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フレッツの事故に寄せて

2007/05/16 14:24
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プロフィール

クロサカタツヤ / KUROSAKA, Tatsuya

インターネットや通信、放送サービスが大きく変容する中、産業、政策、技術開発等の最新動向や、情報通信サービスと社会の関係性を考える上での「新たな視点」を、さまざまな分野でコンサルティング活動をしているクロサカタツヤ氏がお届けします。
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●フレッツの事故
昨晩(5月15日夜)、NTT東日本の「フレッツサービス」および「ひかり電話」が長時間にわたって停止するという事故が発生した。現時点ではすでに回復しており、原因もNTT東日本自身の説明によれば

5.原因

IP伝送装置(弊社ビル内に設置しているルータ)のハード故障に伴うパッケージ交換により、弊社IPネットワーク内の全IP伝送装置で、ルート情報の自動書き換えが行われますが、この際、処理可能な量を超えるルート情報が発生したため、連鎖的に多くのIP伝送装置において、処理能力オーバーとなり、IPパケットの転送処理を自律停止したものです。

すなわち「レイヤ3スイッチのリプレイスに伴い経路広告が何らかの理由で爆発し、経路制御ができなくなったもの」と概ね特定できているようだ。現在は経路情報を減らしてスイッチの安定稼働を図っているとのことである。

●影響は深刻だがよくあること
上記から判断する限り、先日のエントリで触れた昨秋のひかり電話の事故とは性質が異なる。前回がひかり電話の構造に起因する「ひかり電話だけの事故」だとすれば、今回はネットワークそのものの構造に起因する「フレッツ全体の事故」であり、ひかり電話を含むほとんどすべてのサービスが停止した。

その意味で事態はより深刻なのだが、実はこうした事故自体はそれほど珍しいことではない。というのは、すでにIPv4インターネットでは世界的に経路爆発とそれに伴う経路制御の崩壊を起こしつつあるからだ。この認識は近年研究者の中ではコンセンサスとなりつつあるし、それに向けた検討もすでに始まっている

今回の事故はNTT東日本という巨大なサービスプロバイダの単一ネットワークで起きたことで影響が広がったが、同様の事故は世界中のあちこちで起きている。そして事故のたびに原因を検証し、スイッチのソフトウェア設計に反映させたり運用ノウハウを蓄積してなんとか乗り切ってきているのが、今のインターネットの姿である。実際今回の事故も、影響の大きさのわりには数時間で完全復旧している。これまでの蓄積の賜物といえるだろう。

●そもそもの無理がそろそろ出てきている?
気がかりなのは、そもそも地域IP網(フレッツ網)のトポロジ(網構成の基本的な構造)とインターネット技術との相性である。

地域IP網は都道府県(行政上の都道府県とは必ずしも一致しない)毎に存在し、地域IP網に各利用者とISPが接続されて、インターネットへのアクセスが可能になる。地域IP網は元来NTTの内部ネットワークであり都道府県内の電話局間通信に利用されていたが、インターネット用として外部接続(ISPの接続装置設置)を許可した経緯があり、その際にサービス名称へ「フレッツ」を冠した。そのため、地域IP網を(NTT自己利用以外の)インターネット回線として利用する形態を指し「フレッツ網」と呼ぶ場合がある。

Wikipedia:フレッツ

上記の通り、地域IP網は当初は、NTT東西に課せられた規制の関係上、都道府県ごとに構成されたネットワークだった。これは、NTTの電話網(回線交換網)がもともとそういう構成で構築されていたことに起因する。その後、2003年に総務省の認可を経て県間接続が可能となり、現在は広域網として構成されている。

こうした「県を一単位とし、県同士でつながる」という構造は、特に47もの数を有する日本の都道府県構成を前提にすると、相当複雑なトポロジとなるはずだ。一方インターネットは基本的に「使いたい人同士が接続する」ことを前提としており、そのトポロジも需要が多く集まるところを中心とした構造(スター型に近い)になりやすい。実際日本のインターネットトラフィックの過半数(特に東日本のほとんど)は、東京のIX周辺に集中している。

この両者を比較すると、トラフィックの集まり方や捌き方、パスの構造、隣のノードと共有する情報の内容や伝達方法など、それなりに異なっていることが分かる。もちろんまったく違うわけではないし、前述の通りある程度は運用で吸収できているのだが、ここまで成長してくると「そろそろ危険かな」という気配も感じる。

●NGNに与える影響
今回の事故がNGNの開発に与える影響は、正直まだ分からない。というのは事故の詳細もNGNの仕様も明らかになっていない以上、比較しようがないというのが正直なところだ。

ただ、NGNが回線交換網のリプレイスだとすると、回線交換網のトポロジ(すなわち地域IP網のトポロジ)に近似することになるだろう。とすると、やはりNGNでもトポロジとインターネット技術のミスマッチが生じる可能性は否定できない。

もちろん、それゆえに回線交換の考え方と親和性のあるIMSという技術でトラフィック制御を行おうとしているのだろう。しかしそうすると冒頭に触れた昨秋の事故のように、IMSそのものの信頼性が問われることになる。このように考えていくと、NGNは技術的にもなかなか悩ましい状況にあるように思えてしまう。

いまや通信はライフラインの一つであり、ゆえにNGNを推進しなければならない理由もある程度は理解できる。であるからこそ、今回の事故も含め、より詳細な検証と情報公開を改めて希望するところである。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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