今朝『クローバーフィール/HAKAISHA』を観に行ってきました。全米では題名を伏せて劇場で予告編を流し、内容を明かさぬまま数ヶ月が経過。数少ない手がかりを追って映画ウォッチャーはネットをさまよい、果ては撮影所にまで忍び込んで写真を盗み撮るなんてことまで行われたのでした。試写が行われたのは公開のわずか2日前という徹底ぶりです。
日本での公開は米国よりも3ヶ月ほど遅れていたため、このような混乱はありません。今や情報は瞬時に世界中を駆け巡りますから。それが物足りない点ですね。できれば、全世界同時公開してほしかったところです。
パンフレットは上映前に中身を見ることができないよう「袋とじ」されている部分があります。
映画プロモーションでは情報操作が行われていたわけですが、ここで興味深いのは数々のニセ情報がネット上を賑わしたことです。例えば、発表まで貝のように口を閉ざすApple社の新製品でも同様の現象が起こります。人間の習性として、秘密とされ謎に満ちたことほど真実をあばきたくなるものなのでしょう。あらん限りの想像力を発揮して、ホンモノに近づこうと涙ぐましい努力をします。個人の妄想もしかり。その結果がトンデモ情報となり、勝手にネット上を動き回るようになるのです。
ただし、Apple社と決定的に違うのは、情報を小出しにして好奇心を煽るという手法を用いていることです。確固たる地位を築き上げ、多くのファンに支えられているAppleはそんなことをする必要がない。黙っているだけで人は集まってきます。映画は一発勝負ですから(シリーズものも含めて)、戦略的な「宣伝」が必要なわけです。そこで、制作者サイドからもヒントに混ぜて意図的にミスリードが流されたようです。
何が真実なのかを見えにくくしたことがさらなる憶測を呼び、より一層バイラル効果を高める働きをしました。これはネット時代の特色でもあります。人々は常に新しいネタを求めており検索やポータルサイト経由で情報に群がりますが、実のところそれが真実なのかどうか分からない、分かりようがないのです。発信された情報は一人歩きを始め、ブログやSNSを通じて広まってゆきます。それがセンセーショナルなものであればなおさらのこと。このプロモに、ある種「情報操作」の怖ろしさを感じてしまうのは私だけでしょうか。
以下の動画はPVの一つですが、このニュースで報道されている事件の背景に一体どのような真実が隠されているのか、映画を観る気がなくとも気になってしょうがない。しかも、事件の中心に位置するのは日本企業だというではありませんか。そもそもタイトル中の「HAKAISHA」=「破壊者」であって、これはまぎれもない日本語です。この意味ありげな名前は日本人によって名付けられたのでしょうか。
肝心の映画ですが、私にとっては非常に満足度の高いものでした(★★★★)。まあ、ハッキリ言って評価は真っ二つです(人を選ぶ?!「良い」という人はごく少数派)。
映像の視点はあくまで逃げまどう人間のもの。ホームビデオで撮影された映像では、頭部がちょん切れるなどという通常ではあり得ない構図もしょっちゅうで、激しく揺れたりすっ飛んだり。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』は観たことがありませんが、それよりも手ブレが酷いという噂です。しかし、あの状況下ではむしろその方が自然で、それがあたかも自分がその場にいるような錯覚を呼び起こします。
でも、そんな奇をてらったプロモーションや映像手法だけがこの映画のキモではありません。主人公達の日常生活が突然破られ、何が起こっているのかハッキリとは分からぬままに…。
どんな天変地異や大事故・大事件が起こったとしても中心に存在するのは人間であり、その一人ひとりに人生のドラマがあるわけで、そこをきちんと抑えているからこそただのパニックものに終わっていないのだと思います。9.11がアメリカ人に与えた影響が大きいのは確かで、そんな体験をしていない日本人にとっては分かりづらい映画なのかもしれません。もはや他人事では済まされないという危機感を抱き「不安」や「痛み」に共感できるかどうかが分かれ目なのかも。
続編も予定されているとのことで、楽しみです。
ただし、映画館で観ることをオススメします。せいぜい大画面テレビですかね。映像の性質上、小さな画面では何が何やら全く分からないでしょうから。