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情報共有 - 「自分のこと」を「あなたと私のこと」に変える方法

2005/07/23 17:41
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kondo

人力検索やダイアリー、アンテナなどユニークなサービスでおなじみの「はてな」。そんなはてなを率いる近藤淳也氏が、ネットのコミュニティやサービスのあり方について独自の視点で切り取ります(このブログの更新は2006年2月9日で終了しました)。
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はてなは「運営者」と「ユーザー」が対話を行うユーザー参加型のコミュニティである、といった文脈で雑誌などに取り上げて頂くことが多くなっています。

確かに、「はてな社内」と「はてな社外」の情報共有について、ユーザーからの要望によって色々な機能を追加したり、社内会議を音声で公開したりといった色々な取り組みを行っているのは事実です。

しかし、社内と社外の情報共有を行うには、その前に必ず「社内の情報共有」とか「社員のコミュニケーション能力の向上」という問題を解決しなければ、なかなか前に進むことはできないと感じています。

はてなは創業時は2人でしたので、その頃にさかのぼって少し順を追って情報共有について考えてみたいと思います。

まず各個人のコミュニケーションについて。

例えば僕は、夫婦ではてなの仕事をしていることもあって、仕事の話をはじめ、あらゆる話を夫婦で共有しています。

昼間は会社で仕事をして、夜に家に帰る。妻と晩酌はして軽く世間話をするけど、会社の仕事の話はあまりしない、そういう家庭もあるのではないかと思いますが、今のところはてなではそういう社員は多くないようです。どちらかと言えば、家でも仕事の話をして、社員の飲み会には友人や家族も参加する、というケースが増えています。

自分自身は創業時は夫婦で会社を立ち上げましたので、仕事の話を夫婦でする、しない、というようなことは問題にすらなりませんでしたが、はてな創業の前に別の仕事をしていた時も色々と仕事の話を家庭で共有していましたし、自分が最近何に夢中になっているのか奥さんはよく知らない、という状況はあまり想像できません。

こんなことはあまり仕事と関係が無い気もしますが、親しい人間とどのようなコミュニケーションを行えるかは、それより大規模な組織やシステムでの情報共有の成功に関係する問題だと感じています。

つまり、情報共有を行う力の源泉を突き詰めていくと、最後には個々人のコミュニケーション能力や考え方に行き着くわけです。もちろん何でもべらべら話せばそれで良いというわけではありません。共有するべき情報を、積極的且つ適切に相手と共有する能力がとても大事だと思うのです。それには、日頃から上手にコミュニケーションを行えるよう努力を続ける事が大事だという気がします。

本当は話しておいた方が良い内容を、恋人や家族にも詳しく話したがらない人が、他の社員や自社製品のユーザー、社会と積極的に対話を行い、情報を公開していくことができるかというと、そういう切り分けはやはりなかなか難しいのではないかと思います。

例えば恋人との待ち合わせに15分遅れた場合の会話を考えて見ましょう。

A「悪い、遅れちゃった」

B「ちょっと、遅いじゃないの。なんで15分も遅れるのよ」

A「ごめんごめん。」

B「なんで遅れたのか説明してよ」

A「悪かったよ。ごめんって謝ってるじゃないか!」

B「遅れておいてその態度はなによ…」

例えばこんな感じで喧嘩が始まってしまったとします。さて、いったいどういう会話が良かったのでしょうか。

こういう時には、できれば、

B「ちょっと、遅いじゃないの。なんで15分も遅れるのよ」

A「ごめん。駅に着いたときに財布を忘れたことに気づいて家に一度戻ったんだ。忘れ物をした僕が悪かった」

B「まったくドジねぇ」

くらいで終われたら良いな、と思います。よく考えてみると、「なぜ遅れたのか」というWhy?の質問に対して、「ごめんごめん」では説明になっていません。その間に本来必要であるはずの対話が2、3抜けてしまっている感じがします。こうやって相手が納得できるように説明ができると理想的だと思います。

