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システム・インテグレーション事業における対デフレ戦略

2004/10/28 18:21
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どんな業界でも世間話には枕詞のようなものがあって、これが結構、的確にトレンドを掴んでいることが多い。

仕事柄、システム・インテグレーション(SI)企業とのお付き合いが多いのだが、この業界でここのところよく耳にするのはだいたいこんな感じのキーワード(愚痴?)。

  • 大型商談が減ってきている
  • 小粒な短納期の案件が増えてきている

おやおや。目新しいトピックが何もない。はるか昔から繰り返されてきたクリシェだ。

良く言えば原点回帰、悪く言えばネタ切れ。

ネタさえあればエイヤで動けるのは誰だって当たり前。でも、この苦しい時期にどれだけの人が現実逃避せず真剣にその原点とやらと向き合っているだろう?

上記の2つがいずれも正しい長期的トレンドだと仮定する。

今後、大型商談が減り、短納期の案件が増えていくという傾向が続いていくとすると、それはコモディティ化の現象そのものである。ビジネス用語で言うところの「コモディティ化」は、マクロ経済用語で言うところの「デフレ」である。

ところでいきなり余談だが、「コモディティ化」を「産業の衰退」と誤解されるケースが多いのでひとこと。

マクロの統計水準から見ても、

産業内格差 > 産業間格差

という傾向は製造・流通・サービスなど業種問わず、ハッキリしてきている。いわゆる勝ち組・負け組の二極化である。

従って、どのような業種であれ「斜陽産業だから」というのはまったく言い訳として通用しない。SI事業も、ある企業にとっては魅力たっぷりだし、ある企業にとってはお先真っ暗という、ただそれだけのこと。

■デフレ時代のビジネスモデル戦略

どんな産業でも、デフレに抵抗力のある戦略は大まかに三つに分類できる。

1)テクノロジー・イノベーション型

インテルやキーエンスのように、キー・コンポーネントをプロダクトとして押さえる戦略。ハイリスク・ハイリターン。R&D志向。

2)オペレーショナル・エクセレンス型

デルやアスクルのように、コモディティの販売にあたって内部的なオペレーションを標準化することでデリバリのスピードを上げ、相対プレミアムを獲得する。スケールメリット志向。

3)ブランド・プレミアム型

アップルやルイ・ヴィトンのように、競合価格からプレミアムを乗せても売れる商品力を持つ戦略。消費者製品向き。マーケティング志向。

ほとんどの企業の戦略はこれらのバランスから成り立っているわけだが、SI事業の性質を考えると1)との相性はあまりよろしくない。収益構造や価値観が根本的に異なるため、強いプロダクトを目指せば目指すほど同じ組織でやることの困難は増すだろう。2)は、今のSI事業の人材依存性を考えるとデルを引き合いに出せるのは遠い未来のことだが、押さえておくべきポイントは「相対優位」である。SI分野でも、例えばIBMが赤字プロジェクトに備えて全案件から利益の一定額を引当金としてプールしているという話は有名だが、明らかに規模が強みになることを理解した上での戦略である。3)のブランドによるレバレッジも小規模な企業ならありうるだろうが、SI事業一般にブランドによるプレミアムはほとんど期待できない。

さて、こういった条件を踏まえると、SI事業を中心としている企業の採りうる戦略がいくつか見えてくる。

  1. M&Aにより規模の拡大を目指す
  2. 得意分野のキーワードでマーケティングを行う
  3. プロダクト開発に投資する

上記の3がほとんど失敗に終わり(もちろん稀にスマッシュヒットが出てくる可能性はあるが)、2が業界内で閉じたビジビリティだとすると、マクロからみた大きな動きとしては1を中心とした理解枠が設定されていくことだろう。使い古された言い回しでいうところの「整理統合」である。

一つだけハッキリ言えることは、いずれのアクションも起こさない、戦略を持たずにズルズルと現状維持に努める企業にとっては、これからのSI事業は長い長い時間をかけて沈んでいく「斜陽産業」となっていく、ということぐらいであろう。

SI事業の実態としてはシステムエンジニアやプロジェクトマネージャなどの「現場力」によって支えられているところが大きく、優秀なマネージャの発言力は非常に大きい。現に、多くのSI企業では現場からの叩き上げが高い地位に就いていくケースがほとんどである。これらの人々は一般に実直で、誠実で、リアリストで、戦略やマーケティングといったアクティビティを軽視する傾向にある。

市場が伸びていたときは「いい仕事をすればいい報酬が得られる」という正論が通用するのだけれども、デフレの時代には「戦略」が必要となる。

業界誕生以来はじめて、SI企業トップの「ビジョン」と「決断力」が試されるときがきた、ということなのかも知れない。

■最後に

先日、某SI企業の企画部門にお勤めの方々とインフォテリア社長の平野を交えて会食をした。

ここでお会いしたお二人はアンテナの感度が高く世の中の変化を広く見据えており、XML/Web Services/SOAのようなテクノロジー本流の話題のみならず、金融など特定業界の話題でも刺激的なディスカッションをさせていただいた。

このうちのお一人であるIさんが書かれているブログ「e-Tetsu Blog」がとても面白い。関心の領域や切り口が驚くほど私と近いので、特にSI事業の関係者は是非こちらも読んでみてください。

今回はこのあたりで。

Average White Band / Pick Up the Pieces

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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