お使いのブラウザは最新版ではありません。最新のブラウザでご覧ください。

CNET Japan ブログ

「開発の簡単なゲーム機は提供しない」と公言してはばからないソニーが変わるとき

2009/03/05 00:29
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

プロフィール

寺本由美子

本名とタイトルのペンネームが異なっているのはご愛敬(話せば長~い物語あり)。IT系の話題からゲームのレビューまで、自由気ままに発信します。iPadやiPhoneなど、大好きな電脳小物についても熱く語りたいですね。Twitterにも出没中。ブログへのコメントも、@kirifue へどうぞ。
ブログ管理

最近のエントリー

初代プレイステーションは久夛良木健氏の夢から生まれた「遊びのためのワークステーション」であった。PS、PS2、PS3と進化するにつれ、家庭内の「エンターティンメントマシン」としての位置づけがより明確になってくる。PS3は高性能なゲーム機でもあり、最先端のメディアプレイヤーでもあり、多目的用途のネットワークマシンでもある。リアルタイムコンピューティングを実現するものだ。

巷で話題になっているという採用情報ページ内にある「プレイステーション開発誕生秘話」では、そのようなプレイステーションの変遷と開発の歴史をたどることができる。自画自賛だし脚色もされているだろうが、まるで上質な小説のような文体からは開発者たちのプレイステーションにかける熱き思いが伝わってくる。

PS3のハードウェアデザインとユーザーインターフェースの開発者インタビュー」を読むと、徹底したデザインコンセプトと細部に至るこだわりが分かるだろう。高級感と機能性の両立を成し遂げたその気品ある姿は、確かにソニー美学の遺伝子を受け継ぐものだ。そのハード上で動くゲームもまた美しく、我々を魅了する。

3Dによる豊かな表現力とすべらかな動き、それはCellプロセッサの演算能力を極限まで活かしたゲーム作りが行われているからだ。……と、私は考えていた。ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)のトップ、平井一夫氏のインタビュー記事を読むまでは。

スラッシュドットの記事を引用しよう。元ネタはアメリカのCNETであるが、平井氏の発言自体はOfficial PlayStation Magazineのインタビューによるもので1月までさかのぼる。

平井氏曰く、「我々は(開発者が)欲しがる『簡単にプログラミングできる』コンソールを提供していない。『簡単にプログラミングできる』ということは誰でもハードウェアのほぼ全てを活用できるということであり、そうなると問題は残りの9年半どうするか?ということになってしまう。諸刃の剣とは言わないが、プログラミングは難しいものとなっている。これを否定的に見る人も多いが、逆に言えばハードウェアにはまだまだ可能性があるということだ」とのこと。

もしこの発言が真実なら、現在あるサードパーティ製のゲームはPS3の性能を出し切っていないばかりか、ゲーム開発者はCellのパワーを最大限活かすことを目標に日々精進していかなければならない、9年半もの長きに渡って。これではまるで修行僧のようだ。門戸は限りなく狭く、真に志のある者だけがそのワザを体得できるのであろうか。

ゲーム開発者はPS3の性能を引き出すことに労力を割くのではなく、もっとゲーム内容の充実に力を注ぐべきである。どうも力の配分と方向性が間違っているような気がしてならない。

あの頑なな任天堂でさえWiiやDSにおいてはライブラリの充実を図り、ゲーム開発のハードルを下げてきている。元よりXbox360の開発のしやすさには定評があるが、さらに一歩進んでマイクロソフトはオープン化構想にも着手した。アップルはゲームメーカーではないが、SDKを公開し、ゲーム機としてもiPhone/iPodの開発を支援している。

世の中はそういう流れだ。

SCEは開発の難しさで業者を選別し製品の質を高めようとしているのか、それとも自身もCellの扱い方がよく分かっておらず使い勝手の良いライブラリすら用意できないのか。はたまた、単にPS3のハードが如何にスゴイのかを強調したいだけなのか。いずれにせよ、時代に逆行していることだけは間違いない。他のゲーム機に比べて開発期間が長くソフトの数が少ないとは思っていたが、その真因はこの考え方にあったのか。

平井氏はきっと、イマイチ成果の上がらないプレイステーション事業部に憤り、きっとヤケになって失言したんだと思う。そう思いたい。そうでなければ、SCEはいずれ「終わり」を迎える。ユーザーどころか、開発者のやる気さえそいでしまうようでは。

ここで一番問題なのは、海外のデベロッパーに向けてこの発言がなされたことだろう。ご本人は久夛良木氏の尻拭いをしたつもりかもしれないが、むしろ状況を悪化させている。アメリカでトップマネジメントを司ってきた者の発言とはとても思えない。最近になってCNETで再び取り上げられたことは、問題の根がかなり深いという事実を示している。

SCE採用情報ページにある「SCE仕事図鑑」のサイトでは、技術職[ソフトウェア]を次のように紹介している。

プレイステーションを動かすプログラムや、ネットワークサービスのためのサーバプログラムなどの開発。ハードウェアの性能を100%引き出し、ユーザーの皆さんに喜んでもらえる機能を提供します。

そう、SCEとて気骨ある開発者は多数存在し、ハードウェアの性能を100%引き出さんと努力しているはずなのだ。現場の方は仕事に誇りをもって開発しているだろうに。

追加リストラ策を打ち出し、経営再建に向けて動き始めたソニー。ハワード・ストリンガー会長兼CEOは読売新聞のインタビューに答え、PSを中心にネットサービスを強化すると語った。

折しも、前出の採用情報内の「出張トロ・ステーション」では、最終回「社長からのメッセージ編」を配信中である。ここで平井氏のとても頼もしく夢のあふれるメッセージを視聴することができる。ご興味のある方はぜひ視聴されたし。

「Make everyone happy!」

すべての人が楽しく幸せになることを目指したSCEのPS3。ソニーのゲーム機を愛し、一家で PS、PS ONE、PS2:2台、PS3、PSP:3台を所有する身としては、これが「終わりの後の始まり」となってくれることを祈るばかりだ……。

 

ソニー・コンピュータエンタテインメント採用情報

ITmedia 2009/03/04
愛社精神がほとばしる、SCEの採用情報ページが話題に

スラッシュドット・ジャパン 2009/03/03
PS3のゲーム開発が難しいのは意図的?

CNET Japan 2009/03/04
「追加リストラ打ち出す」 ソニー再建策、ストリンガーCEO

読売新聞 2009/03/04
PS中心にネットサービス強化…ソニー・ストリンガー会長

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
運営事務局に問題を報告

最新ブログエントリー