現在発売中の月刊ComputerWorld10月号のSaaS特集に、著者の一人として寄稿しました。
「『サーバのないオフィス』でイノベーションを実感する」と題して全8ページ、渾身の記事です。
SaaSという言葉は、これまた例によって定義の広すぎるコトバですが、いわんとすることはソフトウェアを買ってきてインストールして使うというモデルからウェブ上にあるサービスをそのままブラウザ上でソフトウェア的に使うようになりますよー、という意味ですから、これまでの外しまくりな業界のバズワードに比べればリアルなトレンドをはるかにうまく捉えています。イメージ的にはWeb 2.0とも若干かぶるのですが、SaaSはどちらかというと「従来のガチなソフト屋から見たウェブへの進化願望」みたいな気分が表れたコトバだと理解しておけば間違いありません。(現にピュアでネイティブなウェブ界隈でSaaSというコトバが会話に出てくることはまずない)
さて、僕のパートでは理屈っぽい話を抜きにして、実際にSaasだけでほぼ情報システムが完結しているインフォテリアUSAという実例ネタを徹底的にフィーチャーすることにしました。
この記事で事例を詳しく掘り下げているサービスは、以下のようなものです。
- QuickBooks Online Edition - 会計システム(会計事務所からもログインできる)
- PayCycle - 人事給与システム(会計システムと自動連携)
- Bank of America Online Banking - カード払いで経費精算の手間が激減
- Blinksale - 請求書管理のSNSみたいなやつ
- SocialText Enterprise Wiki - 文書管理
- Writely - 文書作成コラボレーション(特に同時編集)
- はてなグループ - 社内ブログ(東京本社とのパイプ用)
- Flickr Pro - 画像リポジトリ
そういえばQuickBooks OnlineやPayCycleといったサービスは、アメリカに引っ越してくる直前にあの渡辺千賀さんに教えていただいたのでした。
どれも月額数ドルから数十ドルぐらいで、従来の企業向けソフトウェアの単価からは考えられないほど安価です。
詳しい内容はぜひ本誌を読んでいただきたいのですが、実際、オフィスの部屋にそれぞれ自分のマックがあるだけ、というのはめちゃくちゃシンプルで快適です。
もちろん、承認ワークフロー系のソフトがないことからも、これが可能なのは正社員+契約社員で4名という所帯の小ささにも関係あることが容易に想像できると思いますし、日本では同等の使いやすいサービスが全くないカテゴリがあったりするのですが、少なくともアメリカで少人数のスタートアップを回す分には、こういう雑務にかける時間を勤務時間全体の数%以下に圧縮できる(なんといっても、社長のぼくが毎日メンバーと一緒にコード書きに集中していられる!)というのは、恐ろしくムダのない筋肉質な経営が可能となることを意味します。
本誌に挙げきれなかった例としては、
- Box.net - ファイルサーバ
- Basecamp - プロジェクト管理
- Typepad - 新サービス用のブログ
- ServeyMonkey - アンケート
- Bronto - メール配信
- rsync.net - バックアップ
- wufoo - フォーム作成
などがあります。他にも単発で使っているサービスまで挙げていくと沢山あります。あとdel.icio.usとかDiigoとか英辞郎とかGoogleとか、いつもお世話になってるけどSaaSじゃないの?と、基本無償のものまで持ち出し始めるとだんだんわけがわからなくなってくるので、今回は一応の基準として有償のラインナップがあるサービスを対象として取り上げてみました。
実は、肝心の開発のメインサーバであるSubversionのリポジトリとそれに連携するイシュー・トラッキング・システムのTracは自前の開発用サーバに入れて使っているのですが、このサーバは新サービスのために借りているサンフランシスコのデータセンターに本番サーバやステージングサーバなどと一緒に設置しているので、普段いるオフィスからみれば結局ネットの向こう側にあるということになります。
ともかく仕事場の環境はアメリカに来てから劇的に良くなって、スッキリと気分的にもかなり生産性が高まったので(停電とかは良くありますが)、この件についてはまた機会があれば改めて触れたいと思います。