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マスコミよ、来たりし大津波を記憶に留めん

2011/04/05 03:10
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プロフィール

寺本由美子

本名とタイトルのペンネームが異なっているのはご愛敬(話せば長~い物語あり)。IT系の話題からゲームのレビューまで、自由気ままに発信します。iPadやiPhoneなど、大好きな電脳小物についても熱く語りたいですね。Twitterにも出没中。ブログへのコメントも、@kirifue へどうぞ。
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YouTubeで津波発生直後のNHKのTV中継を見た。地震時は会社にいたし、帰宅後も翌朝まで停電していたので、生中継の映像を目の当たりにしたのは初めてだった。道路を走っている車が家が、次々と濁流に流されていく。目を覆うばかりの惨状であった…。

主だったYouTubeの映像は削除されてしまったが、以下のNHKのサイトから映像を見ることができる。残念なことに編集されているので、時間の経過と共にどのように津波が広がっていったのかを確認することはできない。
ページの下の方にある「津波の様子(青森・岩手・宮城)」「津波の様子(宮城県名取市)」「津波の様子(岩手県釜石市)」の三つは必見。

■NHKニュース
東日本大震災

 

ごく最近まで、津波では大きく海の水が引き、その後で見上げるばかりの大波が一気に襲ってくるものだと思っていた。それが常識だと。だが、スマトラ島沖地震での津波の映像を見てからは、それほど大きな波でなくとも被害は出るのだと知った。少しは津波のことが分かった気になっていた…。

現実はそんな甘いもんじゃなかった。ある場所の映像では、ジワジワと水が溢れてくる感じだった。アナウンサーも当初は「津波が押し寄せています」とは言わずに、「水が(川を)逆流してきています」「海水が溢れています」というようなヌルい表現を使っていた。しかし、その破壊力は凄まじく、みるみるうちに車や船や建物までをも飲み込み、押し潰しながら流し去った。津波の第一波は海岸から何キロも離れた場所にまで到達した。

ラジオでも、このような生々しい放送が行われたのだろうか。テレビは停電になれば見ることができない方がほとんどだ。ラジオこそ、闇雲に「大津波警報です。高台に避難してください」と叫ぶだけではなく、より具体的な状況を流した方がいいのではないか。津波が内陸のどの辺りまで到達するかの予想は無理でも(これはテレビとて同じか)、例えばテレビ放送を見ながら実況することで、聴いている人が危険を再認識できるかもしれない。

例えば、こんなふうに。

「大津波が堤防を越えて、家や車を押し流しながら進んでいます。平野部のどこまで到達するか分かりませんが、あまねく行き渡る恐れもあります。海岸から数キロ以上離れている方も、ただちに高い所に避難してください」

これこそ「ただちに」の正しい用法である(「ただちに影響は無い」などといつ影響が出るのかをウヤムヤにするために使用するのは誤り)。大津波が来ると頭では理解しているが「ここまでは来ない」と自分や家族や社員に言い聞かせている人でも、津波の様子が目に浮かぶような放送があれば避難を決意するきっかけとなり得る。

これも後で知ったのだが、テレピの民放各社の初期対応には呆れた。NHKはいち早く緊急地震速報を出し、発生後は即座に特別放送に切り替え、各地の中継や津波警報を表示した。それに引きかえ民放は、CMに突入したため緊急地震速報すら流さず、津波警報を表示したのも地震発生から数分後というお粗末さ。スポンサーと視聴者と一体どちらが大事なのだろう。答えは明白か。発生後にCMを自粛してもしょうがないのだ。ちなみに、この放送エリアは関東地域であるが、千葉県民や茨城県民の存在をどうか忘れないでほしい。それとも、エリア外ということで、緊急地震速報の情報が各局に伝達されていなかったのであろうか。東京でもかなり大きな揺れのある地震だったと聞いているので、これはこれで大問題だ。

■YouTube
東北地方太平洋沖地震発生時の全テレビ局同時マルチ映像

 

津波のあまりにも悲惨な映像がTVで流れなくなったのは災害に遭われた方々への配慮だと思うが、年月が経過したら特集を組むなどして繰り返し放送するべきだ。二度と同じ悲劇が起こらないよう、後世に伝えるために。それは、古の昔より津波に襲われて九死に一生を得た人々が、その土地に津波に由来する地名を付けたり、津波がここまで到達したという証に石碑を建てたりすることと同意義である。

そう、津波が押し寄せた場所でも、早期に避難してさえいれば救われた命もある。離れていればいるほど、津波の到達には時間がかかるからだ。海岸から離れているから大丈夫だ、まさかここまでは来ないだろうという誤った認識。堤防があれば万全という過信。停電していても携帯ラジオがあれば大津波警報は聴けたはずだし、防災放送や警報が発せられていた地域も多いはずである。が、それでもなお、自分のいる場所だけは安全だと思い込んでしまう。

