であるということも大きい。特に無線系では3Gがいよいよ成熟し、4Gに向けた研究開発の動きが活発だ。またこれに呼応する形でWiMAXなどの次世代技術が視野に入り、一方でバックボーンとなる固定系ではNGNを含めたFMCの動きも進展している。政策面でも、地上デジタル放送の推進等で空いた帯域の再利用等、電波行政の変化も見られ、新規参入の可能性も高まっている。

このように、含めようとすればどこまでも含められてしまうし、実際すべての問題は同時並行・同時多発的に(しかも有機的に結びついてそれぞれ化学反応を起こしながら)進んでいる。こうした事態は、あらゆるデジタル通信のインフラにIPを使うという「オールIP化」の副産物、とも言えるだろう。すなわち、技術開発や商品開発のスピードに、(政治、産業、企業等、あらゆる意味での)ガバナンスが追いついていないのである。

その2へ続きます)

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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