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「日本の広告費」に見るネット広告のダイエットの必要性

2007/02/25 02:43
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プロフィール

クロサカタツヤ / KUROSAKA, Tatsuya

インターネットや通信、放送サービスが大きく変容する中、産業、政策、技術開発等の最新動向や、情報通信サービスと社会の関係性を考える上での「新たな視点」を、さまざまな分野でコンサルティング活動をしているクロサカタツヤ氏がお届けします。
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日本の広告費
先日電通が2006年の「日本の広告費」を発表した。メディア関連の議論はBlog界隈でも活発で、すでにいくつかの論考を目にされた方もいるだろう。例年この時期に発表される同統計は、実質的に唯一の国内広告に関するマクロ指標であり、経年比較もできるので信頼性は高い。

今年の結果を大雑把にサマライズすると、

・全体は伸びた
・マスコミ4媒体は2年連続ダウン
・SP(POP、屋外、交通等)は2年連続上昇
・インターネット広告費は前年比約30%増

といったところで、単純にこれだけを読むと「マスメディアが落ち、ネットが伸びた」という文脈が形成されがちだ。実際ネット広告費は各メディアの中で唯一派手な成長を見せている。

「マスメディア離れ」は起きていない
確かに集計されたデータを眺めているだけだと、そんな気分にもなってくる。しかし本当にそうなのだろうか、とユーザ側から見たマクロ統計であるNHK放送文化研究所の「国民生活時間調査報告書」を眺めてみる。こちらもスタンダードな手法で継続的に調査を行っており、同じく信頼性は高い。

すると、日常生活の中でマスメディアに接触する量(時間、頻度等)は、横ばいかせいぜい微減という程度で、むしろテレビの視聴時間に関しては増えていたりもする。5年に一度の集計なので直近の数字ではないが、インターネットや携帯電話がまだ今ほど普及していなかった1995年頃と比べても、メディア接触状況はそう大差ない。

すなわち、「ネットや携帯電話に喰われてマスメディアは後退した」という認識は必ずしも妥当でないことになる。もちろん年齢別に見た視聴行動の変化(若年層〜30代くらいでやや減少)や、紙媒体の売上の減少、また一部広告主による広告の社会に対する影響力低下の指摘等、注目すべき個別要素はいくつかある。ただ少なくとも、人々がマスメディアから離れているとまで言い切るのは、やや勇み足のように思える。

状況はすでに単純ではない
そもそも広告は、メディアごとの売上の増減を見ただけで議論できるほど、単純に整理できる状態ではすでにない。

たとえば広告手法に着目してみても、プロダクト・プレイスメント(番組や記事の中に広告対象を埋め込む方法)はどこに当てはまるのか。メディア連携(複数メディアをまたがるプロモーション)はどのように分類されるのか。このあたりは上記のデータから読み取ることはできない。

また、最近のTVコマーシャルを見ていると「続きはWebで」というメッセージと検索窓に入力するクエリがよく表示される。しかし単にWeb誘導しているだけでなく、最終的にその場で購入までできるような導線設計がなされているものも少なくない。こうなるとTVコマーシャルやコンテンツはいわば「チラシ」のようなものであり、ならばむしろSP費に含まれてもおかしくない。

実際、広告表現のうちどこまでがどの広告の区分に入るのか、あるいはさらに踏み込んでそもそも広告とは何なのか、という議論さえ生じている。少なくとも、これまで広告と区分されていた何らかの表現が、ビジネスのバリューチェーンの中でどう位置づけられているのか、という区分の再検討は、すでにあちこちで問われているところだろう。

広告の軽量化が必要かもしれない
ネットの登場が広告に与えた影響のうち最も大きいのは、新たなメディアができたことではなく、メディアの役割や機能の多様化を促し、既存メディアも含めた相対化が進んだことにあるだろう。実際、広告主のマーケティング戦略の再構築の流れの中で、SPも含めたメディア選択や、そもそも広告に割く事業リソースの比重が変化しはじめているという話はあちこちで耳にする。

もちろん、広告におけるマスメディアの役割や広告活動そのものがすぐゼロになるわけはないし、ある一定の役割は当分残っていくはずだ。ただその存在意義は、相対化の進展に伴って、従来よりも軽くなるだろう。そういう流れに抵抗する向きもあるかもしれないが、ネット広告が今後もシェアを増やし、相対化がさらに進むであろうことは、それこそ冒頭の「日本の広告費」からも明らかである。

ならば、それこそ消費者のメディア利用形態の変化がまだ大きくない今のうちに、むしろ広告は自ら軽くなる方向を目指した方が趨勢に合っている。具体的には、広告主はマスメディアに依存しない広告手段(あるいはそもそも広告に依存しないマーケティング手段)を、またメディアも広告収入に依存しない事業設計とその構築を、それぞれ目指すべきだろう。

ネット広告も少し「重く」なってきていないか
一方ぐるっと回って、そう考えるとネット広告はむしろその流れに逆行して「重さ」を増しているような気配を感じる。もちろんまだメディア自体が拡大する段階にはあるのだろうが、一方でネット上のメディアはそれこそ雑誌・新聞等よりも広告モデル依存を強めており、闇雲にページビュー獲得競争に走っているようにも見える。

消費行動やバリューチェーンにおける位置づけの変化が「ダイエット」を要請しているのに、メディア側の都合でその要請に逆行しているのだとしたら、やはり気持ちが悪い。そういうメディアはユーザから選ばれないだろうし、それこそ相対化が進んでいる以上、そこではマスメディアもネットもない。

だとしたら、ネット広告ももっと「軽くなる」ことがそろそろ必要なのではないか。それこそネット上のメディアも、既存メディアと同じように広告から少し距離を置いてみてもいい…あるいはそんな時期を迎えているのかもしれない。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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