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PFI刑務所で再犯を防げるのか

2007/05/14 03:30
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寺本由美子

本名とタイトルのペンネームが異なっているのはご愛敬(話せば長~い物語あり)。IT系の話題からゲームのレビューまで、自由気ままに発信します。iPadやiPhoneなど、大好きな電脳小物についても熱く語りたいですね。Twitterにも出没中。ブログへのコメントも、@kirifue へどうぞ。
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先日、GyaO『es[エス]』という映画を観た1971年にスタンフォード大学で実際に行われた心理実験を元に製作された映画である。実験は、新聞広告で集めた被験者を、看守役と受刑者役にグループ分けし、刑務所に近い設備で各々の役割を演じさせるというものだ。アメリカと日本では環境に違いはあると思うが、人はこれほどまでに、自分の置かれている状況(設備や環境、権力と服従の関係)に左右されるものなのかと驚く。また、「刑務所」という言葉の持つ暗くて閉鎖的なイメージは、どうにも払拭しがたい。そんな考えが頭から離れずにいたのだが、あるニュースが筆者の滅入った気持ちを少し明るくしてくれた。

5月11日金曜の夜半に、フジテレビ「ニュースJAPAN」の和田圭さんの解説コーナーで、『刑務所革命の未来は』が放送された。番組途中で気がついたので、最初からしっかり視聴していたわけではない。筆者が見たとき、ちょうどイギリスのローダム・グランジ(LOWDHAM GRANGE)刑務所の様子を映し出していた。受刑者たちが生き生きと、学習や作業に打ち込んでいたのが印象的だった。まるで大学かカルチャーセンターのようで、説明がなければ、とても刑務所だとは気がつかなかったろう。これは、民間が経営している刑務所なのだそうだ。刑に服すだけではなく、再犯をいかにして防ぐかに重点を置いているという。

日本でも5月13日、山口県美祢市において新方式の刑務所である美祢社会復帰促進センターが開所した。PFI方式を採用し、建設から運営に至るまで、民間の資金やノウハウを活用している。イギリスの民営刑務所と異なる点は、懲罰や連行等の公権力行使に関しては刑務官が担当し、それ以外のサポート業務を民間が担当するという混合運営施設方式を採用していることである。

今年10月には喜連川(栃木県さくら市)と播磨(兵庫県加古川市)のPFI刑務所が、2008年10月には島根あさひ(島根県浜田市)のPFI刑務所が続く予定である。現在、日本の刑務所はオーバーフロー状態だという(2005年末で定員16%オーバー)。その緩和策としても有効であり、また、国や地方公共団体の事業コストの削減にもつながるためだ。

1999年、PFI法「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」の施行後、PFIは盛んに行われるようになった。対象は刑務所に限らず、道路、鉄道、港湾、空港、河川、公園等の公共施設、庁舎等の公用施設、公営住宅、教育文化施設、廃棄物処理施設、医療施設、社会福祉施設、地下街、駐車場等の公益施設等を含んでいる。近年の都市再開発も、PFIによるものが多いらしい。財政赤字の再建に、PFIは無くてはならないものとなってきている。

美祢社会復帰促進センターについては、中国新聞に詳しく掲載されている

入所は、初犯で引受人のいる受刑者が対象。定員は男女五百人ずつ。センターがこれまでの刑務所と違うのは、社会から完全に遮断するのではなく、普通の生活に近づけ、スムーズな社会復帰を進める点である。出所後に就職しやすくするため、作業の合間にパソコンの基礎講習も採り入れている。


ITmediaでは「刑務作業でRuby、世界初の受刑者によるソフトウェア開発」という記事が掲載されており、所内には新しいIT設備が整えられていると推測できる(ただし、この記事に関しては懐疑的な意見も存在するので、Ruby言語が実際に使用されるのかは断定できないのだが)。

「ニュースJAPAN」では、「公権力の象徴にPFIはなじむか」といった懸念も示していた。刑務官と民間企業スタッフの連携はうまくいくのだろうか。資金の流れが滞ることはないのか。刑務官と民間スタッフの狭間で、受刑者によけいな負担が掛からないか。この辺りは、しばらく成り行きを見守っていきたいと思う。

果たして再犯を防くことができるのか」という課題に関しては、完全にとはいかないまでも、かなり効果は期待できそうだ。初犯のみを対象としているため、犯罪/刑罰に対して免疫がなく、なぜ罪を犯してしまったのか自分でも分からないという人、罪を反省して今度こそまっとうに生きたいという人、そんな人が多いのではと考える(勝手な想像なのだが)。

もちろん、犯罪の軽重の程度にもよるが、
「あんたは悪いことをした、悪いのはあんただ」
と言われ続けるよりも、
悪いことは反省しよう。でも、今度こそ正しい道を前向きに生きていこう
と言われる方がいい。ポジティブに物事を考えられるようになり、社会はこんな自分でも受け入れてくれるんだという気持ちが芽生える。

それだけでは単なる「精神論」に過ぎないかもしれない。だが、透明な塀で囲まれた建物や万全のセキュリティ設備、PCなどの教育機器とスタッフによるサポート体制、また、地域の方々との相互交流、こういったオープンで自由な雰囲気と物質的な基盤が、受刑者の自立を後押ししてくれることだろう。

どうか「再犯」などという悲しい過ちは犯さないでほしい。

中国新聞 社説 2007/04/01
美祢の「新刑務所」 地域に生かす知恵探れ

ITmedia エンタープライズ 2007/05/01
刑務作業でRuby、世界初の受刑者によるソフトウェア開発
ITmedia Planet GEEK 2007/05/02
言葉にならない気持ち
ITmedia Planet GEEK 2007/05/09
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※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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