ところでもし遅れた理由が、「昔の彼女から電話がかかってきた」という理由だったらどうでしょう。この理由は次の喧嘩の理由になる可能性もあって、できれば触れたくない、なんていう場合です。

B「ちょっと、遅いじゃないの。なんで15分も遅れるのよ」

A「ごめん。家を出る前に実家の親から電話がかかってきてなかなか切れなかったんだ」

と答えれば、その場はうまく収まるかもしれませんが、あとでもっとややこしい状況に追い込まれる可能性もあります。ここもできれば、

B「ちょっと、遅いじゃないの。なんで15分も遅れるのよ」

A「ごめん。家を出る前に昔の友達から電話がかかってきてなかなか切れなかったんだ」

くらいにしたいものです。最初の例は明らかに嘘ですが、後者は嘘を言っているわけではありません。ただし後者には、

B「その昔の友達って誰よ?」

A「いや、前の彼女から…」

B「あなたまだあの娘と連絡取ってるのね!(怒)…」

という展開になる可能性があります。(こうなったらもう仕方が無いですね。嘘を言うよりはましだと思うほかありません)
また、最初の財布を忘れた例にしても、

B「財布はいつもかばんに入れるとかしておいたら?」

みたいな意見を受ける可能性があります。

こうした意見が出るのは、Aさんが遅れた理由を話したことによって、「Aさん個人の問題」が、「AさんとBさんの問題」に変化したからです。

「なぜ遅れたか」という情報を共有したことで、個人の問題が二人の問題へと変化したのです。これは、2人だけでなく、3人、4人と人が増えても同じです。

こうして見ると、情報共有とは、「自分のこと」を「多くの人のこと」に変える方法である事に気づきます。

はてなで実際にありそうなケースに置き換えてみましょう。例えばハードディスクのエラーでサーバーが停止してしまったためサービスが30分間停止したとします。サイト上の障害報告で、

「さきほど、はてなダイアリーの機能が30分ほど停止しました。申し訳ございませんでした。」

と書く場合と、

「さきほど、はてなダイアリーの機能が30分ほど停止する障害が発生しました。これは、はてなダイアリー内の日記データを保存するデータベースサーバーにおいて、ハードディスクにエラーが発生した事によるものです。現在、この障害はハードディスクの交換により修復しております。申し訳ございませんでした。

と書く場合を比べると、さきほどの待ち合わせの場合と同じように、後者の方がユーザーに理解されやすいと思います。

しかし、こうした情報を公開することで、「はてなダイアリーはハードディスクが1つエラーを起こしただけで止まるのかよ」とか、「ハードディスクを冗長化してRAIDにしてないなんて、おかしくないですか?」といった指摘を受ける可能性が出てきます。

情報を共有することで、「社内の問題」が「社内とユーザーの問題」に置き換わってしまいます。

例えば理由がハードディスクなんかじゃなくて、間違ったSQL文でデータを消してしまった、という理由だったらどうでしょうか。少なくともミスを犯した当事者はあまりそれを言いたがりません。

こういう時でも、せめて

「データベース操作時のミスにより、一時的にサービスが停止しました」

という説明はしたいところで、決して、

「データベースサーバーのハードディスクエラーにより、一時的にサービスが停止しました」

などという嘘を言わないようにしたいものです。

最初の待ち合わせの会話で理由をきちんと説明できないような人や、すぐに嘘をついてしまうような人では、実際に仕事をする上でも適切な情報共有を行うのは難しいと思うのは、この2つのケースの時の心理状態がほとんど同じだと思うからです。

自分自身、コミュニケーションはとても下手くそなのですが、できれば先ほどの例のようなうまい説明をいつもできるようになりたいと思っています。

問題に関する情報を嘘をつかずに誠実に伝え、その結果想定される批判やトラブルについては自分の責任の上で処理をすることを受け入れる、そういうことがいつもできるようになりたいものです。

社内では各社員が常にこうしたコミュニケーションを、必要以上に感情的になったりせずに行えるように、少しずつ心がけていければと思っています。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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