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NGNについて考える(1)

2007/04/28 04:31
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プロフィール

クロサカタツヤ / KUROSAKA, Tatsuya

インターネットや通信、放送サービスが大きく変容する中、産業、政策、技術開発等の最新動向や、情報通信サービスと社会の関係性を考える上での「新たな視点」を、さまざまな分野でコンサルティング活動をしているクロサカタツヤ氏がお届けします。
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ワインとブランデー
「情報通信インサイト」と銘打ちながら、当初の言い訳通りあちこちに話題が発散している。この傾向は今後も続くと思われるので引き続きご容赦いただきたいが、たまには情報通信に直接関係する話題を一席。

NGNに関する問い合わせを受けることが増えてきた。問い合わせの内容をうかがっていると、NGNという言葉以外はさっぱり分からず、とりあえずインターネットの親戚のように考えているけど…という方がかなり多い。それこそインターネットのエンジニアの中にも、なんだかよく分からない、という方は少なくない。

インターネット由来の技術を中核に据えていることもあり、公開情報を断片的に眺めるとどうにもインターネットとの違いが見えにくい。しかし同じ葡萄からワインとブランデーができるように、ルーツが同じだけで両者はまったく別物である。というのは、NGNがインターネットと異なるアーキテクチャのネットワークを目指しているからだ。

ワインのつもりでブランデーを勢いよく飲み干すと、おそらく悪酔いを起こすだろう。こうした自体は悪酔いした本人のみならず周囲にとっても災難である。そこで、問い合わせを受けた質問を集約し、簡単にまとめ、さらに私なりに少し考察を試みる。とはいえ正直なところ私自身もNGNの専門家ではないので、間違っていたらぜひツッコミを入れていただきたい。

#なお、一部文中で「80%、20%」等と表現しているが、これは私自身の恣意的な評価であることをご留意いただきたい。

●インターネットとの違い
【Q1】NGNはインターネットの次世代版なのか?
80%がNo(次世代版ではない)、20%がYes。

インターネット由来の技術(特にIPとSIP)を基盤として用いており、その意味ではインターネットの親戚ではある。ただアーキテクチャや運用の考え方はまったく異なるし、それゆえ作られ方も全然違う。インターネットの基盤技術を現代風に解釈しているという意味では次世代インターネットという解釈も成立しなくはないが、継承されているものが少なく、実際は別物と考えるべきだろう。

最も異なるのは、インターネットが自律分散管理型のネットワークであるのに対し、NGNは集中管理型のネットワークである、という点である。よく「インターネットは世界中のネットワークの寄り合いであり、絶対的な特定の管理者がいない」と言われるが、反対にNGNは各国の通信キャリアが自らの意志で作るネットワークであり、構築主体である通信キャリア自身が絶対的な管理者となる。

実際NGNは、そうした管理体制こそが信頼の源泉だという考え方で技術規格も作られており、その指向性に沿って実装が進んでいる(技術的な整理は以前個人Blogでまとめているのでそちらも参照されたい)。

【Q2】NGNはインターネットと違うネットワークなのか?
80%がYes(違う)、20%はNo。

前述の通り、アーキテクチャや運用方法はまったく異なる。また現在NTTを中心に作られているNGN(以下NTT-NGN)は、セキュリティや競争力維持の観点から、おそらくインターネットと水平的に相互接続されることはない。

平たく言えば、「NTT-NGNサービスを自宅に導入しただけでは、GoogleやYouTubeにはアクセスできないだろう」ということである。もちろん彼らが(インターネット向けとは別に)NTT-NGN向けサービスを提供すれば話は別だが、データアクセスの問題や多重化による事業効率の悪化等もあり、現実的には難しいはずだ。

ただし、NTT-NGNをインフラとし、その上にインターネットサービスを提供することは可能である。ちょうど地域IP網(フレッツ)とインターネットサービスのような関係であり、すでにOCNが実証実験を開始している。その意味では、インターネットがNGNをインフラとして利用する、という形での合体はありうる。

【Q3】NGNはインターネットのような国際ネットワークなのか?
90%がNo(国際的なネットワークではない)、10%がYes。

技術規格はITU-Tや3GPP/3GPP2等の標準化団体で国際的に規格化されているが、それを実装するのは各国の通信キャリアであり、彼らなりの実装方法に委ねられている。従って基本的にはそれぞれ独自のNGNが構築され、各NGNで相互接続性はない。また、ネットワークレベルで何らかの互換性を維持するには、通信事業者間で詳細設計に合意しなければならないが、現状でそうした動きはあまり見られない。従って、たとえばNTT-NGN用の何らかのアプリケーションをインストールしたノートPCを持参して英国へ旅行しても、彼の地のNGNでは利用できないことになる可能性が高い。

もちろん、アプリケーションによっては、最低限の相互接続性が維持されるだろう。たとえば国際音声通話(国際電話)は、現時点でも相互接続できている(だから日本から米国にも中国にも自由に国際電話がかけられる)し、維持されなければ困る。また前述のとおり通信キャリアによってはインターネットとの相互接続を行う事業者も登場するかもしれない。ただ一般的には、それこそ「インターネットサービスさえ受けられればいつでもどこでもメールが書ける」といったレベルでの相互接続性は、NGNの考え方からしても困難だろう。

●NGNと通信キャリア
【Q4】NGNはNTTだけの取り組みなのか?
前述の通り、NGNはそもそも日本だけの取り組みではない。海外という意味では、そもそもNGNを提唱しはじめたのはブリティッシュ・テレコム(英国)であり、その後欧州の通信キャリアを中心に同様の取組みを進めている。NGNが3GPP/3GPP2やETSIなど欧州主体の団体により標準化が進められていること、また欧州系のベンダが比較的大きなプレゼンスを有しているのも、そのあたりが背景にある。

日本国内でも、3大キャリアはそれぞれ独自の考え方でNGN(あるいはそれに類するバックボーン)を構築している。この考え方の違いはそのままアーキテクチャやインターネットとの相互接続の違いとして顕在化する。たとえば、前述の通りNTT-NGNは水平的な相互接続しないが、KDDI-NGNは何らかの制限をつけた上で相互接続する可能性はあるかもしれない。またソフトバンクは以前から整然とした独自のインターネットバックボーンを有しており、「NGN=閉鎖網」という意味でのNGNは必要ない(セキュアな通信が必要なら同バックボーンを活用しVPN等を張ればいい)という考え方である。

【Q5】通信キャリアは何のためにNGNを構築するのか?
共通課題として挙げられるのは、現状の電話網(回線交換網)からのリプレイスが必要だということ。これはそもそも網が老朽化していること、またそれとの関連で回線交換網を維持するためのエンジニアが減少していることが理由として挙げられる。そしてこのタイミングでリプレイスするのであればアーキテクチャもより洗練させるべきだし、現状なら基盤技術にはIPを使った方がコストを削減できる、との判断から、インターネット由来の技術が採用された、ということである。

その上で、個別の通信キャリアの目的は、事業戦略やその背景がキャリアごとに異なるため、一概に論じることはできない。たとえばNTTであれば、光ファイバ整備等の投資を回収(収穫化)するために、よりアプリケーションに近い層での付加価値向上と事業効率化を狙っているだろう。一方KDDIは、固定系、移動系、IP系等のインフラ統合による投資効率の向上を目指していると考えられる。

…と、5問を終えたところにして早くも長くなってきたので、(2)へ続く

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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