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化学業界のeビジネス化に向けたCEDIの取り組み

2004/06/06 18:09
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さる6月4日、化学業界のeビジネス標準の普及を推進しているCEDI(Chemical EDI Initiative)が、化学メーカーや商社などから300名弱の来場者を集めてフォーラムを開催した。

CEDI小委員会は石油化学工業協会(JPCA)の下部組織であり、化学業界における電子商取引の国際標準であるChem eStandardsを開発している標準化団体CIDX(サイデックス、と読む)とアフィリエイトの関係にある。主査の板野さん、副主査の石井さん、田沢さんを中心として、化学会社やソリューションベンダーからメンバーを募って活動を行っている。(今期で退任される田沢さん、お疲れ様でした!)

今回のフォーラムではCIDXのチーフアーキテクトであるJim Wilsonも来日講演を果たし、三菱化学・宇部興産・協和発酵ケミカルにおける実装報告が発表されるなど、非常に内容の濃いイベントであった。

私もこの場で一コマ講演をさせていただいたのだが、講演資料などは近日中にCEDIのWebサイトにアップされるだろうから、ここでは講演で伝えたかったことを文字にして補足してみたい。

■バリューチェーンで戦うということの真の意味

私が口角泡を飛ばして主張してきたのは、以下のようなことである。

日本の経済成長は頭打ちになった。それは誰しも認めているにもかかわらず、そこからもう一歩踏み込んで「もう二度と劇的な経済成長はやってこない」ということについて真面目に考えている人は意外と少ない。

これは、言い換えれば「絶対成長」から「相対成長」の時代に入ったということ、極端に言えば競争のルールがゼロサムゲームへと変わってしまったということである。

ゼロサムゲームというのは、残酷なルールだ。みんながWin-Winでハッピーというわけには絶対にいかない。誰かが1000億円儲ければ、必ず誰かが1000億円を失うということだ。日本社会に所属するみんなが平等にバラ色の未来を描けるわけではなくなった今、「日本vs敵国」という巨大な物語は機能せず、運命共同体はもっと小さな集団へと変容していく。

この小さな「運命共同体」がバリューチェーンというものの本質なのだ。

化学品取引の世界を中心とした視点で言えば、上流から下流に向かって原料メーカー、化学メーカー、財閥系商社・専門商社、ディーラー・卸、部品加工業、そして需要家である家電・自動車・印刷塗装・建材などの業界へ。これらを流通していく商流・物流・金流のすべてがバリューチェーンの構成要素である。

これまでは、ひとつの企業(あるいは資本関係のある企業グループ)が勝ち負けの単位であった。事実、株主向けの業績報告や財務・税務の報告は今でもこれらが基準となっているし、数字に出てこないバリューチェーンの暗黙的な価値を理解している賢明な経営者であっても、業績不振などで目先の数字に追われはじめると報告書の帳尻合わせに忙しくなってしまう。

また、メーカーに勤務している営業なら誰でも、年度末に慌ててディーラーに在庫を押し込んで売上を立て、見かけ上の成績を取り繕った経験があるだろう。

バリューチェーンで戦わなくてはいけなくなった今、こんな些末な数字操作に何の意味があるだろう。

付加価値は、それを必要としている需要家まで届けて初めて価値を持つものである。現在のビジネス習慣に依拠した小手先のテクニックに溺れ、報告書の数字をでっち上げるために身につけた悪知恵など、真の構造転換期には露ほども役に立たない。

■ポリシーを「変える」ことが何よりも重要

今回、私が講演で伝えたかったメッセージは「バリューチェーン戦略を考える上では『評価基準』と『ディスクロージャ基準』の見直しが最大のキー」ということである。自分たちの上流や下流にいるビジネスパートナーたちのメリットを考え、彼等とともに勝つためには、彼等と運命共同体として積極的に同一化するインセンティブをいかに与えるかが肝である。そのためには、社内の情報をビジネスパートナーに対して公開するのを恐れず、ビジネスパートナーを「儲けさせてあげられたかどうか」で購買行為や販売行為の評価を行うような企業文化を生み出すような仕組みを意識的に作り上げていかなくてはいけない。

単年度ベースの成果主義は、こうしたバリューチェーン戦略における長期的スタンスに立った真摯な行動に対する足かせとなっている。業績不振のしわ寄せをビジネスパートナーに負わせることが自社の短期的メリットになるという理不尽にも関わらず、株主は相変わらず経営者に単年度成果のプレッシャーをかけ、経営者は相変わらず営業に単年度成果のプレッシャーをかけ、この構造的な問題に薄々気付いている誰もが誰かのせいにして言い逃れをしている。気軽に転職をしたり軽率にレイオフをしたりするようになった世の流れも、この悪性の近視眼化傾向を助長している。

ここで腰を据えて一踏ん張りし、今までのルールをぶっ壊してやろうと反旗を翻した人たちにだけ、勝利の女神は微笑むのである。あなたが経営者であろうと営業であろうと企画であろうと、関係ない。自分のポジションや環境のせいにするのは、もうやめよう。あなたの会社とあなたの仲間を救うためなら、あなたがまず行動を起こすべきではないか?

ソファに横になってテレビを見ながら小泉首相の悪口は言えても、自分の会社で自分は何をやっているだろう?「頭では判っている」と「行動をおこす」の間に横たわる果てしない闇を渡り切るにはどれほどの勇気が必要か、構造改革の当事者になるというのがどんなに大変なことか、本当に理解しているだろうか?

例えば、間違いなく今の企業会計は経営指標として粗すぎる。資本関係のような固定的な関係や取引金額の絶対額の多寡といった表面的なパートナーシップしか評価できず、実ビジネスのニュアンスを正しく反映できていないからだ。しかし「相対成長」の時代となった今、制度の歪みは愚痴の対象ではない。多くの人がそれに盲目的に従っているからこそ、相対的優位に立つためのチャンスなのだ。制度会計が役に立たないことを見抜いたなら、自分たちのための裏帳簿を作ればよい(それが管理会計というものが登場した真の文脈である)。こんな風に人の考え方を変えていくというのは、最も大変で根気が必要なことである。だからこそ、それに成功したとき、持続可能な競争優位が生まれるのだ。これが「戦略」というものの真髄である。

こうしたモードチェンジを具体化するドライバーとしてITが役に立つ。バリューチェーン内での情報流通をスピードアップするためにITを用いる。強固な提携戦略、強固なビジョンに照らされた業務モデルがあれば、独自のビジネスプロトコルや独自のテクノロジーによる囲い込みなどスピードを殺す要因でしかない。インフラによる囲い込みではなく、アライアンスによる囲い込みの時代には、システムをつなぐ部分など標準化して当たり前、それを早く取り込んで一歩先を行くためのノウハウにすることが重要なのである。伝票一件あたりの処理コスト(みなし人件費)がいくら減るとか、そういうケチくさいコスト勘定だのROIだのの話だけではない、もっと根本的な戦略的意志決定とその実行に関わることなのだ。

バリューチェーン主体の独自の価値観を構築しモードチェンジに成功した企業からは、ある種の得体の知れないオーラが発せられている。こんな変身も、最初は懊悩のどん底から湧き出てくる、あなたの勇気ある第一声から始まるのだ。

日本企業の栄華の再来を願って。

♪ Dimension / Beat #5

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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