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Windows Vistaとコンピューティングの近未来像

2007/02/13 22:47
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プロフィール

クロサカタツヤ / KUROSAKA, Tatsuya

インターネットや通信、放送サービスが大きく変容する中、産業、政策、技術開発等の最新動向や、情報通信サービスと社会の関係性を考える上での「新たな視点」を、さまざまな分野でコンサルティング活動をしているクロサカタツヤ氏がお届けします。
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Vista発売の静けさ
先月末にWindows Vistaが発売された。一部の店頭では行列もできたようだが、PC市場の過半数を支配するOSのバージョンアップにしては「静けさ」を感じるほどだった。確かに、そもそも新しいPCを買えば必ず入ってくるのだから、別に今騒がなくてもいい。それにもはやOSだけを取り上げてコンピューティングを云々する時代は終わりつつある。「OSの発売ごときでは盛り上がらない」というのは、いわば市場が成熟した証拠なのだろう。

実際、OSにはもはや意味がない、とまで言い切る意見もある。コンピューティングの中心はOSではなくネットに移行した、だからOSではなくネットの動きに注目すべき、といった論調だ。確かにOS層の動きに比べればアプリケーション層、特にネットを介してやってくるサービスの方が、ユーザからは活発に見える。そう考えればこの気分も分からなくはない。

しかし、OSは相変わらずコンピューティングで重要な地位を占めている、と私は考えている。またコンピューティングのスタイル全体が大きく変わらない限り、その地位は(相対的に小さくはなっても)当分は揺らがない、とも思う。むしろ、デスクトップサーチやウィジェットが話題になるということは、注目領域がローカルに回帰している、とも言えるだろう。

そんな視点でWindows Vistaの特徴を改めて考え直してみると、さすがにマイクロソフトはいろいろ考えているのだな、と気がついた。そもそもビル・ゲイツ氏が昨年6月、チーフ・ソフトウェア・アーキテクトの地位を、ロータス・ノーツやGrooveの生みの親であるレイ・オジー氏に譲った際、その舵は切られていたのかもしれない(昨年の引退発表時には、ゲイツ氏は同社を見限り、天才オジー氏にその軟着陸を任せたか、とすら思ったのだが、さすがに邪推に過ぎたようだ)。

コラボレーションへのシフト
以下の記述はあくまで私の解釈として読んでいただきたいのだが、今回のVistaとOfficeの発表には、今後のコンピューティング・スタイルを「コラボレーション」という方向に進めたい、というメッセージが込められているように思える。特にVistaのネットワーク機能の強化からはその意志が強く感じられる。

今回VistaはIPv6をはじめプロトコル・スタックを全面的に刷新し、またその機能を具体化したアプリケーションやSDKを開発・提供している。またトンネリング・サービスの強化など、VPN的環境でのサービス提供を意識した機能も拡充した。さらにOfficeのハイエンド版には前述のGrooveがバンドルされている。個別にはIPv6対応に関する連邦政府からの要望などもあったのかもしれないが、それらも含め、「誰と、どのように、つながり、また必要な情報を流通させるか」という問題意識を背景にした一連の開発・実装のように思われる。

もちろんこうした意識は同社だけのものではないし、むしろ同社はやや出遅れている。現在この領域の開拓を進めるトップランナーはやはりGoogleだろう。また他にも様々なソフトウェアを提供する企業・団体が存在する。さらに、比較的パッケージ化しにくい特性の商品を扱う通信キャリアやISPでさえ、VPNや閉域網サービスといった「コラボレーションの環境整備」という側面でのサービス開発を進めている。マイクロソフトとしてみれば、Vistaの開発に手間取るうちに、ライバルの先行を許してしまったことになる。

ローカルから世界をデザインする
とはいえマイクロソフトには、「ローカル中心主義」とでも言うべき、OSとオフィススイートというデスクトップ環境そのものを掌握する同社ならではのアプローチがある。すなわち、手元のデスクトップ環境を(ユーザにとっての)世界の中心とし、そこを起点にコラボレーション環境の構築や情報流通の制御を行うというものである。

このアプローチには競争力がある。というのは、ユーザにとって一番価値のある情報は大抵ローカルにあるからだ。これは経験的にも共感されるだろうが、結局のところユーザのコンテクストに結びついた情報こそがユーザにとって意味のある情報となる可能性が高く、今のところその置き場は圧倒的にローカルサイドなのである。

同社はこの「ローカル中心主義」に強みを見出してきた。Windows Live登場時に若干ブレを起こしそうな気配があった(しまだ一部はブレているようにも思える)が、さすがに軌道修正をかけたようで、現在はOSとWebサービスのシームレスな統合を目指して開発が進められているように見える。

実際、Webサービスの巨人となったGoogleですら、デスクトップ領域は制覇できていない。やはり現状ではサーバサイドとローカルサイドの間には、情報システムや業務プロセスの両方の意味で「溝」があるのだろう(だからGoogleはサーバサイドにユーザデータの移行を促そうとしており、これはこれで正しい戦略である)。こうした現実を一番素直に実装できる同社は、その善し悪しはさておき、相変わらず強い立場にある。

マイクロソフトの全方位戦略
一方で同社は、VistaというデスクトップOSを橋頭堡に、アプリ(Office)、ネットサービス(Windows Live)、モバイル(Windows Mobile)のそれぞれをまんべんなく強化する、いわば全方位戦略を仕掛けつつある。たとえば下図のような整理ができるだろう(この軸がそもそも正しいのかは要検証という留保付きで見ていただきたい)。

要は「利用環境の開閉」と「用途の開閉」というマトリクスである。たとえばこの整理だと今のところ同社は右側の象限の領域(つまりプライベート用途)に強みを有しているように思える。

その立脚点から、たとえばオープンな利用環境でのサービス提供(上方向)を目指せば「Officeの機能のSaaS型提供」になろうし、反対に閉じた利用環境(下方向)であればVistaのプロトコル・スタックの機能を活用した「インターネットVPNの簡易的な提供」となる。また第2象限方向はWindows Liveが進出し、第3象限はWindows Mobileと認証サービス(おそらくパスポート)によって抑える。

すなわち、概ねどの方向にも展開可能であり、こうした展開シナリオが書き下せることからも分かるように、すでに全方位に布石が打たれているのである。こうなると、やはり同社は相変わらずしたたかだったのだな、と思わざるを得ない。

もちろんこれは大まかな戦略レベルの(しかも私が勝手に想像した)話であり、それらの領域へどう橋をかけるかが本当の課題となる。実際このマップにも書き加えたとおり、目指すべき領域にはそれぞれ(同社でも買収不可能そうな)強敵が待ち構えている。これが同社にとってこれまでのオペレーションとは最も異なる点であり、今後相応の戦いが必要になるのは間違いない。

その時の旗印として、今回は「ローカル中心主義」や「コラボレーション」を選んだのだと、私には思える。それが果たして正解だったのかは歴史のみぞ知るといったところだが、少なくとも「コンピュータって本当はもっといろいろできるんじゃなかったっけ?」と思い始めているお気楽な一ユーザとしては、来るべき競争の中から、結果として様々な機能やアイディアが出てくることは、純粋に楽しみである。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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