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CNET Japan ブログ

あるネットワークの存在証明

2007/06/06 12:29
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プロフィール

クロサカタツヤ / KUROSAKA, Tatsuya

インターネットや通信、放送サービスが大きく変容する中、産業、政策、技術開発等の最新動向や、情報通信サービスと社会の関係性を考える上での「新たな視点」を、さまざまな分野でコンサルティング活動をしているクロサカタツヤ氏がお届けします。
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誰がNGNにカネを払うのか?
調べ物をしていたら、こんな記事(NGNの料金を家庭は払えるか?)を見かけた。インターネットに不満を持っていない現状のユーザが、果たして新たな付加サービスであるNGN(記事ではNTT-NGNに焦点を絞っている)にカネを払うのか?という論旨である。

予め断っておくが、この記事を批判する意図は毛頭ない。現状のインターネットと単純に比較する限り、ある側面を的確に表現している。それに、そもそもNGNに関し正確な記述ができるほどには情報が公開されていない以上、いろいろなものと比較してこうした懸念が示されるのもむべなるかな、である。

ただ記事を読むことで、やはりNGNは一般に根本的な部分で誤解されているところがあるのだろうな、とも思った。特に、NGNについての情報を得ていない市井のユーザにとっては、さっぱり分からない代物となっているのだろう。

誰がどの財布からお金を払う?
端的に私が一番気になったのは、NGNを既存のインターネット・サービス(回線サービスとISP利用)と比較している点だ。確かにインターネットを利用するインフラとしてNGNを考えれば正しい比較なのだが、NGNはそれだけのものではない、というより当初の目的はそこにはない。

以前のエントリでも書いた通り、NGNが第一義に目指しているのは「電話網のリプレイス」だ。これは回線交換機のメンテナンスの限界や同分野のエンジニアの減少に起因するものであり不可避である。「がんばって使い続ければいいだろう」という次元ではもはやないのだ。実際、NTTだけでなく世界中の電話会社がNGN対応を進めていることからも、その事情は理解できる。

従って、まずNGNが狙う「お財布」は、インターネット・サービス周辺ではなく、固定電話の利用料(加入権、利用料金、通話料あたり)となる。すなわちNGNで音声電話を利用する「だけ」なら、新たな支出が必要ということではない。とはいえもちろん、NGNにかこつけた何らかの値上げは考えられるが。

一方、NGNでインターネット・サービスを利用する場合は、現状でFLETSの利用に支払っているあたりの費目が「お財布」となろう。正式にはアナウンスされていない(というあたりが混乱を招いている)のだが、提供されるサービスの近似性から察するに、おそらくNGNのサービスをスタートさせた後は、FLETSはNGNに吸収されていくと思われる。

いずれにせよ、NGNの利用で必ずしも「通信サービスへの新たな支出」は必要なく、既存の固定電話サービスやインターネット・サービスに支払っている料金を移行させればNGN利用は賄えることになりそうだ。

最大の敵は身内という可能性
しかし、果たして本当にそう目論見通りいくのか、私は少し怪しいと思っている。というのは、固定電話のリプレイスのユーザが果たして素直に応じてくれるか、と考えているからだ。

すでによく知られているように、固定電話の加入者数は基本的に減少トレンドにある。確か人口統計でも世帯数のピークが今年か来年あたりで、以後は人口だけでなく世帯数も減少していく。従って減少スピードの違いこそあれ、再び増加トレンドに変わることはおそらくないだろう。

加えて、携帯電話がここまで普及しきった現在、固定電話に加入する意味はどんどん希薄化している。たとえば我が家は共働きの二人暮らしだが、平日日中はほぼ外出、夜も帰宅は遅く、固定電話よりも携帯電話の方が理にかなっている。またかつては固定電話の電話番号が身分証明の一つだったが、携帯電話番号だけで困ったことはここ数年ほとんどない。

こう考えると、NGNへの移行のタイミングで「そもそも固定電話って必要なんだっけ?」と考え始めるユーザは、少なからず存在するはずだ。そしてその時、そもそもNGN以外の接続サービス(他キャリアのサービスや携帯電話/無線ベースのものなど)でも十分かつコストメリットが高い、と判断した場合、NGNの普及は必ずしも順風満帆とはいかなくなる。たとえば身内(の一つ)である携帯電話に足下をすくわれてしまう可能性も十分ある、ということだ。

もっと正論を主張すべき
とはいえ、世の中から固定電話が消えてもいい、というわけは当然ない。である限り、前述の通りNGNは必要なものである。ましてNGNはインターネットを含むデータ通信網の欠点を克服するサービスの一つとなりうる。よく分からないから、あるいは現状で必要性を感じないから、といって否定ばかりしているわけにはいかない。

むしろ私は、こうした「必要性」をキャリアは堂々と全面に押し出すべきだと思う。必要だと考えるならそれを作り提供するのは企業の義務だし、その必要性をユーザに理解してもらえないなら、理解を得るための努力はいくらでもすべきところだろう。サービスやビジネスモデル設計、あるいは投資計画は、そうした結果として出てくるもののはずだ。

また、特にNTT-NGNに関しては、いくつかの課題(たとえば光ファイバの投資をいかにNGNで回収するか、そのためにどのようなアプリケーションをどのような手順で提供していけばいいか、等)を同時に解決しようとし、その結果隘路に入っているように見える。通信インフラという「息の長い」ものでもあり、もう少し「ユーザが必要とする通信サービスとは」というそもそも論に立ち返ってもいいのではないか、とも思う。

…と、最近なんだかNGN話ばかり書いているような気がするが、別にキャリアの回し者というわけではないし、私自身はNGNを好きでも嫌いでもない。ただこのNGNには「社会において技術(情報通信技術)はどう位置づけられるべきか」という重いテーマが潜んでいるようなな気配を感じていて、どうにも気になるのである。このあたりはいずれどこかで整理したいと思っている。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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