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Windows 7、そして誰もいなくなった

2009/10/22 03:09
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パネルディスカッションのお題「Windows 7発売--PC市場へのインパクトは?」への回答が長くなりそうだったのでこちらに。

Windows 7発売の何が感慨深いって、かつてのWindows Me、そしてWindows Vista。最も変化の激しいハイテク業界における最大級の企業の、しかも主流製品で、あれだけの堂々たる基本設計ミス・顧客不満足を2度も経験していても、会社がいまだに(かろうじて、という但し書きぐらいはつけられる時代にはなったけれども)その地位を保っているということです。これって驚くべきことじゃないでしょうか。

「しぶとく追求し、決して諦めない」カルチャーのマイクロソフトらしく、Windows 7ではXPの成功とVistaの失敗からちゃんと学んで、それなりに素早く軌道修正を図ってきたようです。パソコン市場自体がモメンタムを失ってきていることもあって、その上で動くOSに関しても保守化が進行し、今後この市場で下克上はますます起きにくくなるでしょう。

つまり、マイクロソフトの立場からすると、今後は「大失敗」さえしなきゃいい。Mac OS Xのほうが遙かに優れているのは周知の事実ですが、パソコン市場自体の流動性が緩慢になってきてるのだから、そんなことは気にする必要もないのです。

もちろん、今後の主戦場はモバイルです。パソコン向けOS開発で積み上げてきたリッチやUIや、上から下までフルスタックのソフトウェア・コンポーネントを自社で持っているという点では、マイクロソフトはアップルにかなり近い土俵にいます。しかし、そちらの世界ではマイクロソフトの存在感は日ごとに小さくなっています。ぶっちゃけ、Windows Mobileのデキの悪さはWindows Vistaどころではないのです。

個人的に最近、日本でキープする用の携帯をイー・モバイルのTouch Diamondに変えたのですが(国際ローミングはバカ高いのでiPhoneは日本ではiPod Touchとして使ってます)、これがハンパなく使いにくい。

テザリング+WMWifiRouterで使うのがメインだから、携帯じゃない、これはモデムなんだと割り切っていたのですが、たまにちょっと路線検索をしようとしただけでも、タッチに対する反応が数秒遅れたり、 2回に1回ぐらいは入力した内容が間違って消えてしまったり、しまいにゃフリーズして再起動しなきゃいけなくなったりで、通常使用におけるストレスは尋常ではないです。

また、こまめにタスクマネージャでアプリを終了しないとバッテリーが1日持たないのですが(買ったばかりなのに)、タスクマネージャを開くためのアイコンが5mm四方ぐらいの面積しかなく、爪先やスタイラスで押そうにも電車やバスに揺られながらでは押せません。そんな事態にもかかわらず、ActiveSyncという使いもしないアプリケーションが勝手に、しかも定期的にバックグラウンドで起動し、こいつを殺す方法も正攻法では存在しないというありさまです。日常的に便利に使うツールを買ったというよりは、謎解きのステージが何段階にも用意されたパズルゲームを買ったという方が近いかも知れません。ガジェットヲタでもないのに間違ってこれ買ってしまった人、トラウマになるんじゃなかろうかと勝手に心配してしまうほどです。

もちろん、テクニカルにいえば、これらの問題の多くはハードウェアとしての最終製品を作ったHTCの問題であって、OS単独の責任ではありません。しかし、現行のWindows Mobileを使っている端末には期待できないことぐらいは容易に想像がつきます。10年ぐらい前に使ってたケータイのほうが、もちろん低機能だけどよっぽどタイトな使用感を提供してくれていました。こんなのをスマートフォンって呼んでたら、そりゃ、ガラパゴスケータイのほうが断然いいって話になるわな。

あ、それと念のため補足しておくと、イー・モバイルというキャリア自体は応援しています。使わない月は1000円でキープできるとか、テザリングで使いまくっても上限5000円とか、きたるべき未来を一歩先取りした道を正しく歩んでおり、自社サービスのユーザがどういう種類のニッチであるかの把握も正確。いい端末さえあればずっと使い続けたいと感じさせてくれます。うちの実家(香川県)は完全に圏外でしたけどね。

さて、というわけで、Windows Mobileをコアに据えてiPhoneやAndroidと戦っていくことになるマイクロソフトですが、こっちはかなりの苦戦を余儀なくされるというか、率直にいってこの市場では今後も勝てないだろう、と言い切るのにそれほどの勇気は要りません。かつてのPC市場で起きたようなソフトウェアとハードウェアのアンバンドル、そしてそれに伴う国産メーカーの中途半端に垂直統合された製品の大量殺戮はいずれ起きるでしょうけど、そのときの主役はAndroidになる公算が高いでしょう。

他に誰もいなくなったメインフレーム市場で、IBMがほぼ単独でお山の大将として利益を独占しているように、マイクロソフトはパソコン市場でWindowsの地位を維持するでしょう。ただ、いまメインフレームについて語る人などいないのと同様、誰もパソコンOSについて語る人がいなくなる時代がくるかも知れません。道路の舗装にアスファルトを使うことに誰も疑問を感じないように、隅々まで行き渡ったテクノロジーはそれ自身が空気みたいな存在になり、自己正当化を開始し、そういったものに対する異議申し立てはアートの域を出ないものとなります。

パソコンOSの新製品リリースの話題性は、今後も時間を追うごとにどんどん低下するでしょう。成熟した市場でまったり商売するか、それともモバイルという新しいフロンティアに向かってアクセルを踏み込んでいくか、2010年を目前にして、個々のプレイヤーたちは選択を迫られているのだと思います。

Rooney / I Should've Been After You

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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