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そしてiPhoneは行く(2)

2007/06/30 12:10
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プロフィール

クロサカタツヤ / KUROSAKA, Tatsuya

インターネットや通信、放送サービスが大きく変容する中、産業、政策、技術開発等の最新動向や、情報通信サービスと社会の関係性を考える上での「新たな視点」を、さまざまな分野でコンサルティング活動をしているクロサカタツヤ氏がお届けします。
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前回からの続きです。

Safariエコノミーを作れるか
一方、コンテンツのラインナップも大きな課題だ。特に、iPhone版Safari対応のコンテンツを作るコンテンツプロバイダがどこまで広がるか、つまり「Safariエコノミー」をどこまで作れるか、が当面の成否のポイントになろう。

このように書くと、「CHTMLを前提としたiモード等と違い、iPhoneなら普通のインターネットコンテンツが利用できるのでは?」と思われるかもしれない。しかし現実のWebサイトは(その善し悪しは別にして)多くがInternet Explorer対応を前提に作られている。最近はIEのシェアもやや低下してはいるが、とはいえFirefoxが意識されつつある程度だろう。Mac版での印象だが、Safariでアクセスできないサイトは少なくない。

iモードはそのあたりを入念に準備した。彼らは決して「ぽっと出」ではなく、「どのコンテンツを調達すれば世の中に訴求するか」を考えながら調達や開発を進めた(このあたりは松永真理氏の「iモード事件」に詳しい)。iモードの成功はコンテンツだけでなくメールの普及によるものが大きいと思っているが、とはいえメールだけでも成功はしなかっただろう。

従って当面のコンテンツ・ラインナップは、googleがどこまで対応してくれるかにかかっている。googleとしても、iPhoneのユーザをごっそり手に入れられるのだから、悪いディールではないし、一応本気で対応してくるだろう。またAppleはAppleで、Windows版のSafari提供に着手するなど、Safariエコノミーの拡大を狙っているようだ。

ただ、これだけでは早晩物足くなるように思う。というのは、google中心でコンテンツ開発を進めるという姿は、たとえば日本のiモードが当初DoCoMo中心でコンテンツ開発を進め、いわゆる「公式サイト」と「勝手サイト」と区別した姿と相似に見えるからである。またさらに言えば、googleにコンテンツを依存するということは、Appleがコンテンツ調達のハンドルを当初から緩めることにもなる。いくらgoogleのシュミットCEOがAppleの社外取締役になったとはいえ、このスキームを御していくのは簡単ではない。

現在の日本のケータイコンテンツは、「公式サイト」と「勝手サイト」という区別があまり有意ではなくなっているように思う。そこから考えると、Appleとしては「googleに協力を依頼しつつ、どうgoogle依存の状態から脱却するか」という、相反する二つの課題を同時に解くことが求められるだろう。言うまでもなく、困難な道のりである。

AppleはPDAを作るのがヘタ
最後に、これは私の主観に近いのだが、AppleはPDAを作るのがうまくないと思う。というのは、これまでも何度か失敗しているからだ。その失敗の記憶が私の中にはまだ残っている。

一つはNewtonである。まだintelの手に陥ちる前のARMプロセッサを積み、手書き認識機能と優れたユーザインターフェースを備えた魅力的なPDAだった。ただ、PDAというにはあまりに大きすぎかつ高すぎたこと、PCなど他の機器との連携が不得手だったこと、またApple自身が混乱していたこと(ジョン・スカリーやジャン・ルイ・ガゼーといった懐かしい名前が思い出される)で、結局頓挫してしまった。

もう一つ私の記憶にあるのはMagicCapだ。同プラットフォームを開発したGeneralMagic社にはソニー等も出資しているが、事実上Appleの活動の一つだろう。これも魅力的なインターフェースやTeleScriptと呼ばれる通信ベースの先進的なスクリプト言語を備え、単なるPDAの枠を超えた新しいサービスを予感させるものだった。多少無理はあるが、ユーザ自身がより積極的にシステムに介入できた原始的なSecondLifeといったところだろうか。しかしこれも実験で終わってしまった(実は私は日本での実験に少しだけ参加していた)。

これらの屍を思い起こすに、どうもAppleはPDA的なものを作ると、何か気負いすぎてしまうのではないか、という気がしている。その意味でiPodは、機能も限定的だしPCとの連携を前提にしているなど、比較的肩の力が抜けた開発だったか、あるいは力を入れるべきポイントがコンテンツやサービス側に振り向けられていたように感じる。もちろん意識的にそうしたのでなく、iPod開発時は「そうせざるを得なかった」のかもしれないが。

このiPodの成功要因(とそれ以前の失敗要因)がどこまでiPhoneで活かされるのかが鍵となると思うのだが、どうもiPhoneの開発を見ていると、少し力みすぎているような気がしてならない。それこそ、細かい設計は携帯電話でノウハウを持つ日本のメーカーと共同開発し、自身はインターフェース設計とSafariエコノミーの開拓に注力する、というくらいでもよかったのではないだろうか。

それでも期待はしている
以上、憎まれ口を並べてきたが、かくいう私もやっぱり期待しているし、楽しみでもある。Appleならではの洗練されたインターフェースの上で、googleが開発したアプリケーションが動く。これだけでもまずは十分楽しそうだ。

また、フルWebブラウザをシステムの標準アプリケーションとして採用したPDAないしはスマートフォンは、考えてみればこれがはじめてのような気がする。iモード端末でもフルブラウザはオプション的な位置づけだし、PocketPC端末のシステムはよりPC的に設計されているわりに完全なフルブラウザとは言い難い。そう考えると、ブラウザをベースに作り込まれた情報端末というのは、インターネットへの新しいアクセスデバイスとして、案外「古くて新しい」スタイルなのかもしれない。

それに、やや行き詰まりつつある世界中の携帯電話市場に、何らかの揺さぶりを与えてくれるような気もしている。それこそiPhoneがWebサービスの携帯電話での利用を牽引し、「ケータイネット2.0」とでも言うべき新しいスタイルを提示すれば、4GやWiMaxなど次世代無線インフラの動向に何らかの影響を与えるだろう。そうしたイノベーションの呼び水になる(あるいはその登場を呼び起こす)気がするのだ。

iPhoneの普及で新しいネット利用のスタイルが広がるか、そこへ至る前にサプライサイドが躓くか、あるいはまったく異なるプレイヤが登場する呼び水となるか。結果が出るのはまだ先だが、いずれにせよユーザが鍵を握っているのは間違いない。そして日本に暮らす私は、ちょうどグロリアN号を見送る埠頭の群衆のような気分である。今後の展開を注意深く見守りたい。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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