(前回の話はこちら)
車通勤の私は、毎週月曜日にコンビニに立ち寄る。『週刊少年ジャンプ』を購入するためだ。時間に余裕があるときは、どんな雑誌が出ているかなと、他の本の表紙をざっと眺めることもある。その店の雑誌売り場の一番目立つ中央部分は、「成人向け雑誌」のコーナーになっていた。
日本フランチャイズチェーン協会では、「Z」区分に指定されたゲームソフトは取り扱わないという方針を決めたという。 はて、「各都道府県の個別指定図書類」というのは何となく意味が分かるのだが、「表示図書類」とは何ぞや。
「成人向け雑誌が堂々と売られているのに、何で?」と思うのは、私だけではないはず。
調べてみると、「『成人向け雑誌・TVゲームソフト』取り扱いガイドライン」という自主ガイドラインがあり、2006年5月1日に改定されている。
東京都 青少年・治安対策本部ホームページには、 「東京都青少年の健全な育成に関する条例」が載っている。その第9条の2が表示図書類の定義となっている。
また、日本出版学会 出版法制研究部会 活動報告にある「青少年条例改定と図書規制の現状」には、次のように記されている。
2001年の東京都の区分陳列義務化に合わせ,出倫協(出版倫理協議会)に出版倫理懇話会,有識者3人を含めた第三者機関「出版ゾーニング委員会」を設置し,「出版ゾーニングマーク」表示を用いた区分陳列の徹底を図った。出版ゾーニングマーク等の表示は,コンビニエンスストア業界の判断基準にもなっており,表示がある図書は取り扱われないことになっている。
具体的には、「出版ゾーニングマーク」や「成人向け雑誌マーク」の表示されている本が、「表示図書類」にあたる。出版ゾーニング委員会は、自主規制として、出版社にマークの付与を要請するものであり、雑誌の有害か無害かを決定するのではないという。これに対し、「個別指定図書類」は、各都道府県の職員等が購入した図書類について、「有害(不健全)」指定すべきかを審議会に諮問して決定するものである。
これらの規制に引っかからなかったグレーゾーンの雑誌には、何の対策も施されていないかというと、そうではない。出版界では新たな自主規制として、「小口を3cmのシール留めすることにした」という。
コンビニの「成人向け雑誌」のコーナーにあるのは、このシール留めしたグレーゾーンの雑誌らしい(人目が気になり、手に取って調べられなかった。めんぼくない)。
もっとも、コンビニによって、仕切り板により分けられているところと、全く置かれていないところもあるようだ。つまり、置く自由もあるが、置かない自由もあるということだ。消費者に対して、どのような方針を取るのかは、それぞれの会社が決定すべきことだと思う。
さて、話は戻るが、「Z指定」ゲームまで、どうして規制対象になったのだろう。
どうやら、「表示図書類」の中に、「Z指定」ゲームが入れられてしまったようなのだ。いや、むしろ逆で、テレビゲームにおいての「表示図書類」を明確にせよということか。2005年12月に開かれた、第2回「テレビと子どもに関する協議会」(PDF)において、東京都から以下のような提案がなされている。
1 レーティングの見直しについて
東京都としては、家庭用テレビゲームについて、条例第9条の2の「表示図書類」としての表示を付すよう提案します。
これを受けて、CESA(社団法人コンピュータエンターテインメント協会)は、CERO(特定非営利活動法人コンピュータエンターテインメントレーティング機構)のレーティング制度を見直し、「Z」区分を作成した。もちろん、区分表示をすること自体は、有益な情報が増えるわけだから、消費者にとっても歓迎すべきことである。
日本フランチャイズチェーン協会では、TVゲームの「Z」ソフトを含む、すべての「表示図書類」を自主規制してしまったわけだ。
それにしても、ゲームのような高額の商品は、店員の目の届く範囲か、レジの後ろに陳列されていることがほとんどだと思う。ましてや、雑誌ならシール留めを破ることも可能だが、パッケージ化されたゲームでは中身を覗いてみることもできまいに。今一つ、納得のいかない措置ではある。各店舗が「Z指定」ゲームを置かないのは勝手だが、規制対象とまですべきなのかどうか。
このブログの第1回めに、私はテレビゲームの話から逸脱して、「18禁」はいかにも悪者であるという印象を与える文章を掲載した。これは、大きな誤りであったことを素直に認めたい。
青少年の目に触れさえしなければ、いいのではないか。ゲームや雑誌を購入し、楽しむのは大人の自由であり、制作、販売する側から見れば、それは表現の自由という権利でもある。
かれこれ2年前、私はドラマティックオンラインRPGというふれ込みの 『A3』というゲームに惹かれ、まだ無料ベータサービス時のソフト、『A3リミテッド サービス キット』を手に入れたことがある。サービス開始当初は「R-18」指定のソフトだった。
『HOW TO PLAY GUIDE』には、このソフトが18歳以上指定である理由が次のように書かれている。
大人の社会的倫理に満ち、駆引きや裏切り、騙し合いといった人間のエゴが交錯する中で繰り広げられる仮想社会での体験を楽しめるよう製作されたゲーム
人を傷つけたり騙されたりするのは嫌だが、「大人の社会的倫理」という、何ともゾクゾクするような響きがたまらない。まさに、こういうゲームをたしなむことこそ、大人のひそかな楽しみなのでは、と思ったものだ。「18禁」だからこそ表現できるであろう、ゲーム世界の広がりを体験したかったのだ。
正式開始より約1年後には、世界観が確立したという理由から、「R-18」指定は解除された。ゲーマーは予想以上に紳士・淑女だったのかもしれない(断定はできないが)。
現在は、ガラッと趣きの違うゲームへと変貌を遂げている。無料で遊べて稼げるバウンティバトルオンラインRPGを採用し、賞金総額200万円のバトルトーナメントの開催予定しているという。こういう制度の良し悪しは、現段階ではまるで分からないが、オンラインゲームの新たなる試みとして評価したい。
私はと言えば、オンラインゲームというものになじめず、まとまってゲームをする時間もなく、結局、やらずじまいで..(また、家庭用ゲームの話から脱線してしまいました。すみません)
CNET Japan 2006/06/01
ガンホー、オンラインゲームにプロ制度を導入--賞金トーナメントを実施へ
(次回につづく)