そんな見当外れの解釈も知識も安心も、これらの映像を見れば一発で覆すことができるだろう。少なくとも「海岸や川べりから離れれば安全」などと考えることはないはずだ。

地震の被害はどうしようもない場合もある、残念ながら。しかし、津波では人的被害を抑えることが可能だ。今後は高台を造成して住宅を建て、防波堤の強化や避難所の設置、津波発生時の効果的な避難誘導方法、テレビ/ラジオの放送内容の改善など、大津波に対して事前にできうる対策は何でも行う。そして、一番大事なのは、次の教訓が周知徹底されることに尽きる。子々孫々にわたって…。

大地震が起きたら、津波警報が出たら、ただちに高台に避難するべし

 

現在、津波の予想は到達地域と波の高さだけだが、事前にどの程度の高さの波ならば内陸のどの辺りまで到達するのかを計算しておけば避難の目安となるのでは。…とフト考えたが、波の強さや地形も関係してくるので、現代の科学では予測できるほどの精度は得られないのだろう。科学や技術が万能でない以上、経験や歴史から学び、災害に備えることが有効な手立てとなる。何年も何十年も、いや、数世代の時を経ても危機意識を持ち続けることが肝要だ。

マスメディアはこのたびの災厄をいつまでも人々の記憶に留めるため、決して浮き足立つことなく、真実の映像と情報を提供し続けるべきである。同じような災害が起きてから、あのときもこうだったでは手遅れなのだ。現実から目を背けるべきではない。私は幼い頃毎年8月6日になると、広島の原爆のドキュメンタリ映像を半ば強制的に見させられた。子供にとってはこれは恐怖そのもので、後々までトラウマになったほどである。しかし、そのおかげで、原子爆弾の恐ろしさは世界中のどの国の人々よりも肌身に染みているのだ。貴重で有意義な映像を放送し続けたNHKや、適切な教育を施してくれた両親には本当に感謝している。

災害発生前後の放送内容の改善、発生後の情報の提供方法と、放送業界が考えるべきことはいくらでもある。テレビの民放各社は、災害後の放送内容を分担すればいいかもしれない。総合的な放送はNHKがあるのだし、同じような番組を各局毎に制作するのは無駄である。一昔前には「往く年 来る年」という番組が民放全局フルネットで流れていたので、その気になれば協力連携できないはずはない。視聴地域の問題は地デジ化が完了すれば、ある程度は解消するのではないか。

具体的には、A局は安否確認、B局は被災地向けの支援物資などの情報、C局は災害全般について、D局は二次災害などの情報(原発問題等)などと分担できれば、一局に専門家を集めて話を聞くこともできる。重要な情報や公式発表などはどの局も適宜取り入れればいい。1〜2日間程度なら可能なのではないだろうか。不公平ということならローテーションを組むという手もある。報道特番として共同制作体制を敷いた上で内容を分割するという案はどうだろう。この方法が一番効率的な気がする。視聴者にとってのメリットは、情報を探して各局を巡る必要がなくなるということ。これこそ視聴者のための放送だ。

テレビやラジオだけでなく、インターネットの果たした役割はとても大きかった。Ustreamやニコニコ生放送による報道番組の同時配信は、災害時には無くてはならないものとなった。radiko.jpの一時的なエリア制限の解除もしかり。NHKですら「まだ会見は続いておりますが…」と言って打ち切ってしまう政府や東電の会見などを、継続して見ることができるのはありがたい。また、公式・非公式にかかわらず、オンデマンドで情報を取得できるWebサイトの存在はネットならではである。

Twitterによる安否情報や災害情報の拡散は、ソーシャルネットワークの強みを見せつけた。もっとも、デマツイートも大量に出回ったのだが。デマをあぶり出すシステムの実装は難しいかもしれないが、少なくとも情報の陳腐化を防ぐため、公式リツイートにはソースのツイート時刻を表示してほしい。サービスを提供する側は改善への手間と努力を惜しんではならないと思う。また、利用者に過ぎなくともSNSに係わる人間は当事者意識を持ち、自身の発言に責任を負うべきである。

2011/04/07 0:15追記:
訂正します。リツイートのソースの発言時刻は、最初にツイートされた方の名前をクリックすることにより、確認できました。申し訳ありませんでした。

 

マスコミ、とりわけ放送業界に従事する方々は、今回の東日本大震災における放送、報道のあり方を自問自答し、あるいは有識者や視聴者の意見に耳を傾け、今後のより良き情報提供の方法を模索し話し合い、是非とも具体案を作成して頂きたい。「備えあれば憂いなし」という言葉は行政や企業や人民のためだけにある標語ではない。今こそ、マスメディアの存在意義が問われているのだ。

原発や電力についてはいろいろと考えるべきことが多く、まだ考えがまとまっていない。追ってここに記すつもりである。

今はただ、地震、津波で亡くなられた方々のご冥福を祈り、被災された皆様の心の傷は深くともせめて傷口なりとも癒え、一日も早く立ち直られることを願うばかりである。

 

